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一週間  作者: 現野翔子
天川 坂下視点
5/11

八月十九日 坂下視点

「おはよう!」

 調理室へ入ると、そこにいたのは橘先輩だけ。いつもなら三津先輩もいるのに。

「三津先輩は?」

「さあ、俺は見ていない。」

「ふーん。今日って何日?」

 そういう日もたまにはあるのかもしれない。それより、自分の認識と現実が同じかを確認しておこう。俺にはもう一人の自分である時の記憶がないのだから。

「今日は八月十九日だ。」

「じゃあ、昨日は何があった?」

 俺の認識では昨日が十七日だから、一日分記憶が飛んでいることになる。つまり、昨日はもう一人の自分だった。

「昨日はそうだな…ああ、トランプとボードゲームをしたな。」

「へえ、だれとしてた?」

「天川と俺だな。」

 三津先輩は誘わなかったんだ。俺なら誘うけど、もう一人の俺は仲良くないらしいから誘わなかったのだろう。

「三津先輩は?」

「お前は誘おうとしてたんだけどな、たまたま部屋にいなかったみたいだ。」

 意外だ。仲良くない人をわざわざ誘うなんて。どんな心境の変化があったんだ。自分のことなのに全然分からない。それとも何か三津先輩と仲良くなるような出来事があったのか。

「そっかー。他には何してた?」

「天川と喧嘩していたな。」

「また?もう一人の俺、どんだけ短気なんだよ。」

 俺の主観での一昨日だから、実際の数日前か。その時にも喧嘩していたはずだ。

「今回のは主に天川が悪かったけどな。」

「へえ、じゃあ会いに行ったら話してくれるかな。」

 もう一人の俺が悪いらしい時は、俺が謝ってもそんな必要なんてないって言って、受け入れてくれないから。

 早速会いに行こうと立ち上がると、橘先輩に止められてしまった。

「少しくらい天川もそっとしておいてやれ。行っても軽くあしらわれるだけだぞ。」

「ダメだったらその時はその時だ。とりあえず行ってみるよ。」

 そんなことに怖気づいていたら何もできない。話を聞くにも行ってみないと。



「羽良ー、いる?昨日のことで話したいことがあるんだけど。」

 …。返事はない。聞こえなかったのか?

「羽良?いない?」

 やはり声は返ってこない。いないようだ。少し待っていようか。こんな雨も風も強い日にどこにも行けないだろう。きっとすぐに戻ってくる。



 戻ってこないなんておかしいな。どこに行ったのだろう。喧嘩した時はいつも自分の部屋にいるのに。三津先輩のところかな。


「三津先輩ー、羽良いる?」

 また返事がない。

「三津先輩?」

 部屋の中にいる気配もしない。待っていたら戻ってくるかと、五分ほどそのままでいたが、やはり戻ってはこなかった。こんな日に外に出るとは考えにくいから談話室だろうか。


 談話室にもいなかった。寮の中には違いないだろうけど、帰省で大半の人間がいないこの時期には大食堂も開いておらず、屋内でも他に行くところなど思いつかない。

 心配になったため、橘先輩に聞きに行く。


「天川には会えたか?」

 二人に会えず、探しても見つからなかったことを伝える。

「橘先輩、何か知らない?」

「いや、何もしらないな。」

「まさかこんな天気の日に池の近くに行ってないよな?花壇を気にして見に行ってしまったら危ないだろ。」

 こんな状態なのに、何も気にした様子のない橘先輩は不思議だ。俺のことはよく心配してくれるから、仲のいい三津先輩たちのことも心配してもいいと思うのだけれど。いつも大切にしている三津先輩なら、花の心配をして見に行ってしまった可能性もあるかもしれないのに、それは気にならないのだろうか。

「さすがにそれはないんじゃないか。危険なことくらい誰にでも分かる。」

「うーん。でも、台風が来てから屋根の上に乗って落ちる人とか、地震の時に川の様子を見に行って水に飲み込まれる人とかもいるから…」

 分かるから行かないわけではない。分かっていても行くかもしれないから、心配になるんだ。

「そこに行くということは坂下も危険な目に遭うかもしれないということだ。」

「そうかもしれないけど、気になるから。知りたいんだよ。」

 俺は知らないことばかりだ。自分のことだって分からないし、今も彼らがどうしているのか分かっていない。少し探せば分かることなら調べたいと思う。こんな船も出せないような天気なら、二人が行動できる範囲も限られるはずだから、さほど時間もかからないはずだ。



