♭202:灼熱かーい(あるいは、極上/ステロマ/トライアド)
<……『DEP着火インフェルノォォォォオオウ』とはッ!! 自らのDEPを『炎』と換え!! 『9×9』の枡目を自分たちの『色』の『炎』で焼き埋め尽くした方が勝ちというッ!! 極めて画期的かつ、戦略的要素が高い対局形式なのであるっ!!>
その対局者たちを完全に置き去りにしつつ、戻って来たと思われる実況少女の説明が響き渡るのだけれど。まったくもってどういう形式なのかが分からないのだ↑が→。
「やいっ!! 何のことだかさっぱり分からないぞな、やいっ!!」
真顔の私と主任を代弁してくれるかのように、「♂」マークのガタイのいい覆面の方がそう問うてくれるのだけれど。あれ? 何かくぐもってるけど、この声、何か聞き覚えがある……
「『巻き』と言うたはずだわいな~!! しどろまどろっこしいルールなど、不要も不要なんだわいな、もしッ!!」
畳みかけるようにしてわめきたてる細い方の声も、あっるぇ~、何か、聞いたことあったような……
「……」
うーん、声質は記憶にあるけど、テンションとか言葉尻が違うからぴんと来んのかも知れんけど。でもぴんと来てはいけないような、嫌な予感は脳髄の片隅で感じてもいるので、とりあえず、そこは流しておこう。うん、そうした方が絶対いい……
図らずも来た、背筋に液体窒素を浴びせられたくらいの悪寒におののきながら、戦いの形式よりも、戦う相手の方にヤバみを感じ始めてしまう……これは、何と言うか、ただでは収まらない気配……ッ!! 当たるんだ、こういう時の予感は当たりえぐっちまうんだ……
<難しいコトなど何もありません……そう、この対局形式はいわば……>
実況はそんな私の逡巡など置き去りに、どんどん説明を続けていくのだけれど。と、私の耳元で小声で囁かれる。
「若草クン、意外とこれ、好機かも知れないね。今までついぞお目にかけること叶わなかった、我々の武器、『ディーリング』が生かせるかも」
賽野主任……この「ダメ」にそこまでのポジティブ思考を未だ保てているなんて……ディーラーとしての技術とか立ち回り方は……多分やっぱり爪の先ほど生かす余地は無いんではないんでしょうか……哀しいけどこれダメなのよね……来るよカオスが……
<そうッ!! 言ってみれば『ア○ック25』なのでありますッ!!>
言うた!! やっぱり言うた!! 直球に過ぎるよ。そして直球の割にはさっぱり分からないところが混沌だよ。しかし、
「な」
「なるほどぅ……」
覆面二人は何かえらく納得しちゃったわけであり。もういいよ、もういいから「巻き」とか言ってたように早くやろう……結局ずるずる行ってるじゃないのもう……
凪ぎまくる心の片隅には、でも本対局、どえらいことが起こるんじゃないの的、どうともしようのないものが転がっている。まあ全力でぶつかるだけだけれど。あわよくばディーリングも披露してやろうまいっ。




