第7話 武術と魔法の修行
皆さん昨日はクリスマスでしたね。
僕にとってはどこ吹く風でした。
いつも通り平常運転でしたよ。
あれから1か月が経った。毎日筋トレをしていたため、ステータスに変化はなかったが筋力が上がった気がする。そのおかげか身体強化と身体硬化を同時発動してもある程度動けるようになった。まだ少し動きずらいと感じるが、このまま筋トレを続けたら難なくこなせるようになるだろう。
今日から武術と魔法の修行だ。修行スケジュール通り初日はヤファイさんとだ。今は家の前の広い庭にいる。そこにはいくつも的がある。
「よし。今日から本格的な修行を開始する。」
「はい!」
「まずは火属性魔法だ。リュウ、お前は魔法にも等級があることは知っているな。」
「はい。知っています。」
この世界には魔法にも等級が存在している。初級、中級、上級、最上級、戦争級、英雄級、伝説級、神級の順だ。戦争級以上は普通は複数人数でやるらしい。だが実際現存する中でも戦争級を一人で出せるのは少数しかおらず英雄級ともなると出せるものはいないらしい。言わずもがな、神竜さんたち全員伝説級まで一人で使いこなすができる。
「それではまず初級魔法からだ。」
そういうと的に向けてヤファイさんは手を突き出した。
「おっと。いかんな。つい癖で無詠唱でやってしまうところだった。」
『我が魔力が炎、球と成りて、敵を狙い打たん【火球】』
するとヤファイさんの手から火の球が飛び出し的に当たった。
「よし。リュウもやってみろ。」
「あの。無詠唱でやってみてもいいですか。」
「別に構わんが、本当に大丈夫か?」
「はい!大丈夫です!」
「大した自信だな。無詠唱はイメージが大切だ。」
やっぱりイメージか。大抵魔法ってイメージでどうにかなるんだよな。
よし。まずは魔力を手に移動させ、そこから魔力を放出。火・・熱。空気中の二酸化炭素に魔力で熱を与えそれを燃やす。そして魔力を球の形に形成。よし!うまくいきそ・・・あれ?魔力の放出が止まらない。
リュウの手の前で形成された火の球はどんどんと大きさを増していく。今にも暴発しそうだ。
「いかん!魔力の暴走だ。」
そうヤファイは叫び、目にも止まらぬ速さでリュウを抱きかかえ、すぐさま火の球から離れた。リュウから制御されなくなった火の球は爆発し、地面が抉れていた。ヤファイの腕は火傷していた。
「・・・ヤファイさん。腕に火傷を・・。」
「この程度傷にも入らんよ。」
「・・・すいません。俺が・・・俺が。」
「子どもが見栄をはって無詠唱をやりたがるのはよくあることだ。ごく稀に成功させてしまうものがいるんだ。だがそのほとんどが魔力の暴走で終わる。お前は元からのステータスが高いからあれ程の爆発になってしまっただけだ。気にしなくてもよい。」
「すいません。」
「気にしなくてもよいと言ったであろう。もう一度やってみろ。今度は詠唱を入れてだ。しっかりと的をねらって打てよ。」
「はい!」
『我が魔力が炎、球と成りて、敵を狙い打たん【火球】』
リュウの手の前で火の球が形成され飛んでいき、的に当たる。
「やはり、1発で成功させたか。」
「えっ?普通は1発で成功しないんですか?」
「うむ。暴発はしてしまったが先の無詠唱で分かってはいたが、お前には相当の魔法の素質があるようだな。実際大人でも無詠唱を使えるものは少ない。詠唱ありで慣らしていくのだよ。」
「いやこれは『神の紋章』で手に入れた力で・・。」
「いやお前には元から魔法の素質があったはずだ。」
「本当ですか!?」
「あぁ。『神の紋章』はその者の秘めている力を手に入れるものでな。人によっては手に入れる力がちがうのだよ。」
「なんでそんなこと知っているんですか?」
「それは先代にあったことがあるからだな。」
「先代!?それって前に『神の紋章』を持っていた方ですよね。」
