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♮102:停滞ですけど(あるいは、3in1/2/3on3)


 入り口の方から光の射す気配と共に、豪奢な装飾が施された扉がこちらに向けて開いてくると、薄汚れた麻と思わしきジャケットを羽織り、中は黄ばんだTシャツ、下はぐずぐずのジーンズという、見た事ないけど見た事ありそう、みたいな、さもありなん的な服装でよたよたと歩み入ってきた人影が。誰あろう、件のあの痩男だったわけであり。


 顔は褐色に日焼けしていて、そのご面相はやや精悍になったと言えなくもないが、その悪そうな長い顔を、より陰影つけさせて迫力を増したような、何とも言えない風貌になっている。髪はいつも通りのテカりを帯びたでろでろの長髪。なつかしさしか感じないわー。


「「……アオナギ?」」


 思わず声に出してしまったが、そんな僕の、あまり親しくはなかったけれど同じクラスの人と街中でばったり出会ったみたいな、そのくらいの温度の言葉が、はからずも隣の若草さんからのそれと見事に重なったわけで。


 いよっ、みたいに軽く手刀を切ってきたのは、紛れも無いアオナギだったけど。丸男と融合フュージョンしたわけではなく、やはり一個体としてこの世に存在していたのですね……まあそうか。というか丸男との連絡あれから途絶えたままだよな……まあいいか。


 それよりも。


「……」


 傍らにいる面子の方に目が奪われた。ひとりは長身の、執事然とした黒いスーツを身に着けた若い男性だ。うねりと縮れが相まったような、こわそうな黒髪。側頭部は短く刈り込まれていてツーブロックの亜種といった感じだろうか。彫りの深い顔は浅黒く、艶やかで張りがある。こちらを深く覗き込んでくるかのような落ちくぼんだ黒い瞳の奥には、一点、灯もったような静かな光が湛えられていて、見つめられていると何だか気持ちがざわざわしてくる。


 引き締まった口許の周りから、顎を通ってこめかみまで、短く整えられた髭が蓄えられていて、それもまた精悍さを醸し増している。それに体つきとか身のこなし方から見るに、格闘技系の何かをやってそう、な雰囲気が少し離れたこちらからも見て取れるよ。


 アオナギがわざわざプロモートしてきたということは、相当な手練れなんだろう、今さっきの分かりやすすぎる戦隊やからとは、一線を画した静の「気」のようなものも感じる。世界規模の大会だということを、改めて認識する僕だが。


 ざわつく感じは、それだけに留まらなかったわけで。


 執事男性のさらに横には、その男性の頭ひとつ分くらい小さな、何とジャパニーズスタイル(というのかどうかはさておき)の黒白メイド服に身を包んだ、冷たい瞳をこちらに向けて来る艶めく褐色の肌の女性……というか少女、と言っていいくらいかな、が、こちらも静かなる佇まいにて、す、といった力の入っていなさそうな所作でいた。


 ……何だ、ろう、この感じは。メイドが被ったからショック、ていうわけじゃない。何か、この少女からは底知れない「力」を感じるよ……いったい?


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