180話「Stage1 超蛍火の行方 (サイド・魔理沙)」
妖怪が潜むなら森の中はうってつけだ。私は甘い匂いを頼りに異変の犯人を探していく。紫の話が本当なら、犯人はこの瘴気をばらまいているはずである。匂いの強い方向を探していけば見つかるかもしれない。
それにしても今日はスカートの中がスースーするのだが、なぜだろうか。
「おっ、なんかあいつら怪しいな」
木々の間を高速で移動している妖怪の集団を発見する。私はすぐにその目標に向かって接近した。
「おい、お前たち。そんなに急いでどこに行く気だよ?」
「ああ? なんだテメエは。ガキは帰って寝ろ!」
その五人組は私の見知った妖怪ばかりだ。ただ一人、ドラム缶を背負った不審な少女だけは知らない奴だった。質の悪い香水を全身に浴びせたような、強烈な匂いを放っている。
「お前が異変の首謀者みたいだな! 退治してやるから覚悟するんだぜ!」
「……気に食わねえ。その口調が気に食わねえ。俺とキャラがかぶってんじゃねえか! だが、お前なんかに構っている時間はねえんだ。リグル!」
敵の大将は蛍妖怪リグル・ナイトバグを残して私を足止めする気らしい。そうはいくかよ。狙うなら本丸。ここで逃がすつもりはないぜ。
「うおおおおおおああばばばばばばあ!!」
しかし、ドラム缶妖怪を追いかけようとした私の背後で強大な妖力が膨れ上がる気配を感じ、戦慄する。そこにいるのはリグルのはずだ。だが、信じられない。この威圧、本当にあのリグルのものだというのか。
「これで終りだ乙羅殺法五式奥義蟲魂突貫殺法おおおお!(早口)」
以下超速思考。
振り返った私の目に飛び込んできたのはリグルの飛び蹴りただの蹴りではない己の出せる全力を搾り尽くして練りだされた一撃であった余力を残そうとか様子を見ようとか駆け引きをしようとかそんな後先のことなど一切考えていないその一撃が最初で最後の攻撃なのだと肌で感じたリグルの蹴りの軌道に流星のような光が走る油断していた相手は所詮あのリグルだとタカをくくっていたその隙を突いての不意打ちしかも初手から最大威力必殺技を使うという戦いの流れ完全無視の暴挙だ回避は間に合わないだがこのまま無様に倒されるわけにはいかない後手に回ろうとも私は魔法を発動させる。
「ラストワード『ブレイジングスターぶほおおおおっ!!(早口)」
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第1回戦 リグルVS魔理沙 引き分け(両者全身強打により戦闘不能)