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149話「この先生きのこるために」

 

 「シャンハーイ!(訳:お前ら誰だー!)」

 

 「これが魔女の人形……アタイには見えるわ、魔女に葬られた亡霊たちの怨念が……!」

 

 人形はふよふよと宙に浮いている。チルノのたわごとはともかく、全然不気味ではなく、むしろプリティーなのだが。

 

 「なるほど、さしずめこの場所の番人といったところか。まぁ、弱そうだし、簡単に倒せ……ぐっ!?」

 

 だがそのとき、俺の体に異常が起きた。急に激しい熱を体内で感じる。不自然な発汗、めまい、動悸、息切れ、手足のしびれ、痙攣が発生する。

 

 「ぐうっ! 体が熱い……! 気をつけろ、あの人形、何かの術を使っている!」

 

 「そ、そうなの? アタイは何も感じないけど」

 

 「シャンハイ?(訳:何言ってんだコイツ?)」

 

 まさか俺に気づかせずにこれほどの術を使うとは。油断してしまった。相手はかなりの手練れだ。俺の醜態を待っていたかのように人形の攻撃が始まる。

 

 「な、なにぃ! 分身しただと!? 4体……いや、6体、人形の姿が増えていく!」

 

 「落ち着いてください! 分身なんてしてませんよ!」

 

 「シャンハイ?(訳:具合悪いのか?)」

 

 おそらくこれは幻覚。『百見心眼』を使いこなす俺にここまで完璧な幻術をかけることができるとは、恐れいったぜ。

 

 「これは久しぶりに全力で闘える相手だということか。いいだろう……乙羅暗殺拳師範、乙羅葉裏の力、魅せてやりぉおおおぉうおぁお!!」

 

 狂気発散。本気モードで闘うことになるとは思わなかったが、面白い。逆境こそ俺の起爆剤だ。今の俺は、最高に昂っている!

 

 「まずい、師匠がおかしくなってる!」

 

 「それはいつものことじゃない?」

 

 「あ、もしかしてさっきのキノコの毒に中ったとか……」

 

 「「それだ!」」

 

 「ぬぁぁおおお! 殺法『黒兎核狩』!」

 

 俺は人形に向かって走り出す。分身してくるくる回転しているが、一人残さず殴り飛ばせば倒せないことはない。

 

 「師匠、いったん冷静になりましょう! キノコの毒で変になってますよ!」

 

 「『黒兎核狩ラッシュ』!」

 

 「ちょ、何でボクの方に向かってきぶぐしゃ!」

 

 殴る殴る、とにかく殴る。相手に反撃の隙を与えない。これは葉裏選手一方的だー!

 

 「オラオラオラオラ!!」

 

 「ギャアアアア!!」

 

 「オラーッ! ……ふぅ、これだけやればさすがに倒せただろ……!? リ、リグル!? なぜお前がボロボロに!?」

 

 あ、ありのままに今起こったことを話すぜ! 俺は人形を殴りまくったと思っていたら、いつの間にかリグルがズタボロになっていた。な、何を言って(ry

 俺は戦慄した。敵とリグルの位置がすり替わった瞬間が全くわからなかった。

 

 「リグルが再起不能になったのは別にいいとして」

 

 「……DEATH……よ……ね……」(ガクッ)

 

 「まさかこれほどの強敵に出会うことになるとはな。お前の名は何だ?」

 

 「シャンハーイ(訳:何で仲間ボコッてんだよ。頭おかしくね?)」

 

 「そうか、シャンハイか……お前を侮ったことを詫びよう。そしてここからは全力の闘いだッ!」

 

 『黒兎空跳』、『黒兎核狩』。俺は体を蝕む不調さえ燃料にして、熱に浮かされたように連続攻撃を繰り出していく。

 

 「めくらめっぽうに暴れだしたのだー!」

 

 「ひええぇ! もう見境がないですぅ!」

 

 「完全に錯乱してるわ!」

 

 「シャンハーイ!(訳:こっちくんな!)」

 

 だが、俺の攻撃はただの一度もシャンハイに当たらない。このままでは埒があかない。

 

 「やるな! だがまだまだ! 行くぞ、乙羅殺法ニ技連結奥義……!」

 

 「まずいわ! 師匠が本気を出そうとしてる! 止めるわよ!」

 

 そこでなぜかこちらに敵意を持って向かってくる弟子たち。シャンハイの幻術に惑わされたか。

 チルノが、しゃがんだみすちーを踏み台にして高く飛び上がった。そこから繰り出される渾身の飛び蹴り。シャイニングウィザードか!

 

 「おねがい師匠、目を覚まして!」

 

 「愚かな! そんな大振りの技、見え見え……」

 

 おっ、チルノのぱんつも見え見えだ。

 

 「しまった! 避けられない!」

 

 顔面にチルノの足裏がめり込んだ。なすすべなく後ろに倒れこむ。

 そこにすかさずルーミアとみすちーが走り寄ってくる。二人は俺のサイドポジションを取り、両脇から挟み込まれた。

 そして、二人同時に左右からの腕ひしぎ十字固め!

 

 「師匠、しっかりするのだー!」

 

 「葉裏さん! お気を確かに!」

 

 「な、なんのこれしき……」

 

 俺のゴーレムハンドのパワーをなめないことだ。腕を抱え込まれたところで俺の怪力をもってすれば簡単にこんなホールド、抜け出せ……

 

 ふよんっ

 

 今、俺は美少女二人から腕を股に挟まれて太ももを押し付けられている。ここは天国か。

 

 「しまった! 抜け出せない!」

 

 ミシミシと音を立てて引き伸ばされていく俺の腕。さらに追い討ちをかけるようにチルノが俺の右脚に組みつく。情け容赦ない膝十字固め!

 

 「師匠! すぐ楽にしてあげるから!」

 

 「おい、まて、さすがにこれはイテテテテ! ギブギブギブギブ!」

 

 タップアウトも許されない鬼畜外道のサブミッション地獄。筋肉がブチブチと断裂し、関節が逆方向に曲がっていく。

 だ、ダメだ。こいつらマジで俺を壊しにかかっている。

 

 「師匠!」

 

 「師匠!」

 

 「葉裏さん!」

 

 「もっ、もうらめぇぇぇ! いっちゃうぅぅぅぅ!」

 

 バキッ!

 

 グシャ!

 

 メキッ!

 



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