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141話「アイキャンフライ」

 

 記念すべき長時間飛行は万全の準備の上で臨みたい。そこで、サポートキャラとしてみすちーを同行させることにした。ルーミアは間が抜けたところがあるし、チルノはこの場にいない。美鈴は……気安く頼めるほど気のおけない関係では、まだないかな。

 リグルは能力的には問題ないと思うが、こいつと一緒にいるとどうも不幸が舞い込む気がしてならない。俺のラック値が大幅低下するのだ。

 

 「僕のせいにしないでください! 原因作ってるのは確実に師匠ですから!」

 

 何をむきになっているのやら。

 そう考えると、消去法でみすちーしか残らない。ほがらかな性格で気配りができて料理もうまい。暴走さえしなければ、これほどサポーターとして適性がある者はいないだろう。

 

 「わかりました。よろしくお願いしますね」

 

 「決まりだな。ではいよいよフライトだ」

 

 俺は凧に乗り込む。しかし、そこで気づいた。これどうやって操作するんだ。いけね、にとりに聞くの忘れた。ま、いいか。見た感じ、そう難しくはなさそうだし、やりながら覚えよう。和製アサシンのモットーは習うより慣れろ、慣れるより舐めろである。(何事にも最初からなめて取り組むくらいの余裕を持て、の意)

 

 「えーっと、これがエンジンか? ……おお、入った入った」

 

 スターターの紐らしきものを何度か引っ張ってエンジンをかける。ばるばるとうるさい音を立てて微量の煙が上がった。

 

 『搭乗確認……ヨウコソ! コノタビハ スカイグライダーQ ヲ ゴ使用イタダキ マコトニアリガトウゴザイマス』

 

 「うおっ!? しゃべった!?」

 

 音声案内までついてるのか。さすが高性能だな。

 

 『安全ナ飛行ヲ オ楽シミイタダクタメニ 以下ノ場合ノゴ使用ハ オヤメクダサイ 1.雨天時ノ使用 2.風速10m/s以上ノ……』

 

 「ちっ、説明が長くなりそうだな。スキップボタンはないのか?」

 

 『スミマセン』

 

 会話が成立した!? いくらなんでも高性能すぎないか。中に妖精とか入ってんじゃねぇだろうな。

 

 『右レバーハ 機体ノ操縦ニ使イマス 上下デ高度 左右デ旋回ガデキマス 左レバーハ エンジンノ出力ヲ調整シマス ソレデハレバーニ 手ヲ置イテクダサイ』

 

 もうこれ凧じゃない気がしてきた。だが、要は空を飛ぶことができればそれでいいのだ。細かいことはこの際、考えないようにしよう。

 俺はレバーを強く握る。

 

 『固定ベルトヲ 着用シテクダサイ』

 

 先に言えよ。体を機体に固定するベルト、車で言えばシートベルトである。勝手がわからないながらも、みすちーに手伝ってもらってそれを装着する。

 

 『キチント 着用シテクダサイ』

 

 「ちゃんとはめただろ」

 

 『カチット 音ガスルマデ差シ込ンデクダサイ』

 

 いちいち注文の多い奴だ。しかしむやみやたらに試行錯誤するより、マニュアル通りに従った方が断然安心できるか。

 

 『右レバーハ 機体ノ操縦ニ使イマス 上下デ高度 左右デ旋回ガデキマス 左レバーハ エンジンノ出力ヲ調整シマス ソレデハレバーニ 手ヲ置イテクダサイ』

 

 「……」

 

 このスゲーいらいら感はなんだろうか。一瞬、ぶち壊したい衝動に駆られたが、何とか抑えて指示に従う。そしてようやく使い方がわかってきた。

 

 「よし、テイク・オフ!」

 

 機体を支えて湖の縁を走る。エンジンが起こす風が背中を押して速度が上がる。揚力が翼を押し上げた。足が地面を離れ、ぐんぐん上昇していく。やった! 飛んだぞ!

 こうして俺は水陸空の三空間に対応するカメ妖怪となったのである。

 

 * * *

 

 紅葉に色づいた森の上空を悠然と移動する一つの影。俺だ。風を切って空を飛ぶ感覚というのは気持ちがいい。「黒兎空跳」では狂気の侵食による時間制限のせいで、ゆっくりと飛行を堪能する暇も景色を眺める余裕もないのだ。

 

 「空を飛ぶというのは、いいものだな、みすちー」

 

 「ふふ、はい、そうですね」

 

 凧の操作にはもう慣れた。そこまで複雑なコントロールは必要ない。感覚をつかめば楽なものだ。

 そういえば、操縦レバー以外にも色々部品がついているのだが、これは何だろうか。上部の収納棚を開ける。

 

 「お、備え付けの機関銃か。戦闘機かよ」

 

 『対鬼用殲滅小型機関銃デス』

 

 「ぶっ!?」

 

 鬼って、あの鬼!? 萃香とか勇儀とか、あんな規格外たちを殲滅する威力を持っているというのか。恐ろしいな河童の技術力は。試し撃ちしたらうっかり森が消し飛びそうで怖い。これは奥の手にしよう。

 

 「こっちの棚にはキュウリが入ってる。気がきくじゃないか河城屋のやつ。ほれ、みすちーも一本どうだ?」

 

 「あ、いただきます」

 

 俺たちはキュウリをポリポリ食いながら空を行く。さて、のんびりするのもいいが、本題にも取りかからなければなるまい。俺が飛んだ理由は、弾幕ごっこをするためである。実は弾幕ごっこの詳しいルールを知らない。俺が話に聞いた情報から推測したところ、妖力弾だけに攻撃手段を絞った熱い漢女のぶつかり合いだと思われる。同じ漢女としてこれは参加せずにはいられない。

 類は友を呼ぶ。このたぎる漢女スピリットを持つ者同士は必ず引き合うことだろう。来るがいい弾幕の戦士たちよ。血に飢えた我が愛機の糧としてやるぜ……

 



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