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♮234:共鳴ですけど(あるいは、不確かなモノ/ゆえに光放つ)


 まずぅぅぅぅぅぅぅぅぅいぃぃぃぃぃ……


 運営のやりたい放題は充分熟知していたので、どの道こちらを同士討ちをさせるであろうことは想定の範囲内だった。しかしここまで露骨に尺を切りつつかつ、僕に初っ端が降りかかってくることは予測してなかった、というか心の準備が出来ていないんだけ↑ど→。


 わけのわからない盛り上がりに包まれているこの会場の、観客席のど真ん中に屹立している電光掲示板に示された新しい「トーナメント表」は、「8組」がシード無しで平等に並ぶ最もオーソドックスなそれであったものの、その並びが左から順に、「ワカクサさんサイノさん」―「僕ら」、そして隣の山に「姫様ジローさん」と。


 「左」に寄せられ固まっている……この時点で決勝に臨めるのは、僕ら3チームの中のひとつということになっているわけだ。うぅぅん、清々しいほどに露骨……決勝で相まみえたのなら、八百長でも出来レースでもなんでもやって終わらせてやろうとの目論見は見事にいなし交わされた。


 それでもこの「初戦」、お互いを消耗させずに、片方を「準決勝」まで押し上げること、それは出来る。と言うか、向こうが汚い手を使って来てるんだ、こっちもそれくらいはやっても何も言えないはず……


 ましてや相手はあのワカクサさん……超絶に超絶いかった前戦……もう何か、ダメの深淵を見せつけられて今日夢に出そうなほどのどんどろ感が凄まじかったわけだけど。


 ここはあちらに勝ちを譲ったほうが良いのかも知れない……真顔でそんな結論に至った僕だったけど、はっきり恐怖が勝っているのが本音でもある。まともにやりあったらえらい目に遭いそう、とだけは言える……


 そんな、逃げ腰の僕の、正にのおしり部分に、ぴしゃりと平手の衝撃が。


「……っおいおい、始まる前からビビってるたぁ、らしくないぜぇ? 運営がどうこうしようが、もうここまで這い上ってきた俺らには関係ねえっつう話よ。どうあっても『優勝』できんのはただの一組だけだっつうこと、もう理解はしてんだろ? だったらやることぁ、もう決まってんだろ?」


 案の定、緊迫感の欠片も持たない(あに)であったものの、その言葉は、何か決意めいたものとか、達観めいたものも含まれているように、僕には感じられた。


「……」


 自分ととてもよく似た、色は浅黒い顔と顔を向き合わせる。眉をハの字に、口を思い切りひしゃげて見せた顔。何か懐かしいな。こどもの頃、如何ともしがたい状況に直面した時、お前はそうやって僕にそうやって答えを出させようとしてたよな。


 わかるんだよ、お互い考えてることなんて。双子なんだから。


「……全力真っ向勝負。運営とか、優勝とか、そういったことは取りあえず、横に置いとく。自分で自分の奥底を掘り進むことなんて、普段の自分じゃあ出来そうもないから。だから……」


 僕の口から流れ出る言葉を、自分の耳で聞くことでさらに自分の奥底に取り込んでいくような奇妙な感覚……でも不思議とさっきまでの弱気は影を潜めていた。


……そして口をついて出た言葉は、


「「全開で全弾ブッぱ」」


 それだけだ。急速に肚が座って来た僕は、声を揃えてきた目の前の顔と同じく、眉ハの字で思い切り口端をひん曲げて見せてやる。



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