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「なぁ、これってどう言う効果があるか知ってるか?」
手にしている剣を軽く左右に振り、腹を抱えている魔王に聞く。
「し、知っている……説明するからちょっと用を足して来ていいか」
魔王のその言葉を鼻で笑った。
「おいおい、さっき俺がそう言った時にあんた何て言った?
『ふ、だが断る!
トイレに行きたくばこの我が輩を倒してから行くんだな!!』
とか言ってなかったか?」
「くっ………」
俺の言葉に顔を歪める魔王。
若干涙目だ。
弱っている人に慈悲をかけないからだ、ざまぁ。
魔王の顔色が赤や青にめまぐるしく変わるのを一頻り眺めて溜飲を下げる。
「まぁ、俺もその辛さは分かる。
早く行ってこいよ」
何も俺だって鬼じゃない。
自称魔王だっているかは分からないが部下の見ているかもしれない状況で漏らす訳にはいかないだろう。
魔王は俺の言葉に心底ホッとした顔をすると、俺に深く一礼をして何か暗い光に包まれたと思ったら姿を消していた。
えっ…………?
慌てて魔王のいた場所に駆け寄る。
そこにはまるで誰もいなかったかの様だ。
ナニアレ、シュンカンイドウ?
混乱する頭で一つの結論に辿り着いた。
あぁ、やっぱりこれって夢なんだ。
やっぱりかーと言う気持ちで頷いていると、何か視界の右端にアイコンの様な物が表示されているのに気が付いた。
一瞬新手の目の病気かと思ったが、そっちに意識をやったとたん瞬時に視界一杯にまりでゲームのステータス表示の様な物がででーん!と現れた。
あぁ、やっぱりこれって(以下略)
一番上には俺の名前と年齢、性別が書かれている。
その下にはレベル表示が、何々? レベル…………1?
喧嘩したことのない、経験値0でいわばレベル1の俺〜とか思ってたけどまさか本当にレベル1だったとか………。
脳裏に浮かぶは良い笑顔でサムズアップしていた王冠を被ったおっさん。
なんて事してくれてやがんだあのおっさんは!!!
思い出した顔に凄いイラァッと来た。
イラッとじゃないんだ、イラァッとなんだ。
一発顔面を殴りたい気になってきたが、本人はいないし盛大に舌打ちをするだけに留めた。
つーか、魔王トイレ長いな。