第15話 決闘と対談
う~ん。やっぱり戦闘描写は難しいですね。
「新人さんよー!良いもんもってるじゃねーか!へっへっへ!」
はぁ。なんか悪そうな人が絡んできたよ。やっぱりこうなっちゃうよね~。
「新人さんよ。その二匹、俺にくれねえか」
怖気づいてしまってはいかんな。
「それは無理な話だな」
遠くの方から『あいつB級のガリーじゃないか』『いつも通り新人つぶしか』『しかも今回は神獣付の上玉だ。奪っちまったらこっちのもんだな』『でも神獣を従えてるってことはあいつも強いんじゃ・・』とか小さい声で言っている。
「ほほう。それは俺が誰だか知ってて、口にしてるんだな!」
「お前など知らないが、名はガリーと言うのだろ。向こうの方でお前のことを言ってる奴がいたよ。毎回のように新人潰しをしているようだな」
するとまた遠くから、『おっおい。あいつこの距離で俺らの声が分かったのか?』『相当やばい奴なんじゃないのか』としゃべっている。はい。はっきりと聞こえてますよ。というよりここにいる全員がどんな話をしてるかわかる。大抵レオとヴルのことや俺のことだ。ましてやこのガリーとかいう奴に加勢して奪ってやろうとか話してる奴もいる。
「新人潰しとは人聞きが悪いぜ!俺は教育をしてやってるんだ」
「教育だと?」
「ああそうさ!教育だ。ここ最近の若い奴は皆すぐに調子を乗りやがる。だからこの世界の厳しさを教えてやってるんだよ!」
「さっきの言葉からするとこの二匹が狙いのようだが」
「今回ばかしは教育じゃねーな。新人のお前には神獣は似合わなさすぎる。だからB級の俺が貰っておいてやるというわけさ」
『我が主を侮辱するつもりか?』
『万死に値するぞ』
ギルド内がざわめく。中には顔を青ざめている奴もいる。レオとヴルの殺気にやられたのだろう。ガリーの奴は一歩退いたが諦めていないような顔をする。
「こいつらは従魔というより、俺の家族だ。家族をそう易々とは渡せないな」
「ほう。新人のくせして俺に歯向かうのか」
「じゃあ、どうするんだ?」
「力ずくで奪うしかないな」
「力ずく・・。脳筋らしい判断だな」
「馬鹿にしやがったな!決闘だ!」
「いけません!冒険者間の決闘は規制されています」
「おっと。いけねぇぜ、レシーちゃんよ。こいつは俺を馬鹿にしてきたんだぜ!」
「でっでも、B級のあなたがまだ登録したての人に・・」
「レシーさん大丈夫ですよ」
「ほう。相当な自信があるんだな」
すると大声で『こいつ大口叩いてるくせして、ガリーよりステータス低いぞ!』と聞こえてきた。鑑定スキルで見たのだろう。完全に偽装されているがな。その声を聞いてガリーはニヤリと笑った。
「おい。お前やめといた方がいいじゃねえのか。へっへっへ」
「そのステータスが本当のものかわからないだろ」
「その言葉。決闘を承諾したと捉えてもいいな」
「ああ」
「よしならついてこい」
ガリーについて行くとギルドの地下にある訓練施設なる場所へ連れてかれた。そこは20m四方ほどの闘技場のようになっていた。後からゾロゾロと冒険者達もやって来た。見物でもするのだろう。当然レシーもついてきている。
「よし。俺が勝ったら、あの二匹とお前の全財産を頂くからな!」
「俺も同じ条件でいい。ところで、レオとヴルで闘ってはダメなのか」
「それは自分の力が弱いと言っているようなもんだぞ。ダメに決まっているだろう!」
「わかったよ。後悔しないようにな」
はあ。俺、加減の仕方わかんないんだけど。これまでは神竜さん達とやる時はほぼ全力だったしな。ステータスをぬかせたのも最近だし。俺と比べてら圧倒的にレオとヴルの方が低いからな。少し優しくしてあげようと思ったのにな。でも、まあそんなのわかるわけないよな。普通、人より神獣の方が圧倒的に強いからな。
「おい!誰か審判をやってくれんか!」
そうガリーが大声で叫ぶと大柄な初老の男が出てきた。だが、しっかりと整えられた服を着ているし、どことなく風格がある。ガリーが驚いた顔をしている。
「ギッギルドマスター!?何故あなたが!?」
「ここに空間魔法を使い、しかも神獣を従えた青年がいると聞いてね。君がそうかね?」
「はい。リュウといいます」
「私はこのトファース支部のギルド長をやっているクレインだ。顔を見せてくれんかね?」
「それは無理な注文ですね」
「うむ。そうか。まあいい。私が審判をしてやろう」
「ほっ本当ですか!?」
「本当はいけないことだとは知っているだろう。ガリーよ」
「はい。もしここで負けたらもうしないと誓います」
