♭199:常緑かーい(あるいは、正調/変調/クレイノヴァ)
そして。遂に。1回戦第4局(と呼称すると今聞いた)。我々の出番と相成る……
「……」
まあそこまで改まることも無いか。今度の対戦相手とはさっき面通しは終えてるし、マウント取りも出来ていると思われるから。
「ふ、フハハハ、残念だったな水窪よッ!! 今回のルールにおいては、貴様のクセの悪い足技も出る幕は無いってことで、純粋なダメ勝負ならばッ!! そして仕組みを熟知したこの『DTDG9』ならばッ!! 怖るるに足りんというわけだあ~はっはっはっはあ!!」
「見える、見えるぞォォッ!? お前らが? 私らの前に? ひれはべりいまそかる図が鮮明になぁぁぁッ? のわははははぁああッ!!」
うん、もう何て言うか、いちいちのテンプレ感だね……戦隊風味の全身スーツに覆われたちびっ子二名、ウシュクハラ(ロータス竪行)と、ジキタシ(シメント悪狼)……以下めんどくさいので「桃色」と「黒色」と呼称する……は、対局場に降りて来た私と主任を視界に入れた瞬間、そのようにがなり立ててくるわけで。
「……」
まだ、理解が出来ていないようだったから、再びのローでも入れてやろうかと思ったけど、二人はそれを獣の本能で察知したのか、素早くすかさず距離を取られるけど。
まあでも言われたことは一理あることはある。「格闘」が絡まないとなると、私の能力はおおよそ「10分の1」ほどに縮小してしまうのだから……っ。
でもやるしかねえ。図らずも、この麻雀チック遊戯、「頭」を使わないと言い切れるわけでもない、いや、かなり戦略が物を言うのではと先ほどから思っている。仮にもディーラーを生業としている私&主任。その裁きを存分に発揮するのは、いま、ここの場ではないだろうか……でも、
「理」でことを進めることに、何と言うか得も言われぬ違和感を持っているのも事実。さっきの「少年」の、迸るような熱く思えたパトス的なものに、共鳴させられたからかも知れない。ってそこまででもないか、また綺麗にまとめすぎだ私。
でも。でもだ。
私もまだ持っている。心の奥のそのまた奥にモヤる何かを。
それを吐き出すこと、昇華させること。それがもし出来たのなら……全部にまた、向き合えるのかも知れない。かけがえのない聡太と共に。そして……
「……」
いま、隣でやわらかな笑みを投げかけてくれている、この主任と共に。
そんな、桃源郷的思考に意識の大半がフッ飛ぼうとしていた、正にのその時だった。
「グワカカカぁッ!! 茶番は省略じゃぁぁぁあぁぁあああぁぁッ!!」
野太い不協和音な胴間声が、会場に響き渡った。うーん、これまたさらにの、混沌場の予感……




