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204/312

♭204:潜行かーい(あるいは、ブリング/GET/ギャラクシア)


 遅まきながら、会場が盛り上がりを見せて来ていた。ドーム状の大空間に、でもちょっとの逡巡を孕んだかのような歓声が降り下りてきているのを私の鼓膜は捉えているのだけれど。


 一応、「巻き」で「巻き」でと運営ないし対局相手からもうんざりするほど言われている手前、私と主任もそれに従わざるを得ない状況にはある。フィールド上に設えられた「9×9」の「パネル盤」の上で、大人しく説明を待つばかりだ。


<本対局はッ!! DEPを各チーム交互に撃ち放っていただき!! その評点に対応した数だけ、『行動』が出来るというルール!! 『行動』の選択肢は4つ!! ①指定した『パネル』の『炎上』!! また同様に!! ②『炎上』しているパネルの『鎮火』!! そして!! ③隣接したマス目への『移動』!! 最後が!! ④相手の居るマス目への『攻撃』!! これらを駆使して、天元であるところの中央マス、すなわち『5五』へ一手でも早く到達した者を含むチームの勝利と相成ります!! 非常に戦略的ですね!? 通好みですよねッ!?>


 実況少女は、私らを置き去りのそんな高テンションでルール説明の言葉を紡ぎ続けるのだけれど。うーん、さっぱり伝導してこないんだが。


 それでも現況を確認してみる。「9×9パネル盤」の、私らがいる側を底辺と考え、将棋盤に例えると、右上の角、すなわち「1一」のマスに「M極くん」(細い方)が腕組みをしつつ余裕の態度でいる。その反対側、左上の角「9一」に「S極くん」(太い方)がその巨体をふんふんと上下させながら屈伸運動をしているといった感じ。


<……このインカムで、チーム内での意思疎通は出来るようだね……戦略……それはまだいまいち掴めないけど>


 おっと。どうすんべい、みたいに放心に近いメンタルで立ち尽くしていた私の耳に、そんな心地よい低音が。主任の言う通り、事前に装着させられた簡易的な片耳に引っかけるタイプのヘッドセットで相互に通信は出来るみたいだ。私と主任もそれぞれ盤上の端と端、「9九」と「1九」にいるので彼我距離はおよそ20mはある。大声出してもちょっと届くかどうか分からないくらいなのでそれは有り難いのだけれど。


 でも、それとは別個に、対局者4人全員に、何か懐かしさすら感じさせる「プロテクター」が全身装着されていることの方が気になる。ヘッドギアから始まるそれらは、胸部と腹部、肘膝まで要所を覆っていて、さらには両拳にグローブまでもが。これってもう殴り合いを前提としたいでたちだよね……


 戦略なのか、戦術なのか。その両方なのか。今の段階で分かることは、混沌であるという、その一点だけなのだけれど。


 でもどの道「DEP」が大元の鍵になるってことでしょ。であれば。であればぶちかます他はないわけで。んでも、今このガタガタの精神状態でそれが出来うるか、そいつが不安でしょうがないって面もある。んんであれば戦略・戦術、そちらに重きをシフトせざるを得ないのか……? んんんまあ、やるしかないか。やるッ!!



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