2.勇者はこうして転輪す
地球とはまた別の世界、〝グランデ〟
電気も科学もないその世界では人々の持つ魔法の力によって生活を成り立たせていた。
そんな世界のある一つの国、〝帝都アトラス〟
帝国の名を冠するだけあって、面積はグランデにおいて最大級。人口も多く、貿易も盛んな国だ。
軍事力も豊富で、その強さで他国への威圧も厚く、そのおかげでアトラスは平和を保っていた。
人々は安心して商いを営み、子供達はすくすくと育つ。そんな平和がただただ続くのだと民は皆信じて疑わなかった。
そう、あの日までは…
アトラスは一夜にして壊滅する。ある存在によって。
そう魔王だ。
魔界の王にして、魔物たちの主。彼は魔物たちを率いて、あの最強と呼ばれたアトラスの軍をまるで人形のようになぎ払い、国を燃やし尽くした。
私はただその光景を非難した洞窟の中から見ているしかなかった。
貴族の嫡男なんていい身分ではなかった。ただの鍛冶屋の倅だった私は燃え盛る炎の中、父の背中を後にして魔物から逃れた。
魔物が去った後、灰になった街で私は父の亡骸を見つけた。
私は泣いた、泣き続けた。そうして泣き疲れた末に私は覚悟を決めた。
私が魔王を討つと。
剣と少ない路銀を持って国を出た。
剣と魔法を鍛え、時に魔王の手下達と遭遇し、退け、仲間を増やし、そして私はついにかの城へとたどり着いた。
仲間と共に魔王と死闘を繰り広げ、そして魔王に致命傷を与えた私達、けど…
私は死んだ。
後一歩のところで決めきれず私は魔王に敗北したのだ。
無念だった。
死にゆく中で仲間が1人、また1人と倒れていく。
悔しい。
絶対に許さない。
もし、神が許してくれるならば私はもう一度生まれ変わって魔王を今度こそ討つ、絶対だ。
そして私は絶命した。
そしてなんやかんやで私は美崎恋華として転生したのだった。
「いや、最後適当だな、おいっ!」
俺は無意識に突っ込んでいた。