♭203:小瓶かーい(あるいは、プラセンボリック/鈍色世界)
<それでは、準備も整いましたところで、『DEP着火インフェルノォォォォオオウ』を開始したいと思います!! この対局は一足飛びに『2回戦』に相当しますゆえ、この対局の勝者は、この『Mブロック:決勝』へと駒を進めることとなります!! そう、全体としての……『準々決勝』へと……>
真顔の私らをガン無視しつつ、実況は進行していくばかりなのであり。勝てばベスト8に進めるってことか。そう考えれば、まあラッキーなのだろうか……それともたまたまイレギュラーだっただけなのだろうか……わからない。言うてこのダメ界隈のことで分かることなど何ひとつ無いので、それはそれでいいのだろうけど。
まったく高揚する要素も無く素立ちの傍観者と化した私がいる。でもその私がいる会場であるところのサッカーグラウンドに、係員の黒服たちが大挙して何やら準備し始めたかと思ったら、ものの5分でそれは組み上がっていた。
「……」
正方形のタイル……3m四方くらいあるだろうか。薄いグレーのそれらが、ぴっちりと正確に敷き詰められている。縦が9、横も9。「ア○ック81」と言ったら分かりやすいだろうか……いや、そんなことは無いか……
皆目見当もつかないまま、私と主任はその連なる「タイル」の上へと誘われる。巨大な「将棋盤」と、言えなくも無い。真正方形であることに目をつぶれば。そしてその上にまるで「将棋駒」のように配置されている私たち。これはいつぞやテレビか何かで視た「人間将棋」に似ていなくも無い……いや、そんなことも無いか……
二人とも今の出で立ちはかっちりのディーラー服であり、勿論その足元は曇りひとつ無く磨き上げた革靴なのだけれど、いや滑らんかな……と思ってタイル上でずりずりと確認してみたら結構なざらつきがあった。そこは心配しなくて良さそう。
……いや、いま私、この上を飛んだり駆けたりする前提だったよね? 何だろう、何でそんな風に考えてしまったんだろ。ふと思い出したのは、先の「女流謳将戦」だかいう私が出場した「大会」であって、その時は「ダメ」と「格闘」が融合した形式で行うとか言ってたわりに、後半は何でもありのぐだぐだな代物……それこそ十何人とかで一斉にボテくり回すようなバトルロイヤル的なものもあったことを脳髄が無駄に記憶していた。
今回もそれが忠実に履行されること、否めない……
相手の二人、「S極M極」だか言っていた二人はのガタイは、太い細いの差異はあるものの、結構しなやかに張っている、気がする。まともに格闘なんかに持ち込まれたら、はっきり不利だろうことは分かる。私の蹴りは鋭さを失ってはいないとは思いたいものの、身体を躍動させる精神の方に少し滞るわだかまり的な奴を抱えているから。
でも、それでも、そこに向かい合わないと。というか、巻きと言いつつ全然進行が為されていないのだ↑が→。




