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196/312

♮196:天罪ですけど(あるいは、がばりが淵/ダメの水面/ふりさけば)


 もう、ルールとか関係ないところで、「私」のツモは爆裂していたわけで。


 ―カンディンスキーの『黒の正方形の中に』ってありますよね……あの抽象的な図形の連なりの中に空駆ける天馬をフォーカスした時に、心と共にぱくり開いちゃった件―


<ムロト:満貫ツモ:2000・4000>


 ―カジミールの『冬』に突き立つ三本の雲の柱……三本って思った瞬間に、ううん!! 思わずヒクついちゃったってゆー件―


<ムロト:跳満ツモ:3000・6000>


 ―モンドリアンの『ブロードウェイ・ブギウギ』に至ってはもう!! 黒い正方形を内包しているが如くのベージュ色の優しさを目にした途端にもう!! ブチ流れちゃったってあははははは!!


<ムロト:倍満ツモ:8000オール>


 ―キース・ヘリングの『Tuttomondo』はあは!! 説明要らないっていうか、ナチュラルなパワーでしょ? あれで芯揺さぶられないヒトいんの? 揺さぶられて下から何かズル出て来ちゃうでしょって、てかそれはヒトなの? ヒトならざりし者なのってあははははははははははははははァッ!!


<ムロト:三倍満ツモ:12000は12100オール>


 奔放に、奔放に。心の中の「淫獣」が暴れ回るがままに。


<東:ガンフ :-6100

 南:アオナギ:18900

 西:ツバサ :-6100

 北:ムロト :97300 >


ガン「ハギィィィッ!! 絶え間ない電流が収縮する間も無くおいどを刺激し続ける黄金体験んんんんんッ!!」


ツバ「ヒギィィィッ!! もうトンでるッ……もうトンでりゅからぁはぁぁぁぁぁッ!!」


 気が付いたらガンフさんと翼の二人をマイナス圏外まで追いやっていた。「トビ」二人を出したチームが失格……とかさっき言ってたっけ。まあでも、そんなルールとか、数字合わせみたいなこととか、些細なことに過ぎないよね……僕は両隣りでひときわ大きな痙攣の後、白目を剥いて脱力した二人をちらと見て、残る最後の「敵」、うすら顔長い隈取りメイド、アオナギを心からの笑顔でもってして向き直る。途端に何とかその引きつらせながらも激痛に耐えていたかのような顔面が、青を通り越して白くなっていくのを視認したけど。


「……ありがとうございます。僕はあなたに二度救われたことになりますね……心のどこかでいつも父さんを探していたような僕……その求め続けたヒトが、実はもう自分の中にいたっていう……これは何だろう、『青い鳥』体験? うふふふ、僕は私、私は僕……」


 心の中でブンブンと揺れ動くモノを表現しようとすると、そんな感じになった。意味不明かも知れないけど、僕は夢の中の都合のいい思考のように、それを当然のこととして、うんうんと納得している。


 フギィィィ、何かを超越した勢いで、大切なものを根こそぎ失ってしまったかのような、有史以来、類を見ない底が抜けた笑顔に変化しているよ怖いよぉぉぉッ、との叫びのようなくぐもり声が、その歪んで引き攣った青紫の唇から漏れ出てきたのだけれど。



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