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♫247:急冷ですかーい(あるいは、巻きの原/ふり咲け見れば)


 あらららら、という感じで好機を引き寄せた? のかな? いや、確かに優位には立てたと言える……


 初っ端「第一局」を勝利。そして相手の「ダウト権」のひとつを浪費させた。出し手も手持ちに3枚あった【F】だから、あとあとの対局に影響は及ぼしにくい。


 つまりは大きなアドバンテージを以って次戦以降臨めるというわけだ。


 流石は主任。「場の見え方」っていうのはやっぱハンパないわ、流石凄腕ディーラー。私の方をちらと向いてくると、軽く親指を立てる仕草をしてくるけど、うーん、何か「仮の姿」とか言ってた「いつもの」主任感を今は出しているようで、まあ勝負事ならばその方がいいのかも。


 ……私もそんな様子を見て、未練がましく、きゅんとしてしまうのだが。


<さあッ!! そろそろ巻きの時間帯ですよぉ~? かっかかっか進まないと、想定通りにフィニッシュ出来ませんからね~、どんっどんっいきましょぉぅ~>


 拍車をかけんばかりの実況少女の声に、はっと我に返る。次は私の手番だ。ぼんやりしてらんないわ。こうまでしてもらって、ここで無様は晒せない。勝利を、手繰り寄せるような勝ちをカマさないと。冷たい黒檀の机に両掌を当てるように手を突くと、私はしばし考慮に入る。


「……」


 相手は例の「少年」くん。油断はまったく出来ない相手だけど……ここ一番に限って言うのなら。


 ……私の方に分がありそう。なぜなら。


 向こうからのダウトは、今回ばかりは無さげと思われるから。


 残り一回になったその権利は、後々まで残しておきたいというのが人の子の心情だろう。こっちには【T】もそうだけど、【T☆】という、「ダウトを宣告しないと二敗を一気に喫してしまう」という、クリティカルな一枚がある。よしんば、この「第二局」でこちらの【T】をダウト宣告成功したところで、残る【T☆】の前に、素立ちでいなきゃならないなんて、そんなのは余りにも勝負を捨てている。


 であればこの「第二局」、向こうは静観の構えと考えるのが普通だ。が、が。


「……」


 目の前、約5mほど先に静かに座ったままの少年くんの姿。その恰好こそ、金ピカで迷彩柄のメイド服という混沌さを存分に醸しているものの、そういうのが「ハッタリ」なんだってこと、私にはもうわかっているわけで。


 「ハッタリ」と言っても、逆だ。あふれんばかりの「ダメ」の才気を、散らしカモフラージュするがための出で立ち。兄の方はまだ傲岸不遜、外連味あふれる感じでそこまでの意図、裏表を感じないけど。


 ……少年くんの底は見えてない。「淫獣」だかなんだかっていう、もはや「能力」とも思える要素、そいつが未知。さらにその奥に……


 もうひとつくらい、何かを潜ませているような、そんな気がしてならないんだ。直感で。


 その表情は非常に凪いでいて、何を考えているのか正直わからない。私はここで勝負を決めようかと【T☆】を叩きつけてやろうとか考えていたけど。


 それを見越して「ダウト」くらいやって来そうな迫力を身に纏っているようにも見える。ううううん、どうしよ……



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