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221/312

♭221:閃電かーい(あるいは、光ありき/闇ありき)



 いったいどうしたら。いったいどうすれば。


 恭介さんを、受け入れたい気持ちと、拒絶するべきだという思いに挟まれ、いや、相反するベクトルに双方引っ張られるような感じで、自分の人格というものが、裂かれそうなのだ↑が→。


「……」


 目の前で伏しつつ、もはや言葉も発することも出来ずに、ただ私の方に視線だけを送ってきている元・夫を見るにつけ、私の想いは定まらなくなっている。


 この場で全てをうっちゃって逃げ出すこと、それは可能な気はした。おそらくもう、誰として止める者はいないだろう。それで、いつもの日常に戻れば終わり。聡太との日常が始まって終わり……


 でも、これだけのことを見せられて、眼前で展開させられて、それを無視するなんてことも、私には出来そうになかった。


 恭介さん、主任……


 何とゆーか、ありがとう。そんな想いに至った私は、凪ぎに凪いだ気持ちのまま、盤上を歩み出していく。


 ……まずは主任のところに。


「……いまの私に……どれだけの『ダメ』があるかは分からないですけど……それでも私と組んだまま、『上』を目指してくれますか……」


 ぽつり告げた言葉は、考えに考え抜いたものであったものの、どこか、自分の内からは出ていないような感じもしているのだけれど。


 もうやるしかない。行き着くところまで行かなければ、今の私は「浄化」されないような、そんな気持ちになっていた……


 も、もちろんさ……キミと組めるのなら、人生を買える、変える大金を得ることも夢じゃあない……との返答をしてくれる主任ではあったけれど。


「……」


 私は無言のままそのひょろ長い体躯の側まで近づくと、渾身のローキックを撃ち放ち終えていたわけで。


 ばりあふりい、みたいな呻き声を上げて蹲る主任……ええ……何で私、今蹴りを放ったの……? と自分の所業に自分が困惑してしまうのだけれど。


「……だったら目指そうぜ……遥かな高みをよう……」


 最早、自分の中の誰が喋っているのかも分からなかったけど、はいですッ、と良い返事をするようになった主任は、こちらに熱いまなざしを送ってきたわけで。


 ……あとは、こっちか。


 わ……か……く……さ……と、もう声も枯れ果てた感で、それでも立ち上がった恭介さんは、相変わらず、私の目だけを見つめてくるのだけれど。


「……!!」


 それに応える言葉は無かった。答えられそうな文言も、持ってなかった。だから。


「!!」


 唐突に降り抜かれた私の右拳が、困惑を全体に浮かび上がらせた、その悪趣味なペイントが施された顔面に放り込まれていく。


 もう言葉とか、まともに出せる気はしなかった。だから、抱き締めるようにて、ぶん殴るほかは無かった。


 殴るたびに視界がぼやける何かに狭められてきていて、もうまばたきしたら、溢れ出してきそうだった。



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