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異世界と私と時々ウサギ  作者: 酢昆布
第一章 異世界
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アルデール王子

ーーー点線のしたからイシュ目線です。

「イシュさ、「イシュだ。」

「イシュ.........さ「かおる」


というやり取りを何度繰り返した事か。恥ずかしさで35回は死ねる。とは言ってもなんとか慣れた。なんとかイシュをイシュって呼べるようになったし、敬語もとれた。馬車にいた時間なんて短いけど、そんな時間で負けたのか自分ってちょっとなさけなくなる。


満を持してガラガラと止まった馬車から一刻も早く折りたくて、そわそわと腰を浮かすと、イシュに手首を掴まれる。


「離れるなと言っただろう?」


そのまま手を絡めとられるけど、えっそんな.....!離れるってイシュ…たかが3mぐらいじゃないですか…!離れるなとは言われた、馬車に乗ってから確かに言われたけど、先に降りるのもだめなの?むしろ城ってそんなに危険な所なのか。というか今は!自然に繋がれた手を意識しないので精一杯です!!!


繋いだ手はそのままに馬車から降りて、お城の正面入口みたいな所にむかって歩き出す。御者さんにお礼を言うのも忘れない。正直手をつないでるのは恥ずかしいけど、ここはイシュのホームグラウンドだし、確かになにがあるか分からないんだからおとなしくしてる方がいいだろう、なんて考える。


「ねぇねぇイシュ。お城には王子様とかもいるの?」


「…いる、気になるのか」


ちょっとした疑問だ。心なしかイシュが不機嫌になった気がするけど、王子様がいるっていう方に私の興味は傾いた。いいないいな王子様!王子様が住んでるお城なんてものは日本にはないし、やっぱり女の子は憧れるよね!もしかしたらすれ違っちゃったりして!なんてそんなことを考えるけど、王子様なんてそんな簡単に会えるはずもないので、これは自分の胸にしまっておく。


入口から入ると広がるのは、白い柱に支えられた大きなホールだった。左右にたくさん扉があって、たくさんの人が出入りしてる。てっきりそこを進んで行くのかと思ってたんだけど、イシュはすっと横道に入って、私を裏庭らしき、城にそってゆるゆると続く細い庭に連れ出した。なんで裏庭だと思うのかって?さっき馬車で見たからです。正面にある大きな大きなお庭を。


裏庭と言ってもきっちり手入れがされていて、バラが咲き誇っていてとても綺麗だ。ぽかぽかして気持ちいいし、今日はお散歩日和だな....また気持ちいい風がふいて、私の髪をゆらした。お仕事行かなくていいの?とか気になるけど、私をひっぱって歩き続けるイシュはそんなこと気にもしなさそうだ。イシュと他愛もない話をしながら歩いていると正面から歩いてくる人が見えた。近づくまでもなく目立つ。し、よく見える。銀髪碧眼で顔立ちが恐ろしく整ってるひと。髪の色からなにまで、全部やっぱり異世界で、会う人会う人知りたくなる。


「ねえねえ、イシュ、正面から来る人は誰なの?」


興味にかられて、繋がれた手をくいっと引く。イシュはもうその人に気がついていて、いかにも嫌そうに呟いた。


「……………王子」


あー、そっかー王子かーって!えっなに?王子?ほんとに?嘘でしょ?冗談でも会えるわけないとか思った王子様にこんなに簡単に会えるなんて、私が混乱するの悪くないし、そんなこと言ってる間に王子様はどんどん近づいて来て、それなのにイシュは頭ひとつ下げないし、敬意を払う様子もないし、こっちの世界の常識なんてしらないから頼れるのはイシュしかいないのに....!少なくとも私の世界では王子様っていったら敬意を払うでき対象だったから、ぴくりとも動かないイシュを見て混乱した私はもう間近に迫って来た王子様に気付けなかった。


「イシュが女性を連れているなんて珍しい。そちらのお嬢様、お名前は?」


海のような青い目をひゅるりと細めて笑う姿は、なんだかとても惹かれるものがあって、ってぎゃーーーーー!頭下げるの忘れた!どうしようどうしよう、隣にいるイシュを見るとこれ以上ないくらい顔をゆがめてるし、足もとはってえええええーーーーーーー!王子様の足!!踏んでらっしゃる!!!恐ろしさにさっと青ざめて、踏まれてる素振りなんて微塵も見せない所が王子様っぽいなんて考えた。


