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205/312

♭205:消散かーい(あるいは、要らん邂逅/一聞いて一知る男)


 「9×9」の盤上の四隅に、各チームの1名づつがいる状況。交互に撃ち放つDEPの評点を、「行動力」に換えるとか何とか言ってたけど、大丈夫かな、その手の複雑な対局形式って、往々にして開始5分くらいで破綻するのがこの世界の(つね)的なとこあるし……


<1:S極くん

 2:サイノ選手

 3:M極くん

 4:ミズクボ選手>


 公正(かどうかは知らんが)な抽選の結果、手番はそのように定められたのだけれど。先攻が有利なのかとか、そういったことは皆目わからない。まあ、相手方の出をうかがえるから、いいのかも、この順。


<DEP着手時間は『30秒未満』ッ!! 『評点』は会場にお越しのお客様および中継を御覧の方から無作為に選ばれました『1万人』の方それぞれが持つ『10点』……『10万点』が満点となりますが……もちろん、課金により『点』をお買い上げいただき、それを『推しダメン』に突っ込むことも可能ですので……その辺りはいかようにも……ククク>


 どうも実況少女のキャラというかメンタルは定まらないな……というか何が「推しダメン」だよ……そしてこれまた謎の「課金要素」……そうまでしてドブにカネを捨てたい人らがいることに、真顔になるを禁じえんわー。と、そんな詮無いこと山の如しなことを考えていたら。


<その他ッ、細則は催促しないと出さないんだからねッ!! ……ということで、『一巡目』、開始と相成ります。S極くんっ、着手お願いします!!>


 また例の有無を言わさない進行のもと、まったく指針も掴めないままに対局は突如始まったわけなんだけど。私らの身体にいつの間にか手早く装着されていた「プロテクター」には、おそらく、いや絶対に電気流す装置(やーつ)が組み込まれているだろうなわけで、この未知なる盤上の遊戯に気を取られ過ぎていてもいけない気がする。まずはDEPと。DEPが重要よね。どうくる?


 私の20mくらい先に仁王立ってる「S極」……プロレスラーばりに恵まれた体躯の大男が、両脇をかっぽかっぽさせながら、遂に第一手を放つ……ッ!!


「『ぼ、僕は昔、つきまとってた女に、シシリー産の岩塩を袋いっぱい撒かれたことがあるんだな……そしてそのうちの一粒が鼻腔の奥の指じゃ取れないところにひっかかって、三日くらい左目から涙が止まらなかったんだな……』」


 繰り出されたDEPは何と言うか脱力を誘いつつも想像したら鼻の奥がムズ痛くなる代物だったのだけれど、いや、そこじゃないな。


 こいつもしかして……


「あんた丸男?」


 聞こえるか聞こえないか微妙なところで呟いた私だったけれど、その言葉を発した瞬間、視界の先の「S極」の巨体が遠目で見て分かるほどに震え出したのだけれど。


「ぬ、ぬあ~はっはっはぁッ!! な、な~にをいきなりワケの分からん戯言をのたまってるんですかいな、(ぬえぃ)すわぁ~ん。私は今も昔も、揺るぎなき『S極くん』で、あ、ござ~りますぞえ」


 野太い声でそう返してきたけど、うん、これ丸男だぁー。



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