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5 マニフェスト、作りましょう

「さて、選挙まで時間がないし、とっとと選挙の極意を教えてもらおうか!」


 アデルは立ち上がり、大声を出す。もうそろそろ、マンションの管理人から苦情を受けそうだ。


「時間がないって、選挙はいつ開催されるんすか」


「分からん。だが父上は『近いうちに』と言っていた」


「・・・・・・長くなりそうっすね」


 現魔王は日本のワイドショーでも見ているのだろうか。


「とにかく! 俺は、ちゃんと選挙で勝利を収め、魔王として魔界を支配したいんだ! 早く選挙の極意を教えろ!」


「極意ねぇ・・・・・・」


 そう言われても、日本の選挙制度を取り巻く社会と、選挙を初めてするという魔界とでは勝手が違う。しかも、日本の選挙や政党、政局に対する国民の見方もここ数年で大きく変化しているのだ。こうすれば絶対に勝てるなんて、簡単な方法がある訳でもない。


「そうっすね・・・・・・まずは『マニフェスト』を作ってみたらいいんじゃないですか?」


 これは最低限必要なことだ。


「まにふぇすと? 何だ、それは?」


「『マニフェスト』というのは、選挙公約のことです。自分が首長になったら、どういったことをするのか、どう社会を変えていくのかということを、約束としてまとめたもののことです」


「約束か。それを守らなかったら、どうなるのだ?」


「どうなると思います?」


「死刑か?」


「ないっすね・・・・・・」


「では、私刑リンチの方か?」


「それもないっすね」


「じゃあ何だ? 約束違反にはどのような制裁があるのだ?」


「何もないんですよ」


「は?」


 アデルはキョトンとしている。


「『マニフェスト』通りに政策を実行しなくても、何のペナルティもないんですよ」


「それはおかしいだろう!」


「おかしいんですけど、それが人間社会の『マニフェスト』なんです。ただ、何もないとはいえ、その政党の信用は低下しますから、次回の選挙に不利になるんですよ」


「ふ~ん、じゃあ選挙で勝った後に、次回の選挙は未来永劫なし、というお触れを出せばいいんじゃないか?」


「それは無理なんです。憲法って言う、国会議員の定める法律よりも強い法律があって、選挙が定期的に行われることは決まっているんです」


「そうなのか、だが魔界には憲法はないぞ?」


 そりゃそうだ--これはちょっとややこしいな。


「じゃあ、まず魔界の統治システムと次回開催される選挙のルールを教えてください。でなければ対策もできません」


「おう! 任せておけ!」


 アデルはどんっと胸を叩いた。

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