「よし。ならいいだろう。ルールは私が負けと判断した時点で終了だ。わかったな!」
「「はい」」
「よし。両者離れろ。始め!」
その声と共に、ガリーが背中に担いでいた槌を直ぐに手に持ち一直線突っ込んできた。顔は笑っている。目では追いつけないだろうとでも思っているのだろうか。でも俺にはめちゃくちゃ遅く見えています。欠伸したっていいぐらいな気分だ。どうしよう。とりあえず避けとくか。
リュウが体を傾ける。一直線に突っ込んでくるだけなので、リュウの動きだとそれだけで避けきれてしまう。外から見るとものすごい速さでガリーが攻撃をして、最小限の動きでリュウが避けていたため、リュウに当たったかのように見えたが、無事だったリュウを見て、見物をしていた冒険者達は驚いている。
「なに!?避けれただと!?」
図星か。なにそんなに驚いちゃってるんだよ。挑発でもしとくか。ははは。
「お前の動きなんて亀よりも鈍いな!」
「くっ。まぐれで避けられただけだろうがっ!」
ほらほら。容易く挑発に乗っちゃって~。また一直線に突っ込んできたよ。避けられるに決まってんじゃん。そんな速さじゃ。
「くそが!」
頭に血が上ってちゃあかんぜ。ガリーさんよ。ほら、動きが大雑把になってきた。
「なんで当たんねえんだよ!」
「どんどん動きが大きくなっているのがわからないのか」
ガリー自身もそれなりに強い。トファースを拠点にしている冒険者はかなりいるが彼もその中の一人だ。その中でもガリーの強さはトップクラスであろう。そのガリーの攻撃をいとも容易く、しかも最小限の動きで避けているリュウを見ている冒険者達は全員が驚愕の顔をしている。
「はあはあ。くそ!当たれや!」
そろそろ潮時か。でもどうする。どうけりをつけようか。殴るか。いや、殺してしまいそうだ。デコピン・・。当たった部分だけがはじけ飛びそうだ。どう足掻いたって死んでしまいそうだ。何なら、修行の時に手加減の練習でもしておけばな。殺すのは流石にな。新人潰しをしてるって言ったってB級なんだしそれなりに貢献しているのだろう。う~ん。・・魔法。あっそうだ。
『土縛』
地面から土でできた鎖が形成される。それがガリーの手足に絡みつき動きを止まらせる。
「たかが土縛で・・。なっ何!?動けん!」
土縛は術者の魔法攻撃力によって強度が変わる。土縛は初級魔法ではあるが、リュウが唱えたそれは破壊不能な鎖となってしまう。
「ギルドマスター。もういいんじゃないでしょうか」
レシーがクレインに言う。
「うむ。そうだな。この勝負、勝者リュウ!」
その声で訓練場内が騒がしくなる。
『おいおい。新人が勝っちまったぞ』
『でもまぐれで攻撃を避けれただけじゃないのか』
『お前、ガリーの動きを正確に見れたか?』
『いや、正確にはとらえられなかった』
『だろ。そんな攻撃を新人は何度も避けたんだ。そう何回もまぐれになるわけがない』
『たかが初級魔法でB級のガリーの動きを止めたんだぞ』
『それだと、あいつがガリーの魔防よりも何倍も魔攻が高いってことじゃないか』
『鑑定スキルでいてみたが圧倒的にガリーの方が高かったぞ』
『偽装スキルだろうな。あいつの強さはA級以上かも・・」
「おい!終わったのだからさっさと戻れ!」
騒いでいる冒険者達にクレインが一喝をいれる。その声で冒険者達はそそくさと訓練場を出て行った。
「リュウ君。ガリーを解いてやってくれ」
「はい」
「っく。負けちまったのか。約束通りお前には俺のもんを渡さなくちゃな」
「貰うのは金だけでいい。武器がなくなったんじゃ、いかんだろ」
「ほっ本当か!?」
いいことをしたように見えるが、ちゃっかりと金は貰うつもりのリュウであった。そんなことはつゆ知らず嬉しそうにするガリー。そして金を渡したら、そそくさと出て行った。
「リュウさんはとても強いのですね」
「避けて、動きを封じただけですよ」
「でも、ガリーさんは手も足も出せていなかったじゃないですか。そういえばなぜリュウさんは攻撃をしなかったのですか?武器も持っていませんでしたけど」
「それは私も気になるところだな。君は格闘術の使い手なのかね?」
う~ん。どうしよ。本当は手加減が分からなかったのだけどそうは言えないし。
「攻撃もせずにB級のガリーを封じ込めたってだけで強さの証明にはなりますからね。だから攻撃をしませんでした」
「ほう。なら君にはまだ手の内があるのだな」
「まあ。そういうことになりますね。まだまだ氷山の一角ですよ」
「はっはっは。それは楽しみだ。尚更、君のことが気にいった。リュウ君、この後時間はあるかね」
「ありますよ」
