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日常 1

これは、俺が異世界に飛ばされて2ヶ月ほど経った時のお話です。まあ、これが俺の今の日常って感じです。

地平線の彼方から姿を現した光が、黒のキャンパスを塗りつぶして行く。


階下の人々が動き出す音が、俺の眼を覚ます。


遠くからは鶏のような、ナニカの雄叫びが聞こえてくる。


そして上体を起こし、伸びをすると、体の周りを青の光が駆け巡り、得体の知れない声が頭に響く。


《HP並びにSPを全回復しました。》


「はぁ……。」


思わずため息をついてしまう。


途中までは、途中までは何もおかしなところはないのだ。


とても気分のいい、清々しい朝の訪れなのだ。


だが、この不可思議な二つの現象が、俺をこの奇妙な世界へと、戻してしまうのだ。


寝間着から革製の鎧に着替え、木製の扉を開け、ギシギシ鳴る階段を下りながら、いつものごとく思考する。


ーーHPとSPって何なんだよ……。俺こっちの世界に来てから未だに理解できてないぞ……?HPはhealth percentage だとしても、SPが全くわからん!これ一体なんなんーー


「お早う、カイト君!今日も早いわねぇ。」

「うおっと、お早うございます、クロガネさん。」


突然声をかけられて、思わず「うおっと、」なんて言ってしまった。


まあそれはいいとして、この人はクロガネさん。筋肉隆々のおっさんだが、心は乙女なお方だ。この食堂兼宿屋を経営している。


ーーほんといつも気になるが、何でこんな強そうなおっさんが宿屋やってんだ?ーー


まあそれは置いといて、食堂の席に着く。するとまだ何も言っていないのに、クロガネさんが料理を運んでくる。


「はいこれが朝食ね!」

「どうもありがとうございます。」


いつも通りの会話を交わし、朝食に手をつける。


今この瞬間にも俺は違和感に囲まれている。


ーー何でこの朝食は毎朝全く見た目が同じなんだよ?それでいて味は違うって不気味でしかないし……。それにあそこのおっさん、いつも酒飲んでるけどなんで金尽きないんだよ?

それとあのフードの人物、怪しすぎないか!?何で室内でフード付けてんだよ?ーー


そんなことを考えながら朝食を食べ終わり、クロガネさんに礼を言ってからギルドへと向かう。


ギルドに着くまでには、いかにも中世ヨーロッパと言った光景が広がっている。


少し雑に敷き詰められた石畳、道の傍らに存在する店、皮の鎧を着た人々、点在する出店で客引きをする人々の活気ある声、時折往来する馬車の蹄の音……


この奇妙な世界でも、この瞬間は、とても気に入っている。


さて、ギルドの目の前に到着し、西部劇に出てくるような、両開きのドアを押しあける。


そしてそのまま中に入り、右へ曲がって掲示板へと向かう。


ちなみに曲がらず真っ直ぐ進むと、素材買取カウンターが存在し、不思議なほどに同じ顔をした、無駄に美しい少女らが、笑顔で座っている。


どうもあの光景が苦手で、見ないよう避けてしまう。不気味なほど完成された光景ほど、気持ち悪いものはない……。


さて、まあそれはいいとして掲示板のクエストを見る。


ーー何でこれ全部日本語なんだよ……この異世界ってやつは、漢字から派生した仮名文字まで、日本と全く同じ成立をしてるのは、流石に不自然にもほどがあるだろ!?ーー


そんなことを考えながら、ゴブリンの討伐依頼を受ける。


ーー技術の遅れた、電気も通ってないような世界なのに、何で急にここだけオーバーテクノロジーになるんだよ……今俺、ここの紙に触れただけだぞ?なのに何で、俺の名前から、俺のランク、俺の依頼達成可能確率まで把握されんだよ……ーー


わざわざ灰になって燃え尽き、他の人が受諾できなくなるという乙な演出をする、クエスト書を見ながら思う。


……さて、気を取り直して、討伐に向かおうじゃあないか!!


先程来た道を戻りながら、門を出て、草原を歩く。


俺が今暮らしているのは、厚さ2メートルはあるのではないかという壁に囲まれた、巨大な都市だ。


ーー何でこんな馬鹿みたいにでかいもんが存在してるんだよ……。この街の周り、ゴブリンかスライムしか存在しないんだぞ?この前だって、ゴブリンが大量出現しても、冒険者の先輩たちが5分くらいで殲滅してたし……。何考えてんだ?ーー


そんなことを考えてしまうのは俺だけでしょうか?


まあそうこうしているうちに、ゴブリン二匹と遭遇する。


だがゴブリンはすぐには襲ってこない。これはいつものことだ。まずこちらが、安物の棍棒で殴る。そして後ろに飛ぶ。すると、こちらへ襲いかかってくるので、避ける。すると動きが止まる。また殴る。後ろに飛ぶ。襲ってくる。避ける。止まる…………


これの繰り返しで二匹とも倒し終わる。


ーーなあ、こいつらの中には誰がいるんだよな?そうとしか思えないんだけどな!?何でこいつらこんな規則正しい動きすんだよ!前なんか、10分間止まり続けたぞ!?あと俺の動きに興味ないくせに、俺が逃げようとした時だけ、動き素早すぎんだろ!?瞬きするほどの間に回り込むとか、脚力いかれてんだろ!?ーー


ここまででも大いに疑問がわくが、この先が問題だ。


それまで一言も人の言葉で話さず、ぎゃあぎゃあ喚くだけだったゴブリンどもは、涙を流し、


「ユエ、ヒナ、トウサンハモウオマエタチノカオハ、ミラレナインダナ…」


「カアサン、トウサン、ゴメンナサイ…」


なんて言葉を残し、死んでいく。


ーーやり辛いっっっ!とっってもやり辛いっっっ!こんな後味の悪い勝利あるのか!?それまで人語を解さなかったくせに、喋ることができるようになったら、これか!?しかもこいつら、毎回パターン変えるし、わざとなんだろ!?ーー


