痕跡
あまりに苦しかった。
イシュはどこへ行ったんだろう。私を嫌いになった?
考えても考えても、結局最後に頭に浮かぶのはいつも同じ事だった。
イシュは行ってしまったのだから。
世界は真っ暗になった。
息の仕方を忘れそう、瞬きってどうやるんだっけ?でも、イシュの事は忘れられない。
毎日が他人のように過ぎて行った。
カイはいつもそばに居てくれた。エマもサラも毎日紅茶を入れてくれた。
毎日来ていたウサギさんは来なくなっていた。
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アレから、しばらく。
このぼんやりとした虚無感にも慣れて来た。
落ち着いて来て、あの時の事を考える事も少なくなった。
その分、鮮明に思い出してしまっている気もする。
でもそのおかげで、ある事を思い出した。
イシュはあの時、じゃあまたって言ってた。またってことは、もしかしたら、また会えるかもしれない……でも、気分はあまり晴れない。
所詮は言葉なわけだから、もうずっと帰って来ないのかもしれないし、それより、私はさよならって言われたんだ。さよならは別れの言葉だ。
ああ、やっぱり思い出さない方がよかった。気分はどんどん暗く、沈んで行く。
「薫様...!やっぱり俺、城にっ」
「カイ、ダメだよ。来ちゃダメって言われたでしょ?」
最近カイは元気が無い私を気にして、城に行くというようになった。
理由を知りたい気持ちはあったけど、今行ったらイシュを確実に困らせてしまう。でもそれよりも、自分が心配だ。イシュの事を考えるとあの苦味が胸に広がる。
「薫様、カイ君、街へ行きましょう!」
エマがお茶を注ぎながら発案してくれた。
うん、いいかもしれない。気分転換は必要だし、前に考えてた事もあったし。
前に考えたのは…あ、イシュが絡んでたなぁ。
「うん。行こうかな?楽しそう」
「じゃあ、馬車を出しましょうか!」
サラが馬車の手配を始めてくれる。どうやら、みんなで行くみたいだ。
サラとエマは本当にいい人だと思う。
あの日から私にスゴく気を使ってくれて、2人は全ては知らないけど、イシュが帰って来ない事も考えて少しわかっているようだった。
少しづつ、また前に進み始めた。
夏休みに入りましたー♪───O(≧∇≦)O────♪
今までよりはハイペースでの更新を目指します!
次は街です( ´ ▽ ` )ノ