♮178:無道ですけど(あるいは、見参/推参/ぼく降参)
<そして……皆の衆刮目せよ……ダメ世界が震撼した冥土からの最高執行侵略者……ドッペルゲンガティック=ジェネティカを相方に引き連れ、これがSATURIKUの超絶二重奏だ……天を!! 地を!! 人を!! すべてをダメに染め上げるため再び!! 舞い降りた……王の中の王、室戸 岬、アンド、宗谷 翼ッ!! いざ見参ッだぁぁぁッ!!>
長ーい、そして大袈裟に過ぎるでしょうに……実況のかいかぶり気味な絶叫紹介を受けつつ、僕と翼はサッカーフィールドを模した「スタジアム」の強烈なスポットライトの中に歩み出ていく。歓声が身体全体を包み込むようだ……何となくの「帰ってきた」感を存分に味わいながら、僕は翼と歩調を合わせ、いい姿勢のまま人工芝の上をちょっと高めのヒールで闊歩していく。
<何と……今回のこのいでたちは……何だッ!? メイドとミリタリーの、岬と翼の!! まさにの融合体じゃあないか……と、尊い……尊いとしか言えねえ……>
段々と実況少女の口調は定まらなくなってきているけど、そう、ようやっと、決勝に来て初めて……
「……」
渾身作の服装に袖を通せたわけで。良かった……これ陽の目見なかったら何のための再びの仙台だったんだよ……
モチーフは「チュニック風メイド服」と「カモフラミリタリー」。そして色彩基調は「金と銀」。袖口を肩間際までで切って、裾も膝上。全体的に露出高めだけど、それは僕の力量に因るところが大きい。肘とか膝の可動域の作りはまだ難しすぎて、とてもオーリューさんのように「動きに先回りして収縮する」みたいな離れ業は出来そうも無いから、そこはオミットした。
けど、落ち着いたツヤ消し色の金・銀は、カモフラージュ柄としても成り立つほどのしっくりさだ。ここに全てのバランスを賭けたを言っても過言じゃあない。そして肘膝には黒色のプロテクターで全体色を引き締める。もちろん「防具」としての機能も付与してのことであり、この一石二鳥さ……我ながら最早これは新基軸なのだ……
そして頭には白フリルのカチューシャ。ここは鉄板を敢えて被せることでモチーフを一点で強調する。完璧だ。パーフェクトな戦闘服が今、ここに降臨したのだ……
<さてさて!! 決勝進出の20組が出揃ったところで!! そうですね、『溜王国国歌』斉唱と!! 相成るわけでございますよっ!! 御会場の皆々様方も、どうぞ御起立の上、国旗掲揚と国家斉唱を願いますっ!!>
ああー、やっぱやんだそれ……今回はさらに「国旗」もぶち込んできたのね……スタンドの正面に立てられた高さ5mほどのポールには、黒一色をバックに、様々な原色の爪で引っ掻いたような文様が為された布切れが舞っているわけで。怖えよ。見てると精神的に不安になるような悪い意味での緻密なデザインだよ……
まあいろいろ考えても仕方ない。全てを呑み込む覚悟で、僕は気持ちを落ち着けていく。




