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2 魔界で総選挙 

「うん・・・・・・ごめん、頼むよ。うん、絶対埋め合わせはするから。え? 大丈夫だよ、多分・・・・・・じゃあ、よろしく」


 魔王の息子を座布団に座らせ、お茶を出した俺が次にしたことは、友達への電話だった。とにかく今日は、学校なんかに行っていられない・・・・・・玄関のドアは壊れたままで空き巣に入られかねないし、業者も呼ばなければならない--そして何より、この意味の分からない悪魔をどうにかしなければならない--


「おい、早くしろ。俺様を待たせるな」


「あ、はい・・・・・・」


 また家を壊されてはたまらないので、かなり癪ではあるが低姿勢になってしまう。俺はそそくさと魔王の息子の前に座った。


「あの・・・・・・」


「ん? 何だ?」


「いや・・・・・・あの、俺に何の用ですか?」


「はぁ!?」


「いや! すみません、すみません!」


 ギロリと獰猛な爬虫類のような目を向けられる。全身からはまたあの紫色のオーラだ・・・・・・やはりコイツは悪魔なんだ--俺は本能的にこの非現実を受け入れた。


「俺様は最初に用件を言ったはずだ、何度も言わせるな」


「あの、『魔王にしろ』と、言うやつですか?」


「何だ、覚えてるじゃないか!」


 悪魔は今度はキラキラした目を俺に向けた。その表情だけを見れば、俺より少し年下の無邪気な普通の少年のように見える。あくまでその表情だけを見ればだが--


「魔王になりたいんだ! だから、選挙で勝つ方法を教えてくれ!」


 悪魔は角のある頭をズイと、こちらに突き出す。てか、魔王? 選挙? 魔王っていうのは、力ずくでなるもんじゃないのか? まぁ、ゲームの中のイメージでしかないが。


「あの、お言葉を返すようですが、魔王というのは他の魔族かなんかを力ずくで屈服させたりしてなるもんじゃないんでしょうか? 人間の世界とは違うと思うんですけど・・・・・・」


「何を言っているんだ! 人間の世界でも選挙で『最高権力者』を選ぶようになったのは、ここ二、三百年のことだろう! それまでは魔界と同じように殺し合いで決めてたじゃないか!」


「はぁ・・・・・・まあ、言われてみればそうかもしれませんけど」


「俺様は選挙の先進社会である人間界に、選挙の極意を学びに来たんだ!」


「魔界でも選挙があるんですか?」


「ふん・・・・・・よく聞いてくれた。これから我が世界の事情について説明するから、しかと聞くがいい!」


「・・・・・・」


 それから、魔王の息子--アデルの魔界談義が始まった。アデルによると、父親である現魔王が急に選挙で次の魔王を選ぶと言い出し、『近いうちに』第一回魔王総選挙が開催されることになったのだとか--魔王の息子として魔力、武力の向上に努めていたアデルにとっては、正に寝耳に水だったらしい。次期魔王最有力候補から、一転タダの候補者に転落してしまったアデルとしては、何としても選挙で勝利を収め、次期魔王の座に着きたいということらしい。


「でも、何で日本の選挙を学ぶんですか? 選挙だったら、イギリスとか、アメリカとか、欧米の方が元祖って感じなんですけど」


「これが父上の机の上に置いてあった--」


「--?」


 アデルは目の前のローテーブルに一冊の本を置く。そのタイトルは--


「『AKB総選挙完全マニュアル』・・・・・・」


 終わったな、魔界--

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