第16話 街を散策
久しぶりの投稿ですね。存分に楽しんでください
クレインが言っていた通り宿屋はすぐそこにあった。というより、ギルドの真横である。この『雲の休み場』は各街に支店を持っており、本店は人族の王国である。外観は西洋風のホテルと言ったところだろうか。かなり大きく、五階建てだ。赤いレンガがいい雰囲気を醸し出している。宿泊料も安く、冒険者にとても人気のある宿場である。リュウはすぐさま入っていった。宿にいる冒険者達から畏怖の目を向けられるが、そんなの関係ないとフロントへ向かった。
「お泊りですね。一泊2000Zrです。こちらにお名前をご記入ください」
「とりあえず、5日分で」
「はい。銀貨1枚いただきます。それでは説明させていただきます。この宿は朝夕食付でお部屋には風呂も備えてあります。大浴場もございますのでそちらをご利用いただいても構いません。その場合は、500Zr必要となりますので。朝食などは食堂に行ってください。お出かけになる際は鍵をお預かり致しますのでお申し付けください。リュウさんのお部屋は2階の205号室となっております。こちらが鍵です」
「ああ。ありがとう」
「朝食のご時間は6時から10時まで。夕食は17時から21時までとなっております。それまでならいつでも構いません」
「今日分の夕食は貰えるのか?」
「ええ。大丈夫ですよ」
「ありがとう」
そう言い、リュウは部屋の鍵を持ち、2階へと上がった。
え~と。205号室と。あったあった。おお。結構広い部屋だな。ふ~。結局目立っちゃったな。あれ完全に俺のミスだよな。はあ。明日から大変そうだ。クレインさんは大丈夫そうだけどレシーさんはなんか言いふらしそうだな。まあ、別に顔を隠さないままでもいいんだけどな。でもこの顔だといろいろといかんからな。俺は異世界にハーレムを作りに来たわけじゃないし。神様からの依頼が最優先だな。今は14時か。確かこっちに来たのが11時くらいだから結構時間たったんだな。そういや、腹が減ってきたな。依頼は明日からにして今日は街を散策してみるか。となったら、早速行くか。
リュウは鍵を預けて宿を出た。
まずは飯だ!どっかないかな。ふっふーん。この街は綺麗だな。ガリーみたいな奴もいるが、それは街とは全く関係ないことだ。ルボーさんが言っていた通り治安もいい。子どもたちもいっぱいいるしな。
街道を歩いていると、リュウの近くでこけてしまった女の子がいた。近くで遊んでいた男の子が近寄った。
あらら。膝から血が出てるよ。あの子たちは兄弟かな?治してやるか。
「おい。大丈夫か?」
「お兄さんだあれ?」
「旅のもんさ。ほら嬢ちゃんの。膝の怪我見せてみな」
「・・・うん」
「よし。あんま深くはないな。『消毒治癒』」
みるみるうちに怪我が癒えていき元の綺麗な膝へと戻った。『消毒治癒』とは回復魔法の初級魔法で擦り傷程度なら直ぐに治してしまう。しかも消毒付きだ。
「すごい。元に戻っちゃった」
「ありがとう・・ございます」
「お兄さんすごいね!ぼくベンっていいます。ほらフェレスも」
「・・ベンの妹のフェレスです」
「俺はリュウだ」
「お兄さん回復師なの?」
「違うよ。ただ回復魔法が使えるだけさ」
「・・お兄ちゃんにお礼しなきゃ」
「いいよ。礼なんて」
「でも無料で回復魔法を使ってもらったんだから」
普通は回復魔法ってお金がいるのか。たぶん医者とかか。
「なら、そうだな。この街で一番うまい飯屋ってどこか教えてくれ」
「それだけでいいの?」
「なら僕のお店に来なよ!お父さんの料理は全部おいしいよ!」
「そうか。なら行こう」
