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206/312

♭206:公命かーい(あるいは、so cuteに/訴求/遡及)


 まああっさりその「S極くん」こと丸男の正体は割れたわけなのだけど、それでもまだ私の食道の奥あたりに嫌なむかつきは残っている。何だろうこれ。辺りは凄い歓声。うーん、そんな盛り上がる要素あるかなぁ……


<S極くん評点:39,888点……よって『3手』が付与されます>


 そして当のS極。脂肪の下に筋肉がついているという、ガタイが知ってたのと違うくかったから今まで分からなかったと思わなくもないけど、冷静に見たら丸男以外の何者でもないな……何があったか、そして何のためかはよく分からないけど。そんな真顔の私を置いて、対局は粛々と進行していく……!!


「ゲババババ!! 初手から三手指しとは、これまた幸先よかばってんだわいなっはぁぁぁ~!!」


 急に語尾を変えてきたS極(まるお)だったけど、もう割れてんだっつうの。あくまで私は無視する構えか……まあそれならそれでいいけ↑ど→。


「ではまずはいちィィィッヒィィィィッ!? 何か殺意が僕の対面から網膜鼓膜横隔膜を震わせるほどの小刻みさで放たれてきているよ怖いよぉぉぉぉぉぉッ!!」


 思い切りの脱力「絶・不気味谷」の表情でS極を見据えてやったところ、そのような懐かしいリアクトが返ってきた。何かよお……相手が相手って分かったら、もう何だかルール無用でとっととシメたくなってきたよなあ……


<い、いけませんよミズクボ選手っ!! 過度の威嚇にはペナルティを取らせていた……がひぃぃぃぃッ!? 目、鼻、口……顔中に開いた穴という穴が漆黒に塗り込められているかのようにこちらを呑み込まんばかりにパカリ誘っているかのように確かに視認できてしまうよ怖いよぉぉぉぉぉぉッ!!>


 実況少女をも、持ち前の顔筋によって牽制してしまった私だけど、今回ばかりはどうしてもこの対局形式でやりたいみたいだ。震え声ながらも仕切りは止まらないようで。


「『8二移動』ッ!! 『6六炎上』ッ!! 同じく『4六炎上』とくらぁッ!!」


 丸男……S極も持ち直したかのようにそうのたまってくるけど。どうやら「9×9」の枡目を指定して、そこに何かしらの「行動」をさせているようだ。次の瞬間、私の右斜め前あたりの枡目のひとつに、多分CGか何かだろうけど、見上げるほどの高さの「炎」が舞い昇ったわけで。


 こいつが「炎上」……鑑みるに、そのマスに入らせないようにする「防御壁」ないし身も蓋もない表現をすると「お邪魔ブロック」的なものか……


 「ゴール」と告げられた「5五」のマス……そこと私のいるマス、あるいは主任のいるマスの斜め直線状にそれぞれ「炎」が現れたわけで、すなわち我々チームの最短距離でのゴールが妨げられたことになる。そして自分は一歩前進と。


 なかなか戦略的……と思わせられなくもないけど、まあまだ始まったばかりだ。落ち着いていこう。落ち着いて……主任の手筋を堪能しますわんっ。私は一度、右方向:約20m先にいるその細い姿向けて熱視線を送ってみたりする。




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