 暴風雨の中、池に向かう。西側に辿り着いた時、池の中に何かが沈んでいた。嫌な予感がしつつ、その何かを確かめる。

「え?これ…。羽良…?」

「そうみたいだな。」

 嘘だ。信じたくない。昨日まで話していたのに。平然と答えた橘先輩は何も感じていないのか。

「なんで。死んでる。じゃあ三津先輩は!?」

 寮では見つからなかった羽良がこうなってしまっているのなら、同じような状態の三津先輩も危ないかもしれない。


 池の周囲を早足で調べていく。元気な三津先輩の姿か、何も見つからないことを期待して。

 そんな俺の期待も空しく、倒れた三津先輩が見つかってしまった。

「嘘だろ。なんで二人とも…。橘先輩?」

 何の反応もしていなかった橘先輩を見上げると、なぜか花壇を見ていた。

 花壇の煉瓦は一つ欠けており、二人の異常な状態の手掛かりはないかと俺も近づいて見た。するとその足元には、煉瓦こそ落ちていなかったものの、十字架と切れたチェーンがあった。こんなもの、羽良も三津先輩も持っていなかったと記憶している。手掛かりになりそうだ。

 橘先輩にも異常を認めてもらおうと、それらを掲げて見せる。

「橘先輩、これ…」

「何かおかしい。ここは危ないから一旦、寮に戻ろう。」

「うん…分かった。」

 この島でないかが起きていることは認めてもらえたようだ。もう少し調べたい気もするが、今はこれで良しとしておこう。


寮の前に着いた。橘先輩はそのまま入っていこうとしているが、俺はそれを引き留めて提案する。俺たちだけでは、何かあっても対処できないから。

「橘先輩、職員室に行こう。二人が、死んでたことを伝えなきゃ。」

 返事も聞かずに走り出す。一刻も早く伝えなければならないと。暗い外を、こんな状況で出歩くなんて不気味で仕方ないけれど。



 職員室に着いてから気付く。もしかたら、先生たちもいなくなっているかもしれないと。

 きっと二人の先生のうちどちらかはいると信じて、震える手で扉を開く。

「失礼します。」

「坂下じゃないか。こんな天気の日にわざわざどうした?橘まで、珍しいな。」

 誰もいないなんてことはなくて、ほっとする。いた時任先生は化学の先生で、化学が苦手な俺はよく教えてもらっているため、特に親しい。少し厳しいけれど、よく話を聞いてくれるいい先生なんだ。

「大変なことが起きてるんです。伝えなきゃと思って。」

「何があった。」

「それが…」

 真剣に聞いてくれそうな様子に安心して、羽良と三津先輩の死を伝える。できる限り詳細に伝えようとしたが、動揺してあまり細かい部分は見れておらず、大したことは伝えられなかった。

「そうか。」

 それでも現状の異常さが伝わったのか、時任先生は話を聞くとすぐさまどこか、おそらく警察に連絡を入れてくれた。

「台風が過ぎたら、警察が来てくれるそうだ。それまで身の安全を確保するようにと。何が起きているか分からないから、なるべく一人で行動しないようにな。」

「はい。それと、池の北東沿いの花壇にこんなものが落ちていたんです。羽良も三津先輩もこんなものは着けていなかったし。誰のものか分かりますか。」

 俺は時任先生なら何か知っているかと期待して、拾っていた十字架と切れたチェーンを見せる。それに合わせて橘先輩が補足してくれる。

「花壇に落ちていたので、たぶん最近落とされたものだとは思うのですが。きっと三津が気付くので。」

「ああ、それなら古川先生のものかもしれないな。いつも着けているらしいから。」

「どうしてあんなところにあったんだろう。分からないことばかりです。羽良が天気の悪い日にわざわざ池に行くとは思えないし、三津先輩だってそうでしょう。」

 古川先生は花壇に用事でもあったのだろうか。三津先輩が親しいとは言っていたけど、それと関係があるかどうかも分からない。なんだか、おかしなことだらけだ。しかし、俺の疑問のうち、いくつかは橘先輩が解消してくれた。

「三津は一昨日、花壇を見に行くと言っていました。その前にも、古川先生と台風対策に向かっています。」

 三津先輩は台風対策をしたのに、どうしてもう一度花壇に行ってしまったのだろう。それに、羽良に関しては分からないままだ。他に人がいれば、何かそれが関係しているかもしれない。

「今、この島に他に人はいるんですか。」

「いや、いないはずだ。皆が帰省した後は、天川、三津、橘、坂下、そして古川先生と俺しかこの島にはいない。」

 そのうち二人は死亡し、一人は十字架だけが残されて行方不明。安否がはっきりしているのは半数だけ。その上、池の中にいた羽良は足を滑らせた可能性があるけど、外に倒れていた三津先輩は事故とは思えない。

「二人ともが事故?そんなことありえますか。古川先生だってどうか分からないのに。」

「実際そうなんだからありえるんだろう。」

 なぜか橘先輩は事故と断定した。二人が倒れていたところを俺と一緒に見ているにもかかわらず。同じ疑問を時任先生も抱いたのか、パッと橘先輩に視線を向けた。ただ、俺にはそれよりも気になることがある。

