8 理想の魔界
「マジかよ・・・・・・」
俺は自分の置かれた立場を呪いたくなった。何で俺が魔界のこの先の運命なんぞ担わねばならんのだ--お前等で勝手に決めればいいだろう。
「おいコウイチ、『憲法』と『マニフェスト』、どっちを先に作ったらいいんだ?」
「え・・・・・・?」
アデルが真剣な目で俺を見つめてくる。もう、こうなったら仕方がない--『憲法』だろうが『マニフェスト』だろうが完璧に作ってやる!
「どちらが先に・・・・・・というより、今回は『憲法』の内容が『マニフェスト』になると思います。『憲法』の内容で、選挙の勝敗が決まるって感じかな・・・・・・」
「じゃあ、憲法を作ったらいいんだな?」
「まあ、そういうことっすね」
「どんな内容にする?」
「えっ!? 俺に聞かれても・・・・・・魔界の住人たちが、これからの魔界に何を期待しているのか、理想的な魔界像としてどのようなものを描いてるのかってことが分からないことには・・・・・・」
「『理想的な魔界』?」
「そうです。憲法は国の理想を形にしたものなんです。日本国憲法なら『個人の尊重』がそれです」
「『個人の尊重』? 何だそれは?」
「人はそれぞれ違う--だからこそ、その一人一人を大切にしようという考え方です」
「ふ~ん。で、理想は実現できているのか?」
「残念ながら・・・・・・イジメ問題なんかも無くなりませんしね」
「そんなものなんだな、憲法って」
アデルは不服そうに口を尖らせ、大きくため息を吐いた。
そんなに落胆されると、日本人として何だかやるせない気分になる。
「まあ、日本の話は置いておいて、魔界の話ですよ。魔界の住民受けがよさそうな『理想の魔界像』を考えて見てください。こればっかりは俺には無理っすよ」
「う~ん・・・・・・そう言われてもなぁ」
アデルは眉間に皺を寄せてうんうん唸っている。
「聞いてみないことには分からん。コウイチ、一緒に魔界に聞きに行こう!」
「はぁ!?」