うまく誘導されたな。ベンは商売上手だな。言われるがままにベンについていく。何故かフェレスは俺の横でマントを掴みながら歩いている。
「ついたよ!」
「へえ。ここか」
店の名前は『豚の満腹亭』店の名前だけだとなんか大食い料理でも出てきそうだ。
「いらっしゃい。おやベンとフェレスか。お客さんを連れてきたか」
店の中に客はいない。それもそうか。こんな時間帯だしな。店主はスラッとした長身でかなりのイケメンだ。西洋風の速水も〇みちさんをイメージしてもらえばいいかもしれない。奥には女性が皿洗いをしている。たぶん店主の奥さんだろう。
「うん!このお兄さんがフェレスがこけちゃって怪我したのを治してくれたんだ!」
すると奥で皿を洗っていた女性がでてきた。かなりの美人。ベンとフェレスも顔が整っているからこの家族は美男美女一家なんだな。
「本当?フェレス大丈夫?」
「うん。お兄ちゃんが綺麗に治してくれたの」
「ありがとうございます。お名前は?」
「リュウです」
「私はアルと言います。リュウさん。あなたには何かお礼をしなくちゃ」
「いいですよ。お礼ならこの子たちからもう貰ってますし」
「え?」
「この街で一番おいしい飯屋を教えてくれたんですよ」
「ははは。それでベンたちはここへ連れてきたってわけか。お兄さん今日はタダでごちそうするよ」
「いやいや。ちゃんとお金は払いますよ」
「遠慮はしなくていいよ。うちだって家計が苦しいわけでもないし、これから飯を食べるときはここを利用してくれたらいい」
またまたうまく誘導されたな。
「はは。そうしますよ。ならこの店で一番おいしいのを注文します」
「OK!まかせとけ」
「お兄ちゃんはこっちに座って」
フェレスに引っ張られ席につく。4人席で前にベンとフェレスが座る。奥さんが水を持ってきた。うん。うまい。冷たい水がのどを通る。厨房から何かを焼く音が聞こえてくる。その音とともにおいしそうな香りが店内に広がる。
「お兄さんはどこから来たの?」
「う~ん。遠いところかな」
「・・とおいところ?」
「ああ。遠いところで修行をしてたんだよ」
「修行?なら回復魔法以外も使えるの?」
「ああ。いろいろとできるぞ」
「見せてみせて!」
まあいいか。少しぐらいならな。
「うわ。すごい」
「・・きれい」
ベンとフェレスが感嘆の声をあげる。リュウの右手の上で水晶玉のように透き通った氷の珠が浮かび上がる。言っていなかったがリュウはもれなく伝説級の魔法まで使える。そのほとんどを無詠唱でできる。神級の魔法は本当の神しか使えれないそうで神竜達も9人全員でやらなければ使えれないらしい。
そして左手に真紅に燃える炎の珠で氷の珠を一瞬のうちに蒸発させる。その水蒸気がキラキラと宙を舞う。こうして小さな魔法ショーが終演した。それと同時に料理が運び込まれた。
「うお。うまそうだな」
「そうだろう。これはなトファース牛のステーキだ。うち特性のソースをかけてあるんだ」
「トファース牛って?」
「お兄さん知らないのかい。この街のブランド牛さ。脂身が少なく他の牛よりもカロリーが低いから女性にも人気なんだ。脂身が少ないといってもとてもおいしいんだ。そしてライスとスープとサラダ」
「へえ。この街はブランド牛があるんですか」
「ああ。ここは本当に良い街だぞ。他にも特産品がたくさんある」
「本当に良い街なんですね。じゃ、いただきます」
「お兄ちゃんは食べるときもフードを被ったままなの?」
「ああ。そうか。取らなきゃな。・・あっ」