「誰かいるんじゃないですか。」

「それは警察に考えてもらおう。」

「でも、あんなところに倒れてるなんておかしいです。事故じゃない。」

 誰もいなければ、ここにいる誰かが殺してしまったことになるから、誰か知られていない人物にいてほしい。そんな思いを込めた質問だったが、それは伝わらず簡単に返されてしまった。問いを重ねても、時任先生は橘先輩の様子を窺っていて、俺に気をつけるようにとだけ言った。なぜか橘先輩には言わず、俺にだけ、気を付けるようにと。



 時任先生の様子と発言は気にかかっているものの、橘先輩が俺に危害を加えるとは思えない。だから俺は、一人よりは安全だろうとなるべく橘先輩といることにする。

 そして、橘先輩の部屋で、さきほどの会話について問い質す。

「橘先輩、本当に何も知らないんですか。二人も事故死するなんておかしいです。それなのにどうして断言したんですか。」

「坂下は事故の可能性はないと思っているんだな。」

「はい。古川先生は生きているかもしれない。けど、三津先輩は池の外にうつ伏せで倒れていたし、羽良はそもそも用事なんてないはずなのに池の中にいた。あの状況で事故だと考えるほうが不自然だ。もっとよく死体を調べてみたら何か分かるかもしれない。」

 その状況は橘先輩だって見ていたし、羽良が池に自ら進んで行ったりなどしないと知ってもいるはずだ。それにもかかわらず事故と断定するのなら、事故ではないと橘先輩に証明できる何かを探したい。

「さっきは怖くて見られなかったんだろう。」

「今度はしっかり見る。分からないままのほうが怖いから。じゃあ、行こう。」

 早速見に行こうと立ち上がったのに、そんな必要はないと止められてしまった。その手を振り払い、なお行こうとすると真剣な表情で確認される。

「もう、事故じゃないとは思ってるんだよな。」

「さっきからそう言ってるだろ。」

「本当に知りたいのか。」

「そうだよ。橘先輩はちゃんと見たのかよ。」

「ああ。」

 予想外に重々しい返事だ。よほど衝撃的なことに気付いてしまったのか。

「どんなのだった?」

「三津の頭には殴られた跡が、天川の首には絞められた跡があった。」

「…?さっき見た時は雨が激しくて、羽良の首の跡なんて見れる状態じゃなかったと思う。なのにどうして知ってんだよ。」

 辛うじて羽良であることを確認できたぐらいだ。うつ伏せで浮いていた羽良の首の絞められた跡なんて、見えるはずがない。橘先輩がそれをしていたのなら、知っていても当然だけれど、大切な先輩が同じく大切な友人を殺したとは思いたくない。否定の答えが返ってきてほしいとの思いを込めて聞くが、はっとしたようにこちらを見るだけで、何も答えてはくれなかった。

「じゃあ質問を変える。それを見ていたのにどうして事故だなんて言ったんだ。」

「誰かに殺されたとなれば、坂下は怖がるだろう。」

「当然だろ!」

 何を当たり前のことを言っているんだ。それが怖くない人間なんて、どこかおかしいに決まっている。この状況なら自分だって殺されるかもしれないのだから。

「だからだよ。坂下にはなるべく怖い思いをさせたくなかった。だから、殺されたんじゃなくて事故ということにしておきたかったんだ。」

「そっ、か。でも、誰かに殺されたことは明らかだろ。」

「そうだな、俺たち以外の誰かがこの島にいるのかもしれない。」

 橘先輩に言われたからって事故と信じられるほど馬鹿ではない。親しい人を疑うことだってしたくないが、いるはずのない人間のせいにする気もない。中途半端に言えば、橘先輩はまた俺が不安にならないような言い訳をするだけで、本当のことはきっと話してくれないだろう。それなら、反論できないほど、俺は現状を認識できていると伝えなければ。

「長期休みの時は基本的に先生が数人残るだけで、他には誰もいなくなる。事務員さんや食堂の人たちも。今回は俺たちがたまたま残っていただけで、他の生徒はみんな帰省してる。」

 今のところ存在が分かっているのは俺たち六人。

「それに、この島に出入りする方法は、学校の手配した帰省用の船か、食料とかを運んでくる船しかない。帰省は八月の上旬に終わってるし、食料とかを運んでくる船だってここ数日は台風の影響で海が荒れていて来れてない。」

 外部からの侵入は不可能。正規の方法ではない侵入でも、荒れた海を乗り越えてこっそり入るのは困難なはずだ。

「その間、俺たちは誰も、不審な人影もその痕跡も見ていない。ということは他には誰もいないはずなんだ。つまり、俺たち六人しかいない状況で、そのうち少なくとも二人が誰かに殺されている。」

