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異能の蔓延る高き鳥籠  作者: 十白
5/5

Side ジル

「ってことはクビワツキさん。弾丸は16層で手に入れたってことくらいしか有力な情報はないんです?」


「そうだよ?首領からの依頼なんでしょ、君も大変だねぇ……」


「失敗したら俺きっと獣の餌にされちゃいますよぅ……」


情報を得た細目の男はぐったりとカウンターにもたれ愚痴を言う。

およよと先程まで鋼苑とクビワツキがいたバーで今度はクビワツキと細目の男が飲んでいた。


「ジルってそう言う変な依頼受けるの上手だよね。まぁ、君の異能を考えれば納得かな?」


「好きでこんな依頼受けたんじゃないよ。首領の依頼とか断れるやついつの?」


「少なくとも下層にはいないよ。断ったやつはきっとこの世にはいないんじゃないかな?」


「……ですよねぇ……まぁ、完遂はしますけどね。クビワツキさん、ちょっと手伝ってくれません?」


「無理」


「ありがとうございます。それでってえぇ!?」


毎回頼んでも笑顔で「あとでおごりね」程度でやってくれていたので今回も受けてくれるものだと思っていた。


「参考までに理由を聞いても?」


「首領に一層から出るなって言われてるんだよね。僕も命は惜しいよ。多分電脳空間も入ってるんじゃないかな?」


電脳空間とはこのバベルをベースに構成された電子の世界のことだ。

こちらの情報が全て乗っているそこには情報管理局からダイブすることができる。

情報の宝庫なので情報屋や新聞記者なんかがよくダイブしている。

ジルもそこから弾丸の情報を集めようとしたのだが一人ではやはりどうしてもはいれない場所もある。

そういう時にクビワツキに手伝ってもらっていたのだが。


「それじゃあ今回は俺ひとりってこと?」


「うん。応援してるよ。僕は首領の依頼が来るのを待つから、終わったら手伝ってあげるよ。探る場所は16層でいい?」


「……それでお願いします。」


がっくりと項垂れた様子でバーを出てていくジルをカクテルを飲みながら見送る。


「まるでここはお悩み相談所みたいだね?」


マスターは返事をせず、淡々とコップを磨いていた。




「電脳空間に入りたいんですが」


「はい、1時間銅貨2枚になるがよろしいですか?」


「じゃあ3時間で」


「はい、では5番の部屋へどうぞ。」


ジルは情報管理局の受付に銅貨を払い5番の部屋に入る。

相変わらず真っ白な部屋だが、通話する部屋とは違う場所が一点。

真ん中にカプセルベッドが置いてあるのだ。


「さて、久々にお仕事しますかね。」


そう言うとジルはベッドの中に入る。


『スキャン中……市民ナンバー321272、ジル様認証いたしました。これより電脳空間に入ります。3……2……1……転送。』


その瞬間ジルの意識はフェードアウトしていき、深い眠りへと誘われた。

数分眠っていたような感覚だろうか。

急に意識が覚醒して目が覚める。

体を起こすと先ほどと変わらない真っ白部屋にカプセルベッドだ。

飛び降りて体の調子を確認する。


「……毎度この潜る時だけはなれないなぁ」


部屋を出ると変わらない受付が一礼してくれる。

まだ昼時なだけあって人は少ないようだ。受付は空いている。

夜になれば情報屋に加え暇人も混じってくるので3倍は多くなる。


「転移を頼みたい。」


「はい、どちらへ?」


「16層」


「はい、かしこまりました。」


一瞬の浮遊感。


「16層でございます。」


「ありがとう。」


情報管理局を出ると舗装された道路、通る車、確かに16層だ。


「毎度ながら便利だね。移動が楽で、こっちに永住する人がいるのもわかる気がするよ。」


最近老後をこっちの世界で過ごすという人が増えてきているらしい。

栄養なんかは点滴でとってるそうだ。


「俺は勘弁だけどね……さて、闇市はっと」


話に聞いていた通りを歩いていけば突然目の前にウィンドウが現れた。


「おおぅ!なんだ?パスワード?」


電脳世界では勝手に入って欲しくない場所なんかにパスワードが設定されていることがある。

例えばお偉いさんの別荘、会談をする場所、人には言えないような密売する場所なんてのもそうだ。


「こっちは聞いてないなぁ……仕方ない、クビワツキさんがいないのがちょっとネックだけどやりますか」


そう言うとジルは目の前のパスワードのウィンドウとは別の窓を開く。


「パスハック~パスハック~どれどれ、如何なものかな?お、ついてる。ここザルじゃん…………これでよしと」


5分もしないうちにハックが完了し、目の前のパスワードを要求する窓が消える。


「こんな簡単なセキュリティーだと大した情報は望めないかもなぁ……」


そう言いながら進んでいく。

ここら辺は情報の管理が杜撰なようでところどころデータ化して数字の羅列になり消える場所があった。


「長いこと検閲を受けてないな……それであのセキュリティー……誘われたか……?」


電脳世界では一日に一回プログラムによる検閲があり、壊れた部分などを修復してくれる。これがないということは検閲の目を欺くことに成功しているということだ。

そんなバベルを騙せるような高度な技術を持ちながらあの簡単なパスワード。

どう見ても罠です、本当にありがとうございました。


「まぁ、すすむしかないんだけどNE」


この調子ならきっとパスを解いたときにジルの情報が盗まれていても仕方ない。

ならこちらもいくつかもらってから帰りたいところだ。

幸い電脳空間で死ぬことはない。永遠に囚われるということはあるが今は3時間と決めてあるためその時間になれば強制的に目が覚める。よって戻る必要なしと。


「あぁ、でも電子情報取られるのは痛いなぁ……」


まぁ捨てきれない未練を抱きながらジルはさらに奥深くへと進んでいった。

その後ろ姿を見ていたのは一匹の黒い猫だけだった。


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