第24話 火山の街
ここ最近は創作意欲が戻ってきました
この街の名前は「フェステイオ」と言う。街というよりは村といった方がいいかもしれない。トーファスの様にレンガの外壁には囲まれておらず、木でできた柵によって街全体を囲んでいる。
この街は火山の近くなので、温泉が湧き、観光地となっている。他にも黒曜石でできた装飾品などが有名だ。リュウ達は馬車を降り、街の中へと入っていった。
「へー、この街は温泉が有名なんですね。そりゃ、火山の近くだ。温泉のひとつや二つは湧き出るか。しかし、少し街が静かすぎではないですか?シルフォードさん」
「ああ、おそらくワイバーンが大量に発生したからだろうな。街の人々も恐れて、外にはあまり出ないのだろう」
「なるほど。ここから見える煙の上がってる山が俺たちの目的の火山ですか?」
「そうだ。ハイスヴァルム火山と言う。とりあえず、町長の所へ向かうぞ」
「はい」
二人して街の中央の道を歩いていく。まだ昼間だというのに、極端に人通りが少ない。トーファスだったら子どもの遊ぶ声が町中に聞こえていた。露店も開いてはいない。町の中心に近づくにつれて、人通りも増えてはいるが、誰も大きな声で話したりはしていなかった。他の住宅よりも一回り程大きい屋敷が見えてきた。あれがこの街の町長の家らしい。門の前に一人護衛が立っていた。
「貴方たちは…」
「私たちはギルドの者だ。今回のワイバーンが大量に発生した件で、この街に来たのを町長に報告しに来たのだ」
「貴方がシルフォード様ですね。そちらのフード方は」
「リュウです」
「今回、ワイバーンを討伐してもらうのだ。実力は私のお墨付きだよ」
「シルフォード様のお墨付きですか。相当な実力の持ち主なのですね。わかりました。中へお入りください」
玄関が開かれ、中へ通された。役人に案内され、町長のいる部屋に向かった。町長の風貌は、髭を蓄えた優しそうなおじいさんといったような感じだ。
「よく来てくださいました。私はポーターと申します。どうぞおかけになってください」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
「さて、今回の件ですが、一つの傭兵団が壊滅したというのはご存知ですか?」
「ああ、知っている」
「そこからわかるように、相当な数のワイバーンが発生したことがわかります。街の住人たちもこの話をきいて、皆怯えております」
「だから、外にいなかったんですね」
「はい。火山までここは数キロしか離れていません。夜になるとワイバーンの鳴き声がここまで響いてくるのです」
「しかし、何故今回ワイバーンのみ発生したのでしょうか」
「それはわかりません。魔素の関係では?」
「いや、それは考えにくい。魔素が濃い場所では多種多様な魔物が発生しているはず。ワイバーンのみ急に発生するというのまずありえない」
これって、この前のゴブリンの大量発生と何か関係があるのだろうか。もしそうだとしたら、亜種や上位種も発生している可能性が大きいな。何とかなるだろうが、早く行動に移さないとこの街が危険だ。
「その話はあとにして、シルフォードさん。いつ火山に向かうんですか」
「明日の早朝から向かうことを予定している」
「それで大丈夫なんですか。いつ襲ってくるかわからないのに、そんなのこのこと明日まで待っていられませんよ。俺はいつだって行けるんですよ」
一応、索敵スキルは全開で発動を続けている。この街でもワイバーンがどの距離でもわかるようにはしているが…
リュウの索敵スキルの範囲はフルで発動してなんと半径20キロである。どこにどんな生物がいるか神眼を併用して把握している。もちろん覗きなどには使っていない。今ワイバーンのいるハイスヴァルム火山全域を索敵の範囲に捉えている。
この街に入ってからずっと全開に拡げてるから少し疲れてきたな。魔力は即時魔力回復で間に合っているが、いや元より魔力が多いからその点では苦痛じゃないが、神経が削られるんだよな。この状態を維持すると。
「その気持ちは私もよくわかる。しかしもうじき日が暮れる。視界が悪くなってはこちら側は圧倒的に不利になる。しかもお前には魔法使用禁止と言ってあるだろう。尚更今から行くのは危険だ」
「魔法使用禁止!?だ、大丈夫なんですか!?」
町長が慌てふためいた。
「大丈夫だ。この青年はそれだけの実力がある。もしもの時は私もいるのだ」
「シルフォード様がそこまで言うのなら。しかしまだこの青年は無名ですし」
シルフォードが笑い始めた。
「そうだったな。まだリュウは無名だ。しかし今回の依頼が終わった後は嫌でも耳に入ってくるだろうな。そうだろう。リュウ」
「どうでしょう。言うならば無名のままがよかったのですが」
「はっはっは。それは無理だろうな。お前の実力を隠し通せるのはせいぜいひと月くらいよ」
