表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/195

129話「宝の在処」

 

 「てか、お前の名前何だよ。俺は乙羅葉裏。呼ぶときは葉裏でいいぞ」

 

 「名前ね……僕のことは好きに呼んでもらって構わないよ」

 

 言いたくないのか、男は自分の名前を明かさなかった。

 

 「じゃあ、行き倒れマンで」

 

 「別のにしてくれ」

 

 好きに呼べと言ったのに注文が多い奴だ。なら、森に倒れていたから森助と呼んでやる。

 

 「安直だね。まあ、それでいいよ」

 

 ついでに他の道場メンバーのことも紹介しておく。

 

 「アタイはチルノ! サイキョーの妖精よ。その正体はかつて神話世界にその名をはせた(以下略)」

 

 「あ、リグルです。Gじゃないですから。よろしくお願いします」

 

 「ルーミアなのだー。ノンケでも構わず食っちまうルーミアなのだー」

 

 「……なるほど話には聞いていたが、幻想郷では常識は投げ捨てるものということか……」

 

 互いの自己紹介も終わったところで早速、本題に入る。

 まずは契約事項の確認だ。俺たち道場勢は森助の宝探しに協力するその見返りとして、発見した宝の公平な分配を要求した。

 

 「それだと一人あたり六分の一の計算になる。地図を見つけて情報を提供した僕としては納得できない数字だ」

 

 しかし森助は異を唱えた。それからしばらく論議したが、結局言い負かされて取り分は森助と俺たちで半々ということに決まる。舌戦ではこちらが不利か。ない脳みそが四つ集まってもバカであることに変わりはない。

 ふん、いいさ。お宝さえ発見できれば森助は用済みだ。最後の最後で全部ぶんどってしまえばいいだけの話である。

 

 「それじゃ、肝心の宝の地図を見せてくれ」

 

 「ああ、これだよ」

 

 そう言って森助は居間のちゃぶ台に紙を広げる。そこに描いてあるものを見て首をかしげた。いや、描いてあるというより“書いてある”と言った方がいい。

 

 「なんだこれ。地図じゃねーじゃねーか」

 

 「うん、正確には宝の地図じゃなくて『宝の在処が示された書』だ」

 

 それはまた面倒な。地図ならだいたいの場所がわかるので、後は指定された周辺を探していけばいいだけだ。しかし、文字で書き表されているとなると解読が必要となる。

 ひとまず何と書いてあるか読んでみよう。

 

 ――――

 

 幻が集う地に宝あり

 

 神の甲羅を砕いて進め

 

 死人の横穴をふさぐ龍

 

 妨げる者を通す

 

 地より出で迷い人の家で休む

 

 後は鶴が見下ろす木の根を掘るべし

 

 この世のものとは思えぬ素晴らしき宝が埋まる地なり

 

 ――――

 

 達筆で読みにくかったが、意味は取れた。でも意味わからん。

 

 「この書は名のある大妖怪が記したとされている。その内容は婉曲的で判然としない。あえて宝の場所をごまかすことで簡単には探しだせないように工夫しているんだろう」

 

 「お前は道具の使い方がわかるんだろ? だったらこの地図の意味もわかるんじゃねぇか?」

 

 「いや、僕にわかるのは道具の『名前』と『用途』だけだよ。この書の名前は『宝の在処が示された書』、用途は『隠された宝を見つけ出す手がかり』だ。それ以外のことはわからない」

 

 役に立たん。ナズーリンと寅丸がいれば一発で見つけだせそうなんだけど。

 

 「とにかく考えるしかねぇ!」

 

 じっくり考察していけば答えが見つかるはずだ。少なくともこの情報がデマカセではないという確証があるのだから、時間をかけて考えればどうにかなる。

 

 「まず一文目から順に考えていこう。『幻の集う地に宝あり』……はっ、わかったぞ! 幻が集う地とは幻想郷のことだ!」

 

 「それは僕にもわかった。じゃなきゃ、ここに来てない」

 

 「二文目は『神の甲羅を砕いて進め』。甲羅ってまさか……」

 

 「何か思い当たることでもあったかい?」

 

 「ないない。全然ない」

 

 森助がうるさいから気が散って解読が進まなかった。結局、判明したのは最初の文と最後の文の意味だけだ。この世のものとは思えないほど素晴らしい宝があるらしい。何としてでも見つけ出したい。

 

 「現地に住んでいる妖怪なら何か心当たりがあるかと思ったんだけど、君たちでもわからないみたいだね」

 

 「こういう頭脳労働は俺の仕事じゃない。もっと頭のいい奴に任せるべきだ。そこで特別に強力なお助けキャラを召喚してやろう。野郎ども、儀式の準備だ!」

 

 「あれを……する気ですか……」

 

 「異論は認めん。すぐに取りかかれ」

 

 リグルとチルノとルーミアが表情をこわばらせる。しかし俺の放つプレッシャーに耐えきれなくなったのか、しかたなく動き始める。

 

 「「「さいしょはグー、ジャンケンポン!」」」

 

 リグル、グー。チルノ、パー。ルーミア、パー。

 よって敗者、リグル。

 

 「い、いやだ! もうあんなのやりたくないよお!」

 

 「往生際が悪いぞリグル! ルーミア、強制脱衣敢行!」

 

 「了解なのだー」

 

 ルーミアがリグルの服を瞬く間に脱がしていく。俺とチルノはタンスから引っ張り出した服をリグルに着せていく。

 リグルは紫色のフリルたっぷりドレスを着て、頭には金髪のロングヘアーかつらをかぶせ、その上にドアノブカバー帽子、手には白い長手袋、そして日傘と扇子を持つという完全武装に。

 ここまで来ればわかるだろう。この服装は八雲紫と全く同じデザインである。みすちーと俺が共同開発した。自由奔放なスキマ妖怪を呼び出すために最も効果的な方法が、この服を着た状態で行われる儀式なのだ。

 

 「はい、本番5秒前! 5、4、」

 

 3

 

 2

 

 1

 

 リグル「幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ。(ドヤァ)」

 

 まいったねこりゃ。「ゆかりんモノマネ大会」グランプリはリグルはんで決まりやで。嫌だ嫌だと言いながらもやり遂げるその役者魂に脱帽です。

 その直後、リグルの足下にスキマが開く。

 

 「ですよね」

 

 リグルきゅんボッシュート。そして、ゆかりんフィーシュッ!

 俺のターン! リグルを生け贄に捧げ、ブルーアイズホワイトユカリン召喚!

 しかしトラップカード発動! 俺の足下にもスキマが開く!

 

 「アラーッ!?」

 

 * * *

 

 ただいま、俺とリグルがスキマ式回転妖怪洗濯機で浄化中です。しばらくお待ちください。

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