複雑な感情を抱えたまま、ボフン、と煙が立ち上り、その場に残った耳を拾う。そして、次のゴブリンを探す。


ーー死体が煙になり、綺麗なまま耳だけ残る。見慣れた光景になってしまったが、やっぱりおかしいだろ……?何でこいつら、わざわざ人間のニーズに答えるかのように、耳だけ残して消えていくんだ……?ーー


他にも、様々な疑問を抱えながら、ゴブリンを難なく倒し、街へと帰る。


…ちなみにだが、この街まで帰る間の夕焼け、地平線の彼方に沈むあのよくわからん光が、俺はとても好きだ。この光景のために、毎日頑張っていると言っても過言ではない。


さて、ギルドに到着し、なるべく直視しないように直進し、一人の少女の前に立ち、袋に詰めたゴブリンの耳を差し出す。


「本日は何の御用でしょうか?はい、こちらのゴブリンの耳の買取ですね?了解しました。えーっとですね?こちら、15000円での買取となります、よろしいでしょうか?」


彼女は一息でそう告げ、こちらをじっと見る。


俺はいつも通りうなづく。


「了解致しました!では、こちらが代金となります!本日も冒険、ご苦労様でした!」


彼女が差し出した15000円を受け取り、ギルドを去る。


ーー怖えぇぇぇぇぇ!やばいよ、あの人ほんとにやばいよ!俺何も言ってないのに!俺に尋ねて!了承して!質問する!そしてその間ずっと笑顔!怖いよぉ!とても不気味だよぉ!あと通貨単位が円っておかしいだろ!?……あ、でも日本語話してんだから変じゃないのか……?ーー


宿に帰りながらそう思ってしまう。この出来事のせいで彼女らを直視出来ず、相対することが怖くなったということは否めない……。


「あらぁ、お帰りなさい!カイト君!ご飯にする?お風呂にする?それともワ、タ、「ご飯食べるのでよろしくお願いしますその先は言わないでくださいお願いします……。」はーい、今準備するわねぇ?」


これがクロガネさんといつも交わす、帰ってきた時の挨拶だ。


ーー筋肉隆々の漢女にそう言われるのはこえーよ……。あとクロガネさんの「ワ、タ、シ?」の時の目がガチっぽいんだよなぁ……(怖)。というかこのやりとり、異世界でも平然と存在するのな……。なんかもう驚き薄れてきたな……ーー


いつも通り席に着くと、クロガネさんは料理を運んできてくれる。


「はいこれ、セイントドラグーンのステーキね!ライスはおかわり自由だから、たくさん食べなさい!」


「おぉ……頂きます。」


ーー鉄板の上で心地よい音を奏でるそのステーキにフォークを刺し、ナイフで丁度いいサイズに切る。

その断面は仄かに赤く、レアであることを教えてくれる。

そしてこの肉を何もつけず、口に運ぶ。

ゆっくりと噛み締めると……溢れ出す肉汁!口いっぱいに広がり、鼻にまで抜ける強烈な芳香!調味料は付けていないはずなのに、複雑で重層的な味のハーモニー!


と、つい慣れない食レポをしてしまうほど、この肉はとても美味しい。


美味しいのだが……なぜ、龍種でも上位の強さを誇る、セイントドラグーンの肉が手に入るんだよ!?


これ多分1食5万はするぞ!?なのにここの宿、一泊1万て、頭沸いてんのか!?


ありがとうございますとしか言えねぇわ!?


それとライス!てめえ何で平然と存在してんだ!?中世なのに米食文化ってなんか、こう、違わないか!?くそっ!ステーキと合いすぎてて何も言えねぇ……!ーー


まあ、いつも通り、思うところはあるが、風呂に入り、宿の自室に戻り、ベットの上に寝間着で横になる。


ーーなんで水道も無いのに風呂に入れるんだろうなぁ……?帰ったら綺麗な湯が用意されてるし、クロガネさん化け物すぎません?ほんとこの世界、不可思議なことが多すぎないだろうか……?ーー


瞼をつぶり、今日のことを、いや、今までのことを振り返る。


ーー俺がこの奇妙な世界に落とされて、はや2ヶ月。まだまだ気持ち悪いことばかりだし、理解できないことだらけだ。



……でも、この世界でも、良いことはある。街や夕焼けの景色は、今でも感動するし、コンビニ飯より断然飯はうまい。それに何より、こっちは人との付き合いが楽しい。


クロガネさんは、たまに目とか言動が怖いが、普段は面白くて頼りになる、兄貴みたいだ……。


受付の少女も、かなり怖いが、冒険お疲れ様でしたって言ってくれる時の表情は、最高に可愛い……。


ギルドの先輩たちだって、最近は会わないが、デタラメで、面白くて、まさに悪友って感じだ……。


2ヶ月前は、最悪な気分だっだが、今じゃあ、なかなか良い生活を送れている気がする……。


元の世界と比べて、なんだかずれているとこばっかの、このおかしな世界で俺はーー


意識がすうっと遠のいていく。


明日も早い、今日はもうこのまま意識を手放してしまおう……。


……SPて、なんなの……?


拙い文章でお目汚ししてしまい申し訳ない。もし感想等あったら、書いてくれると感謝感激ってやつです。ちなみに批判を頂けると、最高に嬉しい!たった1話で申し訳ないが、読んでくれて、ありがとう!

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