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♮127:強敵ですけど(あるいは、輪廻ダル/摩擦ーセッツ/カシードラル)



 疾駆すること約5分。僕は少し速度を緩めると、次なる対戦相手を物色しているのだけれど。


「……」


 うーん、わからない。そもそもがそもそもに、各々が色んな体位……態勢をキメていることもあって、そのインパクト強すぎる外観からは、何らかを推し量ろうとすること自体難しい……先ほど考えた通り、「見た目強そうなのが意外と駄目」というこの世界の法則に従い、次のを定めようとしているものの、ぱっと見で強そうなのがおらん……


 前後左右に、同じようにペアが絡み合った姿勢のまま、結構な速度で前進しているという、なまじっかの悪夢より悪夢な光景は開始時からいささかも変化していないのだけれど。それでも魚群のようなヒトの流れが、徐々にばらけていってるのは見て取れている。


 個々の認識はしやすくはなっている……なっているんだけれど、今残っているヒトたちは、すなわち「一勝」は上げている勝者たちなのであって、てことはもう気が抜ける相手ではないということだ。そんな風に考えてしまえば考えてしまうほど、こちらから仕掛けるのは慎重になりすぎてしまう。いや、ダメだろ。残りエネルギーは「9,872ナジー」と、一万を割った。残り10kmしか推進できないというわけだ。今が「時速60km」と仮定したら、あと10分も経たずに僕らは何もしなくても墜落してしまう。


 気は焦るが、決断には至らない。そんな、普段の優柔不断さが前面に出ていた状態で、この場にいること。それこそがダメであったわけで。


「あーはははははは!! あーはははははは!!」


 何だろう、この笑うがために音声を発しているかのような白々しい笑い声は。いや、「何だろう」でもないな、新手のDEP使いだ。向こうから、仕掛けられた!!


「対局をッ!! 申し込むよ……まあ僕らの前に……ひれ伏さない者はいないのだろうけど……」


 割と分かりやすいのが来た。そんなテンプレ気味の言葉をぶん回しながら、右前方からわざわざUターンをかましてこちらに向かって相対してきたけど。


 声を発したのは、しどけなく座った姿勢で両脚を開いた状態の女性の背後に、組み重なるようにして張り付いている男性側から聞こえた。男性というか……「少年」と言っていい佇まいだ。女性の背中から覗かせた顔は、くりくりの目をした、正にの童顔であったわけで。


 しかしてその前方に回された華奢な両手は、「操縦桿」を握りながらも、遊んでいる指で、薄手の水色のレオタードしか身に着けていない女性のふくらみを老獪なる指さばきで弄んでもいるわけで。


 半目で恍惚顔のその妙齢の女性は天然と思しき豊かな金髪を湛えており、その整った顔は北米感が強いのだけれど。小声でオーイエス、アーイエスとか言ってるよ怖いよ……


 後ろの「少年」。こいつこそが「淫獣」じゃないの? との思いを抑えつつ、僕はもう対局するしかないんだろうな的雰囲気に身を委ねていく。


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