プロローグ3
これで、プロローグという名の設定は終わりです。
「準備、できた?」
夕飯を食べながらレニーは尋ねた。
「昨日の内に大体やっておいたからな。意外と時間は食ったけど、さっき終わった。」
「なら、明日に備えて早く寝るのよ。十個目の才能、楽しみね。」
「そうだな。」
アルトは少し時間をかけて夕飯を食べ終えると、水で体を清めて、床に就いた。
翌日、アルトは朝食を終え、家の庭の隅の墓石へと来ていた。そこには、彼の父が眠っている。アルトが冒険者になることを誰よりも応援し、協力していたのも彼の父であった。が、二年前の流行り病でポックリと逝ってしまったのだ。
「父さん、俺は今日、旅立つから。当分帰ってこない・・・と思うから、挨拶に来た。父さんのもとにまで届く偉大な冒険者になってみせるよ。じゃあ、いってきます。」
アルトは父への挨拶を終えて、村の入り口へと向かった。
「遅ぇじゃねぇか。アルト。」
「父さんにちょっとな。で?見送りに来てくれたのか?おっさん。」
「おっさん言うな。まぁな。あと、少し餞別をな。」
「餞別?」
「おぅよ。おーい、あれ持ってきてくれ。」
村人の一人が持ってきたのは、一振りの鞘付きの剣であった。
「どうしたんだよこれ!?」
「村のみんなで少しずつ出し合って買ったんだ。大事に使えよ?」
「頑張れよーアルトー」「しっかりなー」「いつでも帰ってきていいんだぞー」
村人達の声援にアルトが感動していると、村人の中から一人の老人が前に出てきた。
「アルトや。」
「村長さん、俺はアーロンです。アルトはこっちですよ。」
「・・・」「・・・」「・・・」
「・・・村長ジョークじゃよ。村長ジョーク。あー、コホンッ。アルトや、ついにこの日が来てしまったようじゃな。」
「んんっ、そうですね、村長さん。冒険者になることを許可していただき、ありがとうございます。」
「良い良い。それとの、旅立つお主にわしからも贈り物をやろうと思ってな?そこで、これをやることにした。使ってくれ。」
そう言って、村長はアルトに折りたたまれた大きな紙を差し出した。
「村長、これは?」
「この大陸の地図じゃ。行ったことのある地域には、注意書きも書いておいた。」
「ありがとうございます、村長さん。大事に使います。」
「うむ。」
最後にアルトの前に来たのはレニーであった。
「アルト、怪我や病気には気を付けてね?しっかりやるのよ。はい、これお弁当。母さん、応援してるから。でも、いつでも帰ってきていいのよ?あと、お友達もたくさん作ってね。あっでも、しっかり友達は選ぶのよ?それから・・・どうしたの?みんなびっくりしたような顔して。」
「いや、レニーさんがいつになく饒舌だったから、つい。なぁ、アルト。」
「あぁ、こんなに喋る母さんを見たのは初めてかもしれない。」
「・・・とにかく、頑張ってね。アルト。」
「任せてくれ、母さん。すぐに有名になってやるさ。それと、弁当ありがとな。」
全員に別れを告げ、いよいよ旅立ちという時、ふとアーロンが尋ねた。
「ところでよ、アルト。お前、十個目の才能、何だったんだ?」
「あぁ、それなら、そうだな、おっさんが関係してることだな。」
「何だそれ。"商売"か?」
「違う違う。十個目はな、"逃走"だ。」
「・・・なるほど、確かにこの一年追いかけまくった気がする。」
「だろ?」
「だろ?じゃねぇよ。しばくぞ。」
「まぁまぁ。そろそろ出発せねば日が暮れてしまうぞ?アルトや。」
「そうだな、じゃ、母さん、村長さん、アーロン、みんな、いってくる。」
かくして、アルトは英雄への第一歩を踏み出すべく、首都ヴァリーキへと旅立った。
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アルト
才能
10:[ ]⇒逃走 Lv.1
モンスターについて
この世界のモンスターは、倒しても残ります。青いポリゴンになってくれたり、灰になってくれたりはしません。素材は頑張って剥ぎ取ります。
モンスターと動物の違いは、HPを持っているか否かです。動物は人間と同じ神側の生き物なので、HPがありますが、モンスターは、違う神側なので、ありません。そのかわり、魔法を使ったり、肉体に見合わぬ怪力を持っていたりします。