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起こした

 地下室のドアに鍵もなく、すんなりと外へ出られた。

 階段があったので上った。

 1階に着いた。

 こぢんまりした部屋だった。 


 なんか、ぱっとしないところに呼び出された。

 もっと、豪華絢爛なお屋敷が良かったな。


 窓の外には森が見えた。

 いつの間に夜が明けたのか。

 太陽が高いところにあって、外は明るかった。


 ドアを開けたら、廊下もなくて、隣の部屋だった。





 いた!





 部屋の真ん中にあるカウチソファで、寝ている男がいた。

 ご主人様に違いない。

 手のひらの五芒星が反応して、熱を帯びたもの。


 ドキドキしながら近づいた。

 初めての召喚。初めてのご主人様。

 ほら、こっちにも、理想ってあるじゃない。

 使役されるのは屈辱的だけど、ステキなご主人様なら、事情が変わるってことあるよね。


 若っ。

 何よ。私とそう変わんない年じゃないの。


 寝息を立てるご主人様の隣に立ったけど、まったく起きる気配がない。

 ジロジロ見てやれ。


 整った顔立ちは、悪くない感じ。

 金色の髪の毛も、寝乱れてるけど、きれい。

 白いシャツと黒いズボン。シンプルな格好。引き締まった体の線がはっきりして、好印象。


 あれ、いいんじゃない?




 私は早速、ご主人様を起こすことにした。


「起きてください」


 すうすう。


「起きてください、ご主人様」


 すうすう。


 あれか?声が小さいのか?


「起きてください!」


 すうすう。

 寝息はまったく変わらなかった。


 小悪魔ナッツ、気は短い方です。


「起きろ!」

「起きやがれ!」

「呼びつけておいて、寝てんじゃねーよ!」

「てめえ!いい加減にしろ!」


 腰の辺りを力いっぱい、足蹴にしてやりました。


「ふわあ」


 とぼけた声を出して、ご主人様が目を開けた。

 ご主人様が眠そうな目で、私を見た。

 目が合った。


 なんてきれいな濃紺だろう。


 あれ?ちょっと、ドキドキしちゃう。

 とりあえず、挨拶しないと。





「はじめまして、ご主人様。わたくしナッツと申します」

「はあ」



 あれ?

 何かしら。

 この感動の薄さ。

 あなたの罠にかかったのは、こんなに可愛い小悪魔なのに。


「ご主人様、どんな御用でわたくしを召喚されましたか?」

「はあ。えっと」


 ご主人様は、目をこすりながら体を起こした。

 あれ?いてて、と腰を不思議そうにさすってますが、それについて語る気はありません。


 ご主人様が口を開いた。


「誰?」

「ですから、小悪魔のナッツです」

「はあ」


 まったく、話が進まない。

 ナッツ、繰返しになりますが、気は短い方です。


「だからー、呼び出しましたよね?」

「誰が」

「あなたが」

「俺が、誰を?」


 イラッときた。

 私は、左手の手のひらに刻まれた五芒星を、ご主人様に見せつけた。


「あなたが、悪魔を呼び出す罠を張ったでしょ?地下室の!それに私が引っかかったって言ってるの!」

「あ」


 ご主人様は、口を手でふさいだ。

 目を真ん丸にして。

 その顔は、まさか。





「すっかり忘れてた」





 そういえば、そんなことも、うんうんと納得した様子のご主人様。

 忘れてた?ちょっと、聞き捨てならないんですけど。


「あれ、いつ仕掛けたんだったかなー」

「悪魔に御用があったのでは?」

「思い出せないな。あったかな?忘れちゃったよ。あははは」


 それはそれは爽やかに笑いやがった。

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