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9 魔界のコンビニ

「結構、インフラ、ちゃんとしてるんすね」


「そうだろう! 電気、ガス、水道、全てそろっている!」


「逆に残念っすよ・・・・・・コンビニまであるじゃないっすか・・・・・・」


 俺はアデルとともに魔界を歩きながら、ものすごく普通の風景にがっかりしていた。魔界と言うからには、紫色の空に覆われたひび割れた大地に不気味な形のオブジェクトなんかがいっぱい突き刺さっているイメージだったのだが、基本的に人間界とさほど変わりない。流石に建物は石造りの洋風のものが多いが、コンビニを始め、電信柱や街灯まで付けられた日には、文句の一つも言いたくなってくる。


「おい、誰に『理想の魔界』を聞くんだ?」


「え~、誰かその辺に歩いてる人とかでいいんじゃないっすか?」


 テンションが低下しすぎて、思わず適当な返事をしてしまう。


「お前・・・・・・やる気あるのか?」


「--!? あります、あります! すみません!」


 アデルの出す紫色のオーラは以前よりも濃くなったように感じる。やはり、魔界の方が本来の力を出せるということなのだろうか? それはつまり、命の危険も高まったということか・・・・・・


「と、取りあえず、そこのコンビニの人に聞いてみるとか!? ほら! 経営者の観点からの考えも聞いておいた方がいいと思うんです!」


「ふん、なるほど。じゃあ、早速行くか!」


 ウィーン--


「いらっしゃいませ~!」


 魔界の店員の明るい声が響く。近所のコンビニより元気で感じがいいじゃないか。


「おい、貴様! 『理想の魔界』を教えろ!」


「ひっ、ひぃぃいいいい! アデル様!?」


 レジにいた狼男がアデルに凄まれ、震え上がる。というか、何でアンケート取るだけなのに凄まないといけないんだ・・・・・・


「話聞くだけなんすから、怖がらせなくていいんですよ・・・・・・」


「ん? そうだったな。おい、怖がるな。お前の『理想の魔界』を教えてくれ」


「は・・・・・・? 理想の魔界でございますか?」


 狼男は目をパチクリさせる。何だかちょっと可愛いぞ・・・・・・


「そうだ。お前たち、獣人族は魔界の未来に何を望む?」


「魔界の未来ですか・・・・・・そうですね。私たち獣人族は、夏は暑くて仕方ありません。もう少し涼しくなってくれたらと思います」


「ほうほう」


「・・・・・・いや、ほうほう、じゃないですよ。獣人族さん、そんなことじゃなくてですね・・・・・・もっと、理念的なものを聞きたいんですよ」


「理念的ですかぁ・・・・・・う~ん、難しいですね。我々は本能に従って生きていれば、それで幸せですから、特に何もないですね」


 本能に従って生きている狼男がコンビニの店員をするのか・・・・・・ん? そもそも、コイツ等の本能って何なんだ?


「本能に従って生きるとは、どういうことでしょうか?」


「それはすなわち、衣食住を満足させるということです。そのために私はコンビニの店長をしております」


 しかも店長なのか・・・・・・う~ん、しかしコイツの言うことは的を射ている。衣食住の満足--最低限の生活保障--!? 社会保障か!


「ありがとうございます! 大変参考になりました!」


 俺は深々と頭を下げた。


「いえいえ。ところであなたは、アデル様の新しい奴隷ですか?」


 ・・・・・・まずは、奴隷制度の撤廃からか--

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