Side ジャルベリ
「おい」
「はい、こちらに」
首領ジャルベリが部屋を出て受付に話しかけるとアイツの持っていたであろう弾丸を渡される。
「こいつがねぇ……とりあえず情報屋に寄ってみるか。高くつきそうだぜ……全く。」
ジャルベリが外に出ると地面は多少ひび割れているもののアスファルトで出来た道路、そしてビル郡が並んでいるのが見える。
車やバイクも走っており、一層とは比べ物にならない文化レベルだ。
ジャルベリは人気のない入り組んだ小道をを左、右と歩いていく。
しばらく歩くと一層よりは多少マシレベルのスラム街が見えてきた。
老朽化したビル郡。えぐれたアスファルト。電灯も割れ、夜になればここは真っ暗になるだろう。
ジャルベリはビルの一つに入っていく。
中は掃除などはされておらず人の気配もない。
しかし勝手知ったるが如くジャルベリは3階に上がる。
3階も1階と大して変わらないが埃がひとつも落ちていないことが見て分かる。
「おい。」
ここも人の気配もないような場所だが、ジャルベリが呼びかける。
「俺は面倒が嫌いだ。出てこねぇと四肢欠損くらいは覚悟してもらうぜ。」
ジャルベリの体がマント越しに膨らんだり引っ込んだりしているのがわかる。
異能を発動しようとしているのだ。
「ははは、やだなぁ。そんなことされちゃったら商売できなくなっちゃうよ。」
そう言って柱の影からひょっこり出てきたのは、18歳ほどの青年だ。
細い目は開いているのかわからないほどで、キャップを被って顔を少し隠している。
ラフな服装で現れた青年は続けた。
「それで旦那。今日はどうしたん?」
「コイツについて何か知ってるか?」
ジャルベリは一発の弾丸を投げて渡す。
「っと、これは?」
「お前も知らねぇってことはまだ使われたりはしてねぇみたいだな。そいつは異能をかき消す能力があるそうだ。そいつに込められてるのか、そういう金属を作り出したのかは知らねぇけどな。壁に穴があいた話は知ってんだろ?」
「あぁ、あのクビワツキさんのやつってこれが原因だったんですね。それで何を調べればいいんですか?」
「これを作ったやつ。これを作ったやつの組織関係。これを作った奴等の目的。売ってる場所。潜伏場所。対策。わかる範囲でいい。弾を見分ける方法もわかったら教えろ。」
「……こりゃまたずいぶん多いなぁ。いくら旦那といってもある程度もらうことになるよ?」
「構わねぇ。その代わり仕事はこなせよ。」
「分かったよ。これはクビワツキさんにちょっと頼ることになるかもしれないなぁ。今一層でしたっけ?」
「あぁ、しばらくそこにいろと言ってあるからしばらくはそこにいるんじゃねぇか。」
「じゃああとで連絡とってみるよ。それじゃあ仕事に移るね。バイバイ旦那」
そう言うと青年はまた柱の影に消える。
同時にその階から人の気配が弱まる。
完璧に消えていないのは弾丸を持っているからだろう。
「これでまぁ、大体は集まるだろ……あとは上層部のやつに話しして、注意勧告は……まぁ、噂になり始めてからでいいか。まだ行動は起こしたくねぇ……はぁ、メンドくせぇなぁ……全部部下にまかせるか……」
ジャルベリは懐から携帯電話を取り出すとどこかに連絡を始めた。
「……俺だ。あ?あぁ、んな固っ苦しい挨拶はいらねぇから要件を聞け、なに?示し?知らねぇよ。威厳なんぞ上層のやつらに食わせとけ。あぁ。それでいい。それで要件ってのはお前にちょっと調べて欲しいことがある。異能を掻き消す弾丸のことだ。あるんだよ。そういうのが。実際今俺の手元にもある。あぁ?大丈夫だ。握ってるとこで発動はできねぇみたいだがな。今回の事の発端はクビワツキがそれを拾ってきたとこだ。詳しいことはクビワツキに聞け。今一層にいる。あぁ?全部あいつに聞け。俺が説明するのもめんどくせぇ。謝罪はいらねぇよ。結果よこせ結果。あぁ、じゃあな」
携帯からはまだいくらか声が聞こえてきていたが気にせず切る。
「……任せられるのがメンドくせぇ奴しかいねぇってほんとやってらんねぇぜ……スカウトでもしに行くかね。」