♮130:暴利ですけど(あるいは、失うものは多いけど/得るものいうたら要らんもん)
<先手:No.10900:着手>
先行は相手方。「僕獣」と称したちょっと言ってる意味が分からないショタっ気たっぷりの結城少年の手番。「獣の文字」……「獣字」を持ちし何とかとか言ってたけど、設定を小出しにするということを知らないヒトたちがこのダメ界を形成していってるんだね……
真顔になっている場合じゃない。一次予選で後付け的に説明された「平常心が400%を超えると即死級電撃」という突拍子も無いルールは未だ持ち越されているそうで、評点に限らず、自分の精神をしっかり保っていないと一発アウトもありえる状況なわけで、つまりは気を抜くな。
時速60kmで飛翔しながら、僕と翼、結城少年と喘ぐ金髪美女が距離約2mくらいのところでかっきりと対峙した。どことなく妖しさを湛えた少年の瞳と目が合う……来るッ!!
「……『こんなパツキンダイナマイツバディのねえちゃんも簡単に墜としまくりな、御覧の通りのキューティクルフェイスで売ってる僕だけど……その維持には結構な額のカネを費やしているっていうそんな話……今年でもう31だしね……』」
二段階DEP……ッ!! 整形COからの、年齢CO……怖ろしいほどの連撃が、撃ち出されてきた!! というかかなりの先輩だったんですね……言葉の端々にその兆候はあったものの。そして、
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結構だ。結構な評点だよ……でもこれを上回ることが出来なければ……ッ!!
【淫】の文字が、僕の頭の中にピンクい輝きをもって浮かび上がる。ぶちかますしか……いや、待て。
「……」
しばし沈黙真顔のまま、逡巡してしまう。これでいいのかという思い。やはりそれは拭えきれないものであったようで。全力でDEPを撃ち放つ覚悟は出来ている。しかしそれが「淫獣DEP」でなくても……いいんじゃあないか?
全力の自分。自分の全部、それを撃ち放つことができるのならば……「本質」など無いと目の前の少年は言ったけれど、自分の中の譲れないダメな何らかを……それをさらけ出さなければ、魂は浄化なんかされないんじゃあないのか……やる。僕は自分の「本質」をそうと決めて、ぶっ込んでやるんだ!!
肚は決まった。思い切り息を吸い込んでから、僕は全力で声帯を震わしにかかる。
「……『服飾の修行中なんですけど、初期の頃ハーフパンツ作ろうとしたら裾絞りすぎてちょうちんブルマみたいのになっちゃったって、そんな話』」
ははは、そんな奴いないだろって思われるかもだけど実話だ。笑っちゃうよね。笑っちゃうほどにダメなエピソードだよね……
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よし、評価も上々……じょうじょうッ!? いや違う!! 一桁少なはぁぁぁぁいッ!!