「板垣 薫と申します、初めまして王子様」


どうして良いのか分からないけど、こういう時にはやっぱり自分の常識に従おう!って思ったから、とりあえずワンピースの裾を掴んでちょこんと頭を下げておいた。精一杯それっぽくしたつもりなの!!笑うな!!けど、笑ったのは王子様だった。私はまたしてもさっと青ざめる。


「ははっ、いやだなぁかおるちゃん!王子様だなんて!君イシュの友人でしょ?なら好きなように呼んでよ〜!」


あ、軽い。軽いよ。なんだこの王子様。足下を見るとイシュの足もついにめり込みMAXだ。ちょっそれ痛くないの?!


「えっっ、あの王子様お名前は...!」


「アルデールだ」


正直そんな恐れ多い事はできそうにもなかったけど、イシュにさん付けするなって言われた事を思い出して、それがこっちの常識かもしれないと思い直した。王子様が答える前にイシュが喰い気味で答える。さっきからイシュはなんでそんなに不機嫌なの?ていうか王子様呼び捨て!!!!!!呼び!!!捨て!!!あああああ!!!!ごめんなさいうるさくて。でもだって、頼るべき常識がいなくなってしまった今、私は絶賛混乱中です。


そんな私をほったらかしに、繋いだままだったイシュの手がぱっと離されてなんとなく寂しい気持ちになる。


「ちょっと待っててくれるか、かおる。俺はこいつと話がある。」


え、なんか王子安くない?そんな友達感覚でフランクに接していいものなの?混乱はまだ収まらないけど、そのまま少し離れた柱の影まで引きずられて行った、王子様、もといアルデールさんを呆然と見送る事しかできなかった。異世界、こわいです。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ん?イシュ。相当気に入ってるね?あの子の事。でも僕も気に入っちゃった♥」


「かおるはダメだ。俺のだから。手だししたらお前でも容赦はしない」


へらりと発せられた言葉にぶわりと殺意が湧く。幼なじみのこいつは王子だが、なかなかに女癖がわるく、すぐに引っ掛けては捨てて、いつ背後からさされるのかも分からない。だからやっと見つけたかおるの存在とこいつを会わせたくなくて、わざわざ裏庭を選んで部屋まで行くはずだったのに、どういうことだ....


「おっかないねー。冗談だよ冗談。ていうかイシュ足!足痛いよ足!」


「おまえの冗談は冗談に聞こえない、殺すぞ」


「えっ?!なにそれちょっと酷くない?!」


俺の目を見てなにを悟ったか、感の良いこいつはすぐ前言撤回した。だてに幼なじみやってる訳ではないので、こいつがかおるに手を出す事はないと思うが、一応くぎをさしておく。ちなみに足のことはしらん。


「とにかく手を出すな。後、誰にも言うな。分かったな?」


「へーへー分かりましたよ。俺これでも王子なんだよ!泣くよ!?昔っから変わんないねぇイシュくんは」


ぶつくさ言うのはほっておいて、この後の事を模索する。どうせバレてしまったのだから協力してもらおう。足を踏んだのは、かおるが王子の事をいろいろ気にしていたからだ。嬉しそうに微笑むかおるは可愛かったが、俺だけ見て欲しかった。


「うるさい。取りあえず噂が広がらないように取り計らってくれ。」


「人使い荒いよ!もう!.....それであの子とはもう、おつきあいしてるんだよね。あの人に知られたらちょっとやばいんじゃない?」


「……だから頼んでるんだ。それと、まだかおるは」


「えっまだ付き合ってないの!?えっあの百戦錬磨のイシュくんが〜?」


俺の言葉を遮るように騒ぎだしたアルにイラつく。こいつほんっとムカつく。もう一度念を押して退散させる。数分とはいえ、一人で置いて来てしまったかおるが心配だ。


遠目から見ても、白いドレスを着たかおるは可愛くて可愛くて、思わず口元がゆるみそうになる。かおるにむかって一歩踏み出すと、今までは影になって見えなかったが、誰かと話してるようだった。くそ、こんな所にまで、誰だ。それよりもかおるの様子が気になる。どうしたんだ?


「イシュ様っ!」


かおると話していたやつがかおるを押しのけるようにして、こちらに走り寄ってくる。イラっとするのを止められない。こいつは、いつもつきまとってくるやつの一人だったか、取りあえず鬱陶しい。








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