稽古場ってどこだぁ!
考えてるうちに門が近づいてくる。
あー、入れるかな?でもよく考えたら、サラとエマは何も言ってなかったし入れるよね!
「通行パスお願いします」
止められたぁー!!ダメじゃん!あかんやん!
パスって何?知りません!
後ろでめちゃくちゃ焦ってる私を気にもせず、トムさんがいつの間にかパスを渡していたようだ。
馬車がまた進みだす。
ふー、よかった。
焦る必要なかったじゃん!私!どんだけ緊張してんのさ!
いやしかし、稽古場にはどうやって行こう?
「トムさん稽古場どこか知ってる?」
「いやぁ、私は送り迎えだけなので分かりませんの」
知らないのかぁ。うーん。
結局、場所は分からないまま外に出る。いい天気だ。
お城は、門から少し入った所に石畳の道が続いていて、そこからすぐに入り口になっている。
入り口にはいつもたくさん人が居るから、そこで誰かに聞こう!うん!
おっよーし!ひと発見!
「あの、稽古場ってどこでしょうか?」
答えてくれたのは無精髭の優しそうなおじさん。
優しそうな人を狙いましたとも。えぇ。だって怖いじゃん!
「稽古場?突き当たり曲がって右。今日は確か7番隊だよな。お嬢さんも隊長のファンかい?親衛隊の人たち過激みたいだから、気をつけるんだよ」
なんていい人!教えてくれた上に私の心配までしてくれるなんて!
それにしても親衛隊...ほんとどこにでも居るなぁ。
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稽古場に近づくにつれ、活気のある声が聞こえてくる。そしてなんか男臭い。
お兄ちゃんの部屋もこんなにおいだったなー。
おじさんが教えてくれた通り、稽古場の周りはすごい人垣だった。
と、言ってもかなり離れた所で見ている。怒られるから?
人ごみの中にマリーナさんを見つけたから、手を振ってみるけど、ぷいっと無視されてしまた。ちょっとショック。
そのとき、人垣が割れて稽古場を一瞬見る事が出来た。
「あ、イシュ」
イシュは奥の方で他の人の稽古を見ながらなにかを叫んでいる。
…カッコいい。
なんか、男の人だなぁ…横顔とか。
そこらのモデルよりも全然カッコいいから、胸キュン倍増だし。
すぐに人垣がまた元にもどって見えなくなる。
…今思ったけど、こんなに人いたら渡せないじゃんっ!!
中には入れないみたいだし。うーん…どうしよう!
さっぱり思いつかないなぁ…今日は諦めるしかないかないかなぁ。
さっきまで聞こえてた稽古の音が消えた。
どうやら休憩に入ったって事らしい。
しかたがない背を向けて帰ろうとしたところに、声が響く。
「薫は?」
あ…イシュ、気づいてたんだ。
目があったようには思わなかったけどなぁ…嬉しい。
本当は今日、このまま帰りたくなんてなかったし。
「イシューココだよー」
イシュに向かって手を降ると、ゆっくりとこちらに歩いてきてくれる。
周りの "親衛隊" に睨まれたけど、止めるつもりは無いらしい。
認めてくれたとか!……いや自分で言っといて何だけど、ナイナイ。
だって皆さん強烈だし。アイドルの追っかけみたいな?
我ながら微妙な切り方w