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182/312

♭182:性急かーい(あるいは、メトロポリスィック/十全/アシドロマ)


 先ほど決勝トーナメントの組み合わせが発表されたんだけど、予想通り私と主任の組はトーナメントカーストの最下層に位置していたわけで。


「……」


 ううん、逆に清々しい……「魑魅魍魎」うんぬんとわけの分からないこと言ってたブロック分けの、あくまで運営の呼称を踏襲すれば、「M」の枠。つまり左から二番目のブロックに私らは配されたわけであり。


 幸い、「お仲間」はいなかったので同士討ちは避けられた、とか思ってたけど、勝ち進むとしたらいつかは当たる可能性はあるわけで、例の姫様が言っていた通り、どんなときも。全力で行かないともとよりダメだっつうことよね。


 というか「同士討ち」は避けられていなかった。「少年」チームとアオナギチーム。このふたつが初っ端からぶつかり合うことと相成ってる。その露骨さも清々しいんだけれど、なんかそこら辺はしがらみみたいなのもあるみたいで、各々が微妙な感じで対峙しちゃってるけど。うーん、いつにない緊迫感。とりあえずは私と主任は蚊帳の外っぽそう……


 と、結構ながなり声が近距離から放たれてくる。私らに? と思ったけど、どうやらその隣にいた姫様と執事に向けての、らしい。見れば最初期にこの会場のエントランスホール辺りでつっかかってきた全身スーツの奴らじゃんよ……色は赤とオレンジ。いわゆる「戦隊モノ」っぽい恰好だけれど、テンションからしてまともでない雰囲気はいやになるほど身に纏っている。予選からこっち、だいぶ存在感なかったけど、勝ち残ってたのか……まあ、あれだけのイキれ方をしながら敗退していたらアレは何だったんだってことになるから、まあ妥当なのか……とか滅裂なことを考えていたら、さらにのがなり声がリフレインしてきた。一体、なに。


「のわ~はっはっはっは!! 遂に……遂に!! 私の人差し指の仇が討てるってそういう塩梅かい? そのための舞台としては上々なんじゃあないのかい?」


 私の目の前に、目に来るピンクの全身スーツの輩が突如現れ出でてきたわけであり。その高笑いでの登場、どうにかならんもんかね、みたいな、非常に凪いだテンションで相対する他、私には出来そうもないのだけれど。ああーそういや、こいつが人のこと呼び捨てにしつつ指突き突けてきたから、軽く薙ぎ払ったんだっけ……その指を。


「度重なるラッキーにて、お前らがこの決勝に勝ち上がってきたことは知ってるんのさい? だがその幸運もこれにておしまいださい? なぜならこの『ロータス竪行(しゅぎょう)』と……」


「あ、『シメント悪狼(あくろう)』の? 超絶タッグの前には? あ、何人たりとも抗えないのだから?」


 多いなー「?」が。もう前菜(オードブル)からこちらの腹をぱんぱんにしてくるようなスタンスはやめて欲しいんだ↑が→。


 でもとりあえずのマウントを取るのが習い性になっている私は、その桃色と黒色という、組み合わせとしては悪くない全身スーツのコンビの双方の右膝横辺りに向けて、等しく峻烈の右ローを分け与えるのであった……


 でるぱっ、と、いるいるっ、のような呻き声を上げながら、その二人のちびっこいのは膝からくずおれていく。



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