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私たちだけ24時間オンライン生産生活  作者: 滝川 海老郎


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20/65

20. パーティー「警ら隊」

 東村の中央広場で、淡い光の粒のエフェクトが表示されながら、はじめは薄く、段々はっきりと、私たち3人が表示されていく。

 3人とも、広場の真ん中で倒れていた。

 空はまだ夕方で、夜になる一歩手前だった。


 HPは1。MPは1。そして所持金が、げげ。30%減の49,455セシルになっていた。


『ぐ~~』


 クルミのお腹が大きい音を立てた。


「あー。お腹空いた~」


 このゲームではありがたいことに、死亡時にアイテムはドロップしない。

 しかし、色々なものが減っていた。


 3人ともなんとか立ち上がった。


「死に戻り、お疲れさまです。キリ」


 通りがかりのヒューマンの男性ユーザーが敬礼した。

 しかも「キリ」まで発音していた。

 すると、その人のパーティーメンバーだろうヒューマン男性3人も、その横に整列して、すぐにこちらを向いた。


「「「お疲れ様です。キリ」」」


 一糸乱れぬ行動だった。マジの軍隊か警察みたいだ。

 仮に警官隊と呼ぼう。


「あーどうも、どうも。お迎えありがとう」


 クルミはのんきなことを言っている。


「いえ。大変だったでしょう。一緒に宿屋でご飯にしませんか? ステーキおごりますよ」


「あっステーキ!? ほんと? じゃあ食べようかな」


 クルミが一人で決めちゃったけど、サクラちゃんはどうやら反対するつもりはないようだ。

 と言うか、お腹が空いたのだろう。お腹をさすっている。


 警官隊の人たちには、先に宿屋に行ってもらって、私たちは雑貨屋に寄る。

 雑貨屋のトラニー君から売り上げを受け取らないといけない。

 今日も完売で、40,000セシルの売り上げだった。


 場所はいつもの宿屋だ。

 この村では食べるところも、2つある宿屋ぐらいしかないのだ。

 到着して食堂に顔を出すとすでに長テーブルに着いた警官隊の人が手を上げて呼んでくる。


「やあ、うれしいなあ。そのまま、ほっぽらかしにされるかと思いましたから」

「お待たせしました」

「どうぞ、座ってください。約束通りステーキのおごりです」


 そう言うと、警官隊のリーダーは大きい声で注文する。


「おばちゃん、ステーキ追加3つね」

「あいよ、ステーキ3つで600セシルだよ。出来上がったら交換ね」


 私たちは、促されて席に座る。

 彼らは「警ら隊」と名乗った。リーダーは「アルク」。

 他の人は「シロガネ」「アリクイ」「イシバシ」という。

 大盾がリーダー。魔法使い。片手剣使い。大剣使いのパーティーだそうだ。


 さっそくアルクがクルミの方を向いて質問してくる。


「それで、単刀直入に質問します。何に殺されたんですか?」

「あー、いやまぁ、えっと……」


「3人はバランスの良いチームに見えます。そんな人たちがこの初心者ゾーンで殺される敵とはなんでしょう? PKはできないはずですし、まだ夜になっていない。遠くまで行ったなら、それも興味があります」

「あははー。実はね。オオカミがでたんですよ」


「夜ではないのに?」

「そーなんだよー。単体には勝てたけど、森で7匹の群れに遭遇して、1匹だけ大きかったよ」


「ほう。それは新情報かな。ボスなのかもしれないですね」

「なるほど。ボスね~」


「ちなみに、答えられないなら構いませんがレベルはいくつですか?」

「わたしたちは、6レベだよ」


 私たちは途中でLv6になっていた。レベルアップすると、残りの経験値が0になるのでデスペナの経験値減少はほとんどなかった。


「いや、まいった。結構高いですね。でもあまり気軽に答えない方がいいですよ。間違いなくトッププレイヤーでしょう」

「あっそうなんだ。うん。気を付ける」


 このゲームは、6倍加速だからなのか、結構レベリングの設定がマゾ仕様らしく、序盤なのに1日で1レベルぐらいしか上がらない。

 私たちですらそうなのに、一般プレイヤーはさらに上がらないだろう。


「いい話を聞かせてもらいました。ビールもおごりましょうか?」


「えっいいの?」

「いいえ、私たちはまだ未成年なので、ジュースで」


 クルミがビールを飲もうとするのを抑えて、私はジュースを頼む。


「分かりました。では、おばちゃん、ツグミのジュース3つ」

「ツグミ3つね。600セシルだよ」


 おばちゃんがさらりと怖いことを言う。ステーキと値段が同じだ。


「あぁ、あれジュースになるんだ」

「ツグミご存知ですか。さすがです。狩場では見かけませんね。今日露店で見つけましたけど」

「……私たちも露店で見たから。イチゴ風だよね」

「ちなみにジュースもステーキもおばちゃんの好感度上げないと売ってくれないみたいですよ」


 そうらしい。私たちはその存在すら知らなかったくらいだ。

 ステーキはウサギのステーキでボリュームがあった。

 ツグミのジュースは、イチゴジュースだと思ってくれていい。


「おばちゃんの好感度を上げる方法は?」

「あれはつらかった。4人でやっとこなしたよ」


 それは井戸からの「水汲み20往復」をはじめとする手伝いだったそうだ。

 4人だったので、1人5往復で済んだそうだ。

 料理も手伝わされたが、料理スキルは付かなかったとか。

 マリッジおばさんって結構人使いあらいのかな。


 警ら隊は、一通りご飯を食べ終わると、私たちを残して、ログアウト部屋へと去って行った。

 日課の夜の作業をして、その日は眠った。

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