 これで、橘先輩だって否定はできないだろう。誰がいつ、どうして殺したかは分からなくても、この部分は俺にだって分かることだから。ただ、ここまで分かっても、この後どうすればいいのかなんてことは分からない。

「なあ、橘先輩。俺はどうしたらいい?誰がこんなことを起こしたんだ。」

「犯人が分からないほうが怖いか。」

「うん。だって、どう気を付ければいいか分からないから。」

 何度も言っているように、自分のことさえ曖昧な俺は、分からないことを恐れている。それを橘先輩も知ってくれているから、ほんの少し考える様子を見せただけで話してくれることにしたようだ。

「そうか。坂下、お前は天川なんていらないと言ったよな。」

「え、言ったっけ。」

「ああ、言った。」

 俺にはそんな記憶はない。きっともう一人の俺が言ったのだろう。基本的には仲はいいらしいけど、よく喧嘩しているようだから。

「でもそれだって、その時の勢いで言ってしまっただけで、本気で死んでほしいなんて思っていなかった。」

「天川に苦しめられることも多かっただろう。」

「喧嘩することぐらい、誰にだってあるだろ!」

「そう、だな。ごめんな、坂下。」

 少し愚痴を言っただけでこんなことになるなんて、もう一人の俺もきっと思っていなかった。それならもう一人の俺が仲のよくない三津先輩も、もう一人の俺をいつも傷つけていたらしいから、羽良と同じようにしたのか。俺に謝ったということはきっとそういうことなのだろう。

「…俺は羽良にも三津先輩にもいてほしかったし、橘先輩にもいてほしい。二重人格の俺とは関わり合いになりたくない人が多いみたいだから。…でも、時任先生はたぶん、橘先輩が犯人だって疑ってる。警察が来ればさっきの話も伝えてしまう。そうしたら、警察もきっと疑う。ばれたら橘先輩はいなくなってしまう。」

「そうかも、しれないな。」

 橘先輩に羽良と三津先輩を殺されたからって、俺は橘先輩にまでいなくなってほしいとは思えない。そんなことをすれば、俺と親しくしてくれる人がいなくなってしまうから。

「そんなの嫌だ。羽良も三津先輩もいないのに。…橘先輩は俺のために殺してくれた。なら次は俺の番かな。」

「坂下?」

 橘先輩が訝し気に俺の名を呼ぶ。俺はいつも何かをしてもらってばかりで、今回もしてもらっただけだ。

「ばれないように、橘先輩のために、今度は俺が時任先生を殺すんだ。橘先輩だけに罪を背負わせたりしない。俺もこれで一緒だ。」

「坂下がわざわざそんなことする必要はない。」

「したいんだよ。俺にだって何かさせて。怖いし、親しい先生だから悲しいけど、でもそれは橘先輩も一緒だろ。それなのにやってくれたなら、俺も同じことがしたい。」

 橘先輩も三津先輩と親しかったんだろ。それはきっと俺が時任先生と親しい以上に。だから、というのは俺が一人になりたくないがための理屈かもしれないけど。それでも俺にはこれで十分なんだ。

「そう、か。」

「それに、今の俺がいるのは橘先輩のおかげなんだよ。女の子みたいで嫌いだった「愛音」っていう名前だって、名付けた人の愛が感じられるって橘先輩が言ってくれたから、嫌いじゃなくなったんだ。だからさ、何かさせてよ。」

 俺がなんとか笑顔を浮かべてそう告げると、橘先輩は渋々ながら頷いてくれた。



 実行するため、再び職員室へと向かう。さきほど、大変なことが、と言ったばかりだから、おかしいと思われないか心配だけれど、多少怪しまれたところでもう問題はない。

「時任先生。誰がやってのか分からないなら、一緒に行動した方が安全ですよね。」

「そうだな。」

「で、ちょっと見てほしいものがあるんですけど、屋上まで来てもらえますか。」

 屋上まですんなりとついてきてくれたのなら、半分以上成功だ。


 屋上には当然天井がない。つまり傘を差すことによって視界が狭まり、背後の様子が分かりにくくなる。

「こっちこっち、あれなんですけど。」

 そう言って俺は軽く身を乗り出して低い柵の外側を指す。

「どれだ?よく見えないな。」

 当然だ。何もないのだから。それでも、雨のせいで見えないと判断され、時任先生はさらに身を乗り出してよく見ようとした。

 自分より重い相手でも上手くやれば突き落せる。例えば、足を引っかけて腕を外側に引っ張り、遠心力を使って外へ放り出す、とか。


 そうして時任先生が落ちていく様子を見ていると、隠れていた橘先輩が出てきたことに気付いた。

「橘先輩。できましたよ、俺にも。」

「ああ。」

 そう言った橘先輩は、達成感に包まれる俺とは対照的に、とても悲しそうに俺のことを見ていた。


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