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159話「妖怪業務説明会」

 

 ルーミアに脱衣野球拳を教えて遊ぶことにした。視聴者の皆さん、サービスタイムですぞ。

 第一回戦、開始。

 

 「アウトー」

 

 「セーフー」

 

 「「よよいのよい!」」

 

 俺、グー。

 ルーミア、パー。

 

 「うおお! 負けたー!」

 

 俺は羞恥心に悶え苦しみながらベレー帽を脱ぐ。ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべるルーミアの前に、俺のウサ耳が晒された。

 み、見られてる。ちくしょう! 恥ずかしいはずなのに、なんだこの感覚は……ビクンビクン!

 最初から帽子以外に脱ぐ物がない俺は、早くもルーミアに完全敗北した。

 

 * * *

 

 「チャーハンできたアルヨー」

 

 「んー」

 

 美鈴が料理をちゃぶ台に並べていく。先日の自転車騒動でみすちーは現在、料理をするどころの状態ではないため、代わりに美鈴が道場の飯当番をしているのだ。俺は漬物しか作れないし、リグルはサラダしか作れないし、チルノはかき氷しか作れないし、ルーミアは暗黒物質しか作れないので。

 美鈴の中華料理は、まあまあうまい。というか、毎日チャーハンだ。ちょっと飽きた。まあ、作ってもらう立場で文句は言うまい。不味くないだけマシだ。

 

 「いただき……」

 

 テケテン!

 そこで俺の頭脳に電撃が走った。コナン君のひらめきシーンみたいな感じで。俺の『百見心眼』が何者かの視線を感じ取った。

 異常はすぐに目に見える形で現れる。食卓の中央に置かれた、チャーハンの入った中華鍋。それが一瞬で消えたのだ。

 原因はスキマだった。中華鍋の下にスキマが開き、その中へスポッと落ちてしまったのだ。こんなことをする奴はあいつしかいない。

 スキマからは鍋の代わりにチラシが吐き出された。そしてスキマは跡形もなく消えた。俺はチラシを手に取る。

 

 「なになに……妖怪対象・博麗大結界に関する業務説明会。主催、八雲紫。日時……今日の夜かよ! しかも、注意事項に大妖怪は絶対参加って書いてあるし」

 

 胡散臭いことこの上ない。かと言って行かなかったら、それはそれで面倒なことになりそうな気がする。わざわざこんな物を届けに来たということは、俺に参加しろと言いたいのだろう。気は乗らないが、行くしかないか。

 

 「いや、それよりもチャーハン返せよ!?」

 

 * * *

 

 夜。草木も眠る丑三つ時。どこからともなく集まった人外たちが、妖怪の山へ向かっていた。それもそのはず、幻想郷一円を取り仕切る妖怪の賢者、八雲紫の召集である。決してニンゲンは踏み入ることができない、世にも恐ろしい集会が開かれようとしていた。

 そんな妖怪たちの列に混じり、俺とリグルは気の進まない足取りで歩いていた。あと、美鈴もいる。

 

 「なんで僕も行かなきゃならないんですか」

 

 いつもならイベントがあると我も我もとはしゃぐうちの道場生も、今回はその限りではない。八雲紫の名前には誰もそれなりのトラウマがあるので、同行に難色を示したのだ。

 だが、俺一人で行くのはつまらないので、強引に誰か連れて行くことにした。みすちーは安静にしておいた方がいいので除外。チルノとルーミアは、説明会とか趣旨が理解できなさそうなので除外。そこで、弟子たちの中ではかろうじて唯一のツッコミ属性を持ち、冷静な判断ができるリグルを連れてきたわけだ。

 ちなみに、俺はいつもと違ってちゃんと服を着ている。さすがにフォーマルな場だからね。

 

 「ヨウリサン、なんで元気ないカ?」

 

 「お前は紫と面識ないからな」

 

 特に紫との絡みがなかった美鈴は平気そうだ。俺とリグルは美鈴を挟む形で歩いている。俺は、はぐれないように(という建前で)美鈴と手をつないでいた。長身でナイスバディの美鈴の隣に並ぶと、俺やリグルはまるで引率される幼女。さぞや微笑ましい光景だろう。げひっ。

 会場となるのは山のどこかにあるあばら家だ。その周りにうじゃうじゃと妖怪たちが集まっていた。

 

 「はー、こうして見ると凄い数の妖怪がいますね。強そうなのがいっぱいですよ」

 

 「そうか?」

 

 人妖大戦とか月面戦争のときと比べれば……おっと、年寄り臭い懐古はやめるか。今は今、昔は昔だ。

 

 「それにしてもぎゅうぎゅう詰めじゃねぇか」

 

 おさわりし放題なのはいいが、肝心の可愛い娘がいなくては無意味。暑苦しいだけだ。

 どこかにおちちつける……落ち着ける場所がないか探していると、このごみごみした中に一ヵ所だけぽっかりと穴があくように誰もいないところがあるではないか。

 

 「あそこに行ってみようぜ」

 

 「そうですね」

 

 俺たちは人ごみをかき分け、スペースが空いている場所へと移動する。そこには風見幽香がいた。

 

 「ヒィオッ……!?」

 

 脳がその姿を認識した瞬間に、『虚眼遁術』を発動していた。リグルはすぐに美鈴の背後に隠れた。びっくりした。こんな精神的ブラクラはよくない。いくないよ!

 なぜここに半径4メートルの円形スペースができているのか、瞬時に理解する。周囲に喉が渇くような殺気を放つゆうかりんだったが、ふと、何かに気づいた様子でこちらに視線を向けた。

 お、俺の方を見ている? いや、バレるわけはない。俺の『虚眼遁術』は完璧だ。完全にここら一帯の全ての『注目』は把握できているはず。

 ゆうかりんは殺気をおさめると、優しい笑顔になり、こちらに手を振っていた。

 俺は全身全霊でその場から逃げ出した。

 


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