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155/312

♮155:荒神ですけど(あるいは、アース/ディフェンス/アイランダ)


 いやいやいや。やにわに物騒になってきたけど。銃とか、撃ったことないんですが。


「……案ずるな少年。あくまで本質はDEP。拳銃こんなもんは所詮添え物よ。お前さんは構わずぶっ放せばいい……『淫獣』か何かは知らねえが、己の底に眠る何かをよぉ」


 アオナギはそんな毎度毎度の、その場その場でころころ変わるが如くの台詞を吐いてくるけど。いやまあ図らずもそうなんだろう、そうなってしまうのだろう……そもそもダメの界隈で諸々の要素がうまいこと消化/昇華された例なんて数えるほどしかないし。いや、数えるほどもないかも知れないけど。


 自分の中の「本質」も揺らぎつつある中、果たして本質と言われても何となく響いてもいない自分を感じているわけでもあり。定まらん……翼のキャラ並みに定まらんよ……


 逡巡をかなり外に向けて発散していたのだろう、野性味あふれる妙齢の美女……若草ねえさんが、ふっと笑って僕の肩を拳固で軽く叩いてきた。


「……『少年』、あんま思いつめてもいい事ないわよぉ~、この場にいる時点で『正気』とはおさらばしてなくちゃあならないんだから。ま、この後当たるかもしれない『強敵』に塩を送るのも何だけど……正気ぶっちぎって、いちばんの高みまではっちゃけられた奴が優勝する、そんな修羅の世界よ、ここは」


 歌うように紡ぎ出された少しハスキーなその声は、何だか僕の鳩尾の奥の奥に圧をかけてくれたみたいで。


 そうだよ、考えてたって答えは出ない。なら……目先の対局に全振りするだけだ、自分の中の、もやる何かを。


 手にした「ベレッタ」と説明された拳銃それは、メタリックな質感を放ちながら、結構な持ち重りで、その存在感を示してくるけど。これはあくまで飾り。飾りの手段なんだと、自分に言い聞かせるようにして両手で軽く保持してみる。よし、少し落ち着いて馴染んで来た。と、


「ゲハハハハ、群れ為す虫どもはこいつで掃射じゃぁぁぁあああああっ!!」


 背後から突拍子もない声が掛かったわけで。翼ェ……本質じゃねえって言ってんだろォッ!! 左右の手に小銃を構えながら、完全にイってる目でそうのたまう我が兄だけど。こいつの本質って何だろう。頭痛を禁じ得ない……


<全70組!! ご用意は出来ましたか? それではご案内いたしましょう……『ウォーカホリック=テンペスタルフィールド』ヘッ!!>


 そんな中、いい感じの間で、実況アナウンス少女の声が降り落ちて来る。いよいよか。いよいよ始まる……運営の、こちらを完全に潰してくるだろう多勢無勢な戦いが。


「……」


 緊張を高揚感で無理やり包んでいるかのような僕らとは全く異なり、少し離れたところに素立ちしていた、先ほどのメイド美少女は、手の中の細い銃身の拳銃を凪いだ目で見ながら、凪いだ様子でいる。大丈夫かな……


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