表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
169/312

♮169:高徳ですけど(あるいは、催促する/最速な/細則)


 「DEP充填」が為されたことを告げられ、それを行ったのが例の「姫様+執事」だったことに驚き、慌てふためいてその場に駆け付けるという、今考えてみたらかなりの浅はかさを帯びた行動に、今になって初めて後悔がにょっきり立ちはだかるのだが。


 僕ら……いわゆる運営側じゃない「異端者」たちが「充填」したということも全・参加者に伝わるわけだから、そこを狙って運営の手の者たちが殺到するっていうのは、かなり確度高いよね……でもその瞬間の僕の思考は、とにかくあの二人の所に赴いて、何とかしなくちゃ、というものに支配されていたわけで。


 ぼんやりとしたままだった翼を促して、いつの間にか「転移」していた山裾の隘路を走りに走って来たのだけれど、やっぱり包囲されとった。僕の装備している「バイザー」に、次々と参加者たちが「DEP充填」を完了しつつあることが表示されていく。


 一触即発。もはや抜き差しならないところまで事態は落とし込まれておる……途中で合流したアオナギと丸男さんとも、とりあえず向かおう、みたいなアイコンタクトをしたままでこの場に集まってしまったのだけれど。


 それってやっぱり窮地にのこのこ自発的に集ってしまったってことにならないだろうか。草むらから飛び出してみたら、「姫様+執事」さんがいい姿勢で銃を構えていたのは想定通りだったけど、その向こうに若草さんと「主任」さんまでもいたのは想定外だった。要はこちらサイドの全組8人が一同に会したことになる……この修羅場なのか鉄火場なのか、判別しづらい場に。


「ど、」


 どぉぉぉぉぉすんですかぁぁぁぁッ!! と叫び尋ねたい気持ちを抑えながら、僕は周囲の様子を、「バイザー」に呼び出し確認し始める。向かって正面方向の林の中に7組14人がとこ潜んでいるよ……肉眼では見えないところに。さらに背後から迫る2組と。こりゃ完全に包囲されたな……川の流れる音だけがいやにクリアに聴こえる。


 静寂。こちらの出方を伺ってるのか? それとも一網打尽にするためのDEPをいま、充填しているのか? 不気味な静寂。でも、いまこの時にしか、何かを仕掛けるなんてこと出来ないんじゃあないの? だったら、僕らも何か行動を起こさないと。


「……!!」


 意気込んでその旨を、集った自分のほか7人に告げようとするものの、拳銃構え姿勢のままの姫様に、あっさり制されたわけで。


<心配ナイ。我々ハ完全ニ包囲サレテイル>


 妙に機械感のあるその翻訳音声が耳に流れて来るけど、言ってることの整合性がまったく掴めないんだ→が↓。いやいやどうすんのこれぇ!?


「ごどもすごんは無かど。おんじゃらきは、わてらがのうっしゃろあんばに、すこ隠れてけつかってくれもーすでっしゃろ?」


 執事の方は翻訳を介さずにそう言ってくるのだけれど、翻訳してもらった方が最早分かりやすいのではと思わせる難解言語……でも何とか聞き取れた感のある「後ろに隠れろ」という意と思しき指示に従い、僕らは姫様と執事が銃を構えて前線を張るその背後に、身を縮めながら収まったのだけれど。


 いったい……ここからどんな手があるっていうのだろう……でももう任すしかないよね……僕は図らずも目の合った若草さんと、これ以上はない諦観真顔のアイコンタクトですべてを共有するのであったけど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