第4機リンド帝国
サード参謀は、部下から報告を受けていた。
「ここ5ヶ月のアイザン出没地点、発生地割合、駆逐数を報告します」
ナリタが差し出した紙を、サード参謀は受けとるやいなや、2つに破いた。
ナリタは、自分の上司の行動の意味を理解しかねた。
「報告はいらん」
「は、」
サード参謀は片頬で笑った。
「……何だ?こんなもの見なくても分かるだろう。
最近のアイツらの増加の理由も、発生地がラーゼルに偏っているのも」
「……」
「そう睨むなよ。この国の為だ、お前も分かってるだろう」
1人になったナタリは、ため息をついた。
(……あの、狐男め……)
リンド帝国がラーゼル王国を侵攻したのは、自国の利益の為だけ。
だだ、世界一の称号とラーゼルの卓越した技術が欲しいがために、我が帝王や自分の上司は軍を送った。
ナリタの頭にこびり付いて離れないのは、赤く燃え上がるラーゼルの街々。人々の悲鳴、女子供の断絶魔。
(くそ……)
巨大な船50艦で、空から宣戦布告も無しの奇襲攻撃。
世界に名を馳せるラーゼル王国の技師達を攫い、女子供を惨殺。働ける男どもは捕虜にして、抵抗するものは殺す。
(我が国ながら、清々しい程 悪 だな)
第4機リンド帝国は、着実に国家間から独立していった。
人々の居なくなった国は、ただの巨大な鉄の塊。表面は赤く錆び付いていき、歯車の速度はだんだんゆっくりになっていく。
【死の地】から舞い上がる砂が降りかかり、おびただしい数のモンスターが生まれる。
第6機ラーゼル王国は、モンスターを産出する、大元と化してしまった。
ナリタは窓から空を見た。
灰色の空を行き来し合う飛行型バイクは、ラーゼル式のものが、随分増えた。
肥大していくリンド帝国の国力は、恐ろしいものがあった。
(………………)