「そうかね。なら私の部屋に来てほしい。ギルドマスターとして君に話がある」
「はい」
クレインさんについていくと、ギルドの2階にある執務室へと連れてかれた。そこはとても綺麗な部屋だ。レシーさんもついてきている。
「私は飲み物を持ってきますね」
「うむ。ありがとう。リュウ君かけてくれたまえ」
「はい」
「まず君に質問だ。君はどこから来たのかね」
「言えませんね」
「何故言えないのかね」
「それも言えません」
「はあ。君はなんでも秘密にしたがるのだな。う~む。では君はどれほど強いのかね」
「強い?強さの基準がわかりませんね。とりあえずガリーよりは強いですかね」
「それは先の戦闘で分かっている。君には何か秘密の力・・。いや、君の、う~ん。オーラというものが偽装したステータスとはかけ離れすぎている」
ギクッ
「その根拠は?」
「長年の勘かな。あと君が神獣を連れていたからか。私も昔はS級の冒険者だったからな」
「S級だったんですか」
「うむ。もう50を超えたから、引退はしたがね」
「だから、この街にいる冒険者とは幾分か雰囲気が違ったのですね」
「そうだな!この街に今いる中で私が一番強いからな。だが、君が来てからはそうじゃなさそうだ」
「そんなに強くないですよ俺は」
「はっはっは!何を言っている。私も今ガリーと戦えば傷一つ付けずに戦うなど無理がある。そうだ。先ほどは周りに大勢いたから無理ではあったが、今は私しかいない。顔を一度見せてくれんか」
「誰にもこの容姿については言わないで下さいよ」
リュウがフードを取る。そこには静寂が漂う。 コンコン
「お飲み物お持ちしました。失礼します」
ガシャーン!!
「はっ。すまん。見とれてしまった。この私が男に見とれるとは」
「えっ!?ギルドマスター。この人は誰ですか?このカッコいい人は!」
「リュウ君だ」
「えっー!?リュウさんなんですか!」
「はぁ。だからいやなんですよ。この顔は目立つから。もう被りますからね。レシーさんもこの容姿には他言無用で」
「え?なんでですか?カッコいいのに!」
「目立ちたくないんですよ。あまり騒がないでください。ほら。飲み物落として。せっかく綺麗な床が水浸しだ」
「あっ。本当だ。もう一度持ってきますね」
「レシー君。飲み物はいい。代わりにコップを」
「はい。わかりました」
レシーさんは床を拭いた後、勢いよく部屋を出ていき、コップを持ってきた。
「リュウ君は酒は飲めるかね」
「はい。一応は」
この世界は15歳で成人らしく、その時にドランさんが酒を持ってきたのを飲まされた。地球にいた頃は少しだけ飲んだことがあったが、めっきりダメだった。だが、この体は平気であった。するとクレインさんが自ら酒を持ってきて、コップに注いでくれた。飲んでみるとかなりうまい酒であった。アルコールはかなり強いが、飲んだ後に鼻先を抜ける香りが芳醇だ。
「このお酒かなりおいしいですね」
「ほう。君は酒についてわかるのかね。この酒は年代物でね。私もかなり好きなんだ。おっと。話がそれてしまったな。では、本題に入ろう。本当はS級にしたっていいくらいなんだが、私にはそれほどの権限はなくてね。だから君をB級に上げようと思う」
「お断りします」
「そっ即答かね」
「何度も言いましたが目立ちたくないんです。実際、今回の決闘で良くも悪くも目立っているんです。しかもそんな時に、新人が急にB級に上がってたら、この街だけじゃなく他の街のギルドにも知らされるんですよね。だったら尚更嫌ですね」
「う~む。そうか」
「ギルドには上層部の人とかもいるんですよね?」
「いるが、それがどうしたのかね」
「その方々には報告などは一切しないでください。ただ、また新たに登録者がでたと。それだけにしておいてください」
「わかった。約束をしよう。君なら特別な待遇をしなくてもすぐにX級にでも上がりそうだ」
「はい。その期待にはお答えしましょう」
「では、すまなかったな。呼び出してしまって」
「いえいえ。おいしいお酒も飲めましたしいいですよ。それでは。あっそうだ。クレインさん。この街でおすすめの宿屋、教えてください」
「それならギルドを出てから左にすぐの『雲の休み場』がいいんじゃないか」
「ありがとうございます。明日から依頼をこなしていくんで」
「うむ。頑張ってくれよ」
リュウは執務室を出てすぐに、外へと向かった。ギルドに出るまでに皆から恐ろしいものでも見るかのような顔をされたが気にせずに出て行った。一人だけ違う顔をしていたのは言うまでもない。
面白かったり、誤字があればコメントください。




