捕まった!
私の名前はナッツ。
自分で言うのもなんだけど、可愛い小悪魔。
魔界でも、付き合いたい小悪魔ベスト5に入る可愛さなの。
黒い天然パーマの髪はショートカット。胸もお尻もプリッと小ぶりだけど、小柄だからそれもキュート。くりっとした大きな瞳も、プルプルの唇も魅惑的。黒く伸びた尻尾も艶やかで、背中の羽とベストマッチ。
小悪魔だから、まだ大した魔法は使えないし、体力もいまいちだけど、いつかアゲハお姉さまのような立派な悪魔になってみせる!って夢もあるわけ。
アゲハお姉さまは、魅惑のボディで男を魅了する、壮絶美人のかっこいい悪魔。
早く、ああなりたい!
まだ、あそこまでは行ってないけど、私だって結構ファンは多い。
だから、まあ、調子に乗ってた。
魔界を出て、人間界をフラフラすることが増えてた。
小悪魔女子たるもの、人間の男を魔に落としてなんぼでしょ?
男を誘惑して、その気にさせて、地獄に突き落として遊んで、私はすっかりご機嫌。
いい気持ちで夜空を飛んでたわけ。
あれ、甘い匂いがする。
ふらふらと甘い匂いが流れてくる方へ、私は誘いこまれるように飛んで行った。
なんか、もう、体が逆らえなくて。
ちょっと、おかしくない?って頭のどこかは思うんだけど、全然はっきりしなくて。
ああ、いい匂いーってだんだんどこか1点に吸い込まれて行って。
突然、真っ黒な大きな手に捕まった。
しまった!と思った時には、もう遅かった。
魔術の紋様が張り巡らされた大きな手にがっしり体をつかまれて、魔法陣の中に引きずり込まれてた。
「きゃあああああ!」
悲鳴を上げながら思い出してたのは、アゲハお姉さまの警告。
人間の魔術師には気をつけなさい、ナッツ。あいつら、悪魔さえ従わせる力を使うから。
たぶん、それです。アゲハお姉さま。
ナッツ。一巻の終わりです。
悲しいです。
私は短い時間で覚悟を決めて、暗い穴の中へ引きずり込む大きな黒い手に身を任せた。