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♮125:失踪ですけど(あるいは、曾太郎先生ごめんなさい)


 現状は、コライ機に我が機を上からのしかかるようにして、何とか落下を免れている状態。コライは何とかそのもつれを外そうと色々動かしているようだけど、それを翼のかじ取りが執拗に拒んでいる。操船技術に通ずるところがあるかは分からないけど、とにかく、再対局のお膳立ては整ったようで。


<先手:No.06060:着手>


 そして先手番を引けた。ならばもうぶちかます他ないわけであり。


「……『安井曾太郎の『金蓉』ってありますよね……あの女性像のチャイナの首元の、ほんの少しのずれみたいな佇まいを見た時にですね……ふふ、不謹慎な話、ぐっしょりいっちゃったんですよね』……」


 毎度毎度の、淫獣DEP。それを放つことに、幾ばくかの逡巡を感じるようになっている僕もいるのだけれど。勝負と割り切ってかます他はないんだ……そう切り替えていく。


<先手:99,888pt>


 相も変わらず、レスポンスは非常にいいものの、それに対して、何とも腑に落ちないというか、複雑な心境の僕がいる。と、


「ふははははッ!! やはり流石のレジェンド……決めるべきところは決めてくる……だがその葛藤は伺えるぞ? これから先……どんどんキツくなっていくことになりそうだ……」


 何か悟った感のあるコライの言葉だけれど、あれ? 相殺DEP放たなくていいの?


「……ヒトは誰しも、心に『獣』を抱えている……それの発露がこの『溜将戦』であるのならば……これから先、『獣の文字』を携えた精鋭が、お前の前に立ちはだかることだろう……『淫獣』の文字を持ちしムロトミサキよ……108の同胞との死闘を、存分に味わうがいい……」


 そう言い残し、着手もしないまま、エネルギーを巻き上げられて、落下を始めるコライ機。その言葉の6%も理解が及ばなかった僕だけれど、取りあえず勝ちを拾ってひと息ついた感がある。でも『獣の文字』……いったい何だっていうんだ。


「とにかく、燃料を確保できたんなら、先を目指すほか、あらんめえ。ミサキ、吹かすのはお前さんの感性に任せることにするぜえ」


 翼がそんな感じで言ってくれるけど。それでもまだちょっと吹っ切れていない自分がいることを自覚している。


 「獣の文字」。それに引っ張られてやしないだろうか。淫獣DEP……それに終始していないだろうか。


 ダメの本質、それから離れかけている自分を、この戦いが始まってからずっと、感じ続けている僕だけど、でも今はそれにすがるしかない事も確かなわけで。僕はアクセルをベタ押ししながら、次なるターゲットに追いつくように全吹かしで搭乗機を前進させていく。


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