カイの叫び。
憎々しい藁の塊から這い出してから数分、スゴい事に気がついた。
薫様が……!いない!!
待って待って、考えないとわかんない。
薫様は僕が寝ている間に何処かへ行ったんだ。うん。
だからアレ、夜に移動したって事だよね。それか明け方。
て事は…薫様はトイレに行ったんだ!
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アレ、おかしい。
薫様が帰ってこない。おかしい。
あぁ、きっとお腹がいたいんだ。うん。そうに決まってる。
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お腹が痛いにしては長くないか?
きっとものすごくお腹がいたいんだ。大丈夫かな。
取り合えずトイレへ様子を見に行こうかな。
前足を使ってドアを開けて、右方向に歩き始める。
右方向って言うのは野生の勘だ。
その間、何人かとすれ違ったけど皆、僕を見てニコリと笑うだけで気にしない。
あ、トイレここか。
ドアをノックして薫様がいるかどうか確かめてみる。
返事がない。 またやってみる。 返事がない。
なんだか心配になってきたので耳をドアにぺったりつける。
音がない。 またやってみる。 音がない。
コレさ、いないよね薫様。
もう確実にいないよね。僕もトイレのくだりから薄々思ってたけど…薫様が僕を置いて行くはずないと思って。
そうだっ薫様は僕をおいて行ったりなんか…!
あ、ダメ。前が霞んで見えないや。
取り合えず、寝よう。起きたらきっと薫様もいるはず。
僕は傷心を引きずって寝室に戻った。
どこですかぁぁー!薫様ー!!!
きっとその叫びが届いたんだ!
僕が横になって程なくして、馬のひずめが聞こえてきた。
馬の音に合わせて僕も走る!
走って走って玄関に!……っ薫様っ!いたぁぁ!
イシュの野郎も一緒だけど!いたぁぁ!
僕に気がついた薫様はアイツとつないでいた手を離して駆け寄ってきてくれた。
あいつには露骨に睨まれたけどさ、ザマーミロ!
「カイ!ごめんね心配したでしょ?今度からは一緒に出かけようね」
「心配しましたけど戻ってきてくれたので、いいんです!」
いいんだ!実際は不満もたくさんあるけど。アイツ(イシュ)とかアイツ(イシュ)とかアイツ(イシュ)とか。なんで一緒にいるの!?
でも、いいんだ!だってほら、僕の中心は薫様だから。