リュウはまたどじを踏む。あれだけ目立ちたくないと言っていたのにフードを取ってしまった。店主とベンは口をあんぐりと開けている。アルとフェレスは顔を赤らめる。おい、アルさん。あんたはダメだろ。リュウはまあいいかと料理に手を伸ばした。
「おいおい。普通食べ始めるか?」
「これとってもおいしいですね」
「おう。そうか。・・じゃねえよ!リュウ、お前めっちゃカッコいいな」
「店主さんも十分カッコいいじゃないですか」
「そういや言ってなかったな俺の名前はフォートだ。そんで俺がカッコいい?いやいやお前と比べてら全然だぞ」
「ええ。うちの旦那なんかより何倍もカッコいいわよ。どこかに神々しさを感じるわ」
「おっ・・おい。そりゃないぜ。アルゥ」
「だって本当のことじゃない」
少しばかり口喧嘩が始まってしまった。リュウは食べ進めていく。
「お兄さんカッコいいのに魔法も使えるってすごいね!」
「格好良さと魔法が使えるかは全く別物だぞ」
「・・でもお兄ちゃん凄い。魔法があんなに綺麗に見えたの初めて」
「ねぇお兄さん!僕らに魔法を教えてよ!」
「私も教わりたい」
「う~ん。別に大丈夫だけど」
「俺たちは構わないよ。てか教えてやってくれ」
口喧嘩が終わったフォートが答えた。
「本当!やった!」
「お兄ちゃん約束」
「ああ。時間があったらな」
「この後は時間空いてるの?」
「いや。この街を散策しようと思ってるよ」
「じゃあ。僕案内する」
「私も」
「おお。それは有り難いな。ごちそうさまでした。フォートさんとてもおいしかったですよ」
「おう。また来てくれ」
「早速行こうか」
「「うん!」」
2人とともに店を出る。フードはもう被っている。リュウはもう絶対に人前ではフードは取らないと心に決めた。店に行く時同様ベンが先導し、フェレスはマントを握っている。さっきよりも距離が近い気がする。街の中を歩いていく。冒険者からはやはり畏怖の目を向けられる。
はあ。なんでこんなに怖がられているんだ?俺ガリーを殺したわけでもないのにな。てか逆にコテンパンにした方がよかったか?動きを止めて戦意を消失させたのが力の差を見せつけ過ぎたってわけか。
「どうしたの。お兄ちゃん」
「ああ。ちょっと考えごとさ」
「お兄さん。ここ!僕のおすすめの場所」
「おお!凄いな」
そこは広場であった。真ん中に噴水があり、様々な人々が行きかう。井戸端会議をしているおばさん達。元気よく走り回る子供たち。綺麗に整備されている花壇もあり、美しい花々が咲いている。のどかでどこか安心できる憩いの場。ここはトファースの街の中心だ。
「ここの花壇はね季節によって花が変わるんだ」
「それはいいな。あっそうだ」
「どうしたの?」
「いや、ちょっと行かなきゃいけない場所ができてな。ついてきてくれるか」
「うん」
リュウはこの街に入った門へと向かった。そこにはカーターがいた。
「おお!リュウか。もうできたのか」
「ああ。ほら、これ」
「よし。・・ほら大銅貨の返還だ。ん?この子たちはたしか」
「豚の満腹亭の子たちだよ。案内してもらっているんだ」
「それならもう広場に行ったか?」
「ああ」
「そうか。あの場所はほんとにいいぞ。この街が平和である証拠だからな」
「お前はこの街が好きなんだな」
「ああ。大好きさ」
「じゃ。俺らは行くよ」
「じゃーな」
リュウ達は街を歩いた。ベンはいろいろとリュウに教えてやった。どこにどんな店や人がいるか、子どもにしては分かりやすかった。少し日が傾き始めたらリュウが店へと送ってやった。フェレスはリュウと別れるのを惜しんだが明日も来るというと渋々離れた。リュウは宿へと戻り、夕食をすまし、風呂に入って直ぐに寝床についた。
明日からは忙しくなりそうだ。