「そうだ。あの2人は良い奴であったよ。」
「そうだったんですか。」
なんだよそれ。なんでこんな重要なことセウザさんたちは教えてくれなかったんだ。4歳になった時の夢でお仕置きが必要だな。
「それでだな。お前はまず詠唱に慣れることが最優先事項だな。お前であればすぐに無詠唱も使えるようになるであろう。」
「はい!頑張ります!!」
「いい意気込みだ!よし。次の魔法へいくぞ。」
あれから3時間ほど経った。もう火の初級魔法はすべて覚えた。火属性魔法のレベルも2に上がっていた。今は昼休みで昼食をとっている。午後からは剣術だ。
「初日でしかもたったの3時間で火の初級魔法を全て覚えてしまうとはな。」
「ヤファイさんの教え方がうまいんですよ。」
「謙遜はするな。お前にはしっかりとした才能があるのだよ。」
謙遜などしていない。実際にヤファイさんの教え方はうまかった。何度でも見本を見せてくれたし。コツなんかも教えてくれた。
「・・食べ終えたな。よし。剣術をやるぞ。」
「はい!」
俺らは外に出た。そしたらヤファイさんが刃渡り60㎝ほどの剣を渡してきた。
「ドランが作った剣だ。お前にちょうどいいサイズだろう。」
本当にちょうどいいサイズであった。それ以外にもどこかしっくりくるような。これまで1度も剣など握ったことはなかったのにだ。ドランさんが作ったのだから恐ろしく高性能だろうな。一応神眼で見てみるか。
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魔鉄の剣:最上級 製作:ドラン
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『魔鉄』・・・魔力の多い部分で変化した鉄。通常の鉄よりも硬く、魔力伝導率が高い。しかし加工が難しい。
高性能ではなかったが、普通に良い武器だ。街とかで売ったらいい金になるだろう。ぐへへ・・いかんいかん金が絡むとキャラがぶれる。
「まずはかまえてみろ。」
「はい!」
元気に返事してみたはいいけど、全くわかんないや。とりあえず腰を低くして両手で剣をまっすぐに前でかまえてみる。
「それだと横の動きについていけないな。もう少し右足を下げてみろ。」
「こうですか?」
「うむ。そして剣はまっすぐかまえるのではなく、斜めにかまえてみろ。」
ド素人でもわかるしっくりくる構えになった。
「よし。構えは良いだろう。次は振ってみろ。」
とりあえず振る。 ブンッブンッ
「その太刀筋だと斬るというより、叩くだな。」
「どうすればいいんですか?」
「柄を持ってる手を振るときにねじってみろ。」
言われた通り振ってみた。 ヒュンッ さっきより音がいい。
「うまく振れたようだな。これから毎日素振り500回だ!!」
あっ。ヤファイさんのスイッチが入った。
「よし!そのまま今日は500回振るまで付き合ってやるぞ!!」
そういい、腰に下げている剣を抜き振り始めた。
ビュオンッ!ビュオンッ!ビュオンッ!ビュオンッ!
すごい音だ。俺なんか『ヒュンッ』だ。この人なんか『ビュオンッ』だ。しかも『!』付きで。構えも太刀筋も綺麗で剣が見えない。
「どうしたー!リュウ!俺よりも遅く終わったらプラス500回だぞ!!」
この人剣を持つと性格変わるタイプだ。プラス500回なんて言ってる。敵うはずないよ。プラス500回ルート確定だな。
そんな風に思いつつリュウは剣を振り始めた。言わずもがなリュウは負けた。しかも何度も素振りをやらされ、夜になるまで振り続けた。計1万回を超えていただろう。ヤファイもリュウに付き合って振っていた。リュウの手がボロボロになっていたのに気づいて、終わった。さすがに申し訳なかったのかヤファイはリュウの手に回復魔法をかけた。