「ま、そうでしょうね。それで明日の早朝向かうということでいいんですね」
「ああ、それで決まりだ」
「それでしたら、今日は私の屋敷でどうぞお休みになられてください」
「いや、それは…」
「いやいや、構いませんよ。むしろこの街の英雄になるかもしれない方を泊められるなんて光栄です。おい、空き部屋がいくつかあっただろう。この方たちをそこへ案内ししなさい」
使用人に案内され、二人別々の空き部屋へと入った。
「お食事の時間になりましたら、お呼びします」
「あ、ありがとうございます」
食事まで用意してもらえるのか。ちょっとゆっくりしておこう。索敵は続けておかないといけないけど。
コンコンッ
「はい?」
「私だ。入るぞ」
「シルフォードさん。どうしたんです?」
「リュウ、索敵はもう解いていいぞ。そこまで気を張る必要はない」
「…わかってましたか。しかし」
「私もいるんだ。心配はない」
「はい」
「明日に備えてしっかり休んでおけ。馬車でもあれほど気持ち悪くしてただろう」
「それを言われたらダメですよ。ははっ」
「それではまた後でな」
シルフォードが部屋を後にし、リュウは索敵スキルの発動を止めた。無限空間からレオとヴルを呼び出した。その瞬間二頭はリュウへと飛びついた。
「ちょっ!お前ら、ど、どうした」
『主!四日間も会えておらんかったのですぞ!』
『そんな事はこれまでなかったのですから!』
「なんだ~。お前ら寂しかったのか。可愛い奴だな。このこの」
リュウは二頭を思いっきり撫でてやった。二頭も嬉しそうにリュウと遊んでいる。傍から見たら、完全に襲われている図である。
「失礼します。お食事のご用意が・・・。ひぃ!獅子と狼に襲われている!!」
バタッ!
「あ、気絶してる」
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「ほっほっほっ、そりゃ、驚きますわな。あれ程までに大きな獅子と狼ですもの」
「すいません。急に入ってこられるとは。あの使用人の方は大丈夫ですか?」
「ノックもせずに入ったうちの使用人も悪いんですよ。少し困惑しているが、部屋で休ませておりますので」
「それならよかった」
「しかし、まあ。私も驚きましたよ。まさか文献でしか見たことのない神獅子と神狼を従魔にしておられるとは。もっと話を聞きたいのはやまやまですが、食事が冷めてしまってはいけない。食べましょう」
「はい、いただきます」
リュウ達は食卓を囲み、明日のことなどを話しながら食事を終えた。その後部屋に戻り、少し休んでいると使用人に町長の家にある温泉へと案内された。
「おお、温泉だ。結構広いなぁ。懐かしいな。よいしょっと。ふう、気持ちええなあ」
「おじさん臭いぞ。リュウ」
「うお!シルフォードさんも来てたんですか」
「私もリュウより少し後に案内されてね。一緒に入っては悪かったかね」
「いえ、そんなことはありませんよ」
「ふう、数十年ぶりに入った。しかし温泉もいいものだな。何もかもが洗い流される気持ちになる」
「はい。俺も久しぶりに入ったんですけど、落ち着きます」
「ああ、そうだな」
「…シルフォードさん。本当に大丈夫なんでしょうか」
「なんだ。まだ心配をしていたのか」
「はい」
「大丈夫だ。恐らくワイバーンの群れはあの火山をコロニーとしている。本来ワイバーンと言うのはコロニーから出ることは一切ないのだよ。その荒々しい生態によって勘違いされやすい」
「それは知らなかった」
そうか。俺は神竜さん達からは魔物の効率の良い倒し方や急所とかしか教わった事がないな。生態も考えなければいけないのか。教わっておけばよかったな。まだまだ勉強する余地があるってことか。トーファスに図書館が有ったはずだから、戻ったら行ってみよう。
「私は先にあがるぞ。のぼせないようにな」
そう言ってシルフォードは湯船から出た。その背中には大きな傷があった。
「シルフォードさん。その傷…」
「ああ、これか。昔やった依頼で少し厳しいものがあったんだ。その時にな」
「…そんな大きな傷」
「大丈夫さ。仲間たちも深手をおっていたな。私もまだ若かった」
「すいません。いやなことを聞いたかもしれません」
「いいや、ただの懐かしい古傷だ。あれがあったから今の私がいる」
「……いつかその話聞かせてもらえますか?」
「もちろんだ。明日は精進してくれ」
「はい」
シルフォードさんにも過酷なことがあったんだ。だからあの地位まで昇りつめた。俺も頑張んないとな。まずは明日のワイバーン討伐だ。
リュウは温泉から出て、部屋へと戻った。武器の手入れをし、早めに寝床へついた。
フェステイオ:ギリシャ語で火山を意味する『イフェスティオ』から
ハイスヴェルム:ドイツ語で『熱い』という意味




