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異世界と私と時々ウサギ  作者: 酢昆布
第二章 勇者
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危険。

”ゴーォォ”


後ろから響いてくる電子音はしばらく止みそうにない。

って言うか、ドライヤーがあるんだったら早く言って欲しかったな。


イシュは私を膝に乗せながら、私の髪を乾かしている、ちなみにカイは膝の上。


カイは温風にあたってまどろんで来てるし、イシュはどうやら真剣に私の髪を乾かしているから、珍しく誰も話さない。

それで、考えてみたんだけど、まずイシュに言う事ー!


異世界に行くか。こっちに残るか。


これは重要だよね。

でもさ、なんていうか、気まずいっていうか。ほら、ちょっとシリアスに話し合いが行われた手前、やっぱり止めますってすんごい言いずらくない?

それもこれも、全部ウサギさんのせいなんだけどさ。あ、なんかイライラして来た。


あともう一つは魔王問題。


これは良くわかんないけど、いつもどこかで気になる感じ。

ほら、テスト範囲のわかってないテストみたいな。

うん、そんな感じ。でもこれは情報が全くないから、ウサギさんに聞くべきだ。

って言うかウサギさんが話さないのが悪いんだけどさ。

なんか何なのウサギさん?意味あるのアレ?


うーん、片方は話しずらい、もう片方は話せない。悩ましい…っ。


カイのヨダレが私の夜着にかかりそうになって、ハラハラしてきた頃、電子音が鳴り止んでイシュが私の髪に鼻をうずめる気配がする。


「薫、終わった」


「うん、ありがとー。今度は私がイシュの髪乾かそうか?」


「俺のはもう乾いたからいい。でも薫のはこれから俺がやるから」


うわ、なんかスゴい嬉しい。

人にドライヤーかけてもらうのっていいよね!美容院とかのも好き!

それにしても、終わっちゃったよドライヤータイム。

話すべきかっ?!……話すべきだよね。憂鬱。

カイとかもう熟睡だし。


「あのね、イシュ?ちょっと…」


「ん?どうした薫?」


イシュは私の腰に回した手を強めながら言う。


「昨日の夜話した事があったでしょ?それをウサギさんに報告したら、向こうの世界に行けるのは、私とイシュだけなんだって。カイはいけないの」


カイは自分の名前が出たところで、ピクッと耳を動かしたけど、やっぱり起きない。


「うん」


「だから、私がこっちに残ろうと思うの」


「でも、それじゃ薫が家族に会えないだろう?」


「会えるらしいの。ウサギさんが教えてなかっただけで」


「クソっなんだよそのウサギ……薫はそれでいいんだな?不満もないし、心配も……ないな?」


こんな、後からの話で、イシュも相当、覚悟決めててくれてたと思うのに、それでも私の心配をしてくれるのは、やっぱりイシュは優しすぎると思う。


「うん、ありがとう、イシュ。大好き」


急にイシュの香りが遠くなったような気がして振り向いてイシュにぎゅーっと抱きつく。カイはまだ膝の上だけど。


イシュが抱きしめ返しえくれる。嬉しいんだけど、待って、なんで夜着に手が入ってきてるの?!あれっあ、押し倒されそうなの私?


イシュはこいつジャマだな。とかいいながらカイを落とすと、私を素早く抱き上げてベッドの上にのる。それでも起きなさそうなカイは今日、相当疲れたんだろうなぁ。って人の心配してる場合じゃないじゃない私!


取り合えず既に上半身は裸になってしまったイシュさんと、私の肩紐を撮ろうとしているイシュさんを止めようと試みてみる。ほぼ乗りかかられてるから抵抗は愚か、暴れる事も出来そうにない。


「イシュっあの、ストップ!ストップ!」


「無理。もうダメだ」


本当にイシュは止まる気配がない。まだ紐は取れてないけど、今はキスをされてる。肩から、顎にかけてにゆっくり。あまりの羞恥に今にも爆発しそう。


「今日の夜着も似合ってるな」


この状況でそんなこと言われても!もう半泣きになりながらイシュを見上げるとばっちり目を合わせて微笑まれた。う、カッコいいんだから!でも今はそれよりイシュの獣みたいな目が怖かった。

どうやら複雑に結んであった紐(ありがとう紐!)は解くのを諦めて、今度は違う方法で行こうと思ったみたい。ちょ、危険!


とりあえず思いつく限りの言葉をいっしょうけんめい叫ぶ。


「イシュっお願いっまだ心の準備が出来てないからっ」


「そんなの必要ない。大丈夫だ、優しくするから」


そう言う問題じゃなくてっ!

どうしたら…っ!そうだ、不意をつけばいいのかな?よし……コレしかない。実行。


そういっている間にもイシュは手を止めない。


「イシュ?」


生返事をしながら顔を上げたイシュにキスをする。よし、これでイシュの興味はそれたはず、煽ってることにもなるかも知れないけど、本当にこれしか思いつかなかったし、本当に、本当に、パニクってたのだ。私がしていたハズなのに、何時の間にか位置はチェンジ、私がされてる。


「んぁ…っふ……」


口の中で探るように動くイシュの舌は、今日はスキマをくれない。でも、一応身動き取れる状態になった。

イシュの唇が切なげに離れたその一瞬に少し距離を取る。


「おいで」


一途な声に負けそうになるけど、乱れた夜着を直しながら答える。


「イシュ、あの、また今度……でもいい?」


「……明後日、でも薫、1つだけ言う事聞いて欲しい」


スゴく簡単に折れてくれたけど、また今度って言うのが重要だったらしい。

この際、お願いごとは気にしない方向で。

突然よりはいいものの、明後日って!早い!怖い!だって痛いんじゃないの?!


「え、あ、うん。ありがとう。だけど明後日は…「薫?」


「……はい」


あぁぁ…!!押されてしまった。うっ、どうする私っ?でも試練はまだ続いた。お願いごと軽く見てたら軽くなかった。

イシュが、ものすごーく色っぽいって言うかフェロモンで、薫からもう一回キスして欲しい。って言うから!

でも、あんな恥ずかしい事もう一回だなんてっ!……えぇ、まぁでもしましたよ。

だってあんな目で見られたらほとんどの女性は彼の願いを叶えるでしょうよ。


結局開放してもらえたのは、かなり遅く。

一緒に寝ようって言われたけど、身の危険を感じたから辞退してきました。



……自分の身が心配です。



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