表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界と私と時々ウサギ  作者: 酢昆布
第一章 異世界
3/51

お家の問題

イシュさんとの自己紹介を簡単に終えたし、ちょっとコレからの事を考えてみようと思う。


異世界トリップって...引くわ!自分!ベタ!しかも魔法って...楽しそうだけどさぁ!

あっそういや食文化ってどうなんだろ。ムシとか食べれないぞ、私は。いやそれよりも寝る場所。まさかここに置いてもらえるなんてそんな話があったらいいけどね!でも仕方がない、全くアテのない私は会ったばかりのこの人に頼るしかないのだから。ちらりとイシュを見上げると明後日の方向をむいてなにやらぶつぶつ。


スゴく真剣そうだし、何となく邪魔出来なくって、お家のことについてお伺いを立てようと思って開いた口を閉じて、イシュさんの意識がまたこちらに戻るまで待つ事にした。


やる事もなくて、目線をフラフラと動かしていると、不意にドアがきぃっと細い音を立てて開いた。う、うわ、ビックリした。入ってきたのは、目じりの下がったちょっと地味な感じの男の人。うーん、誰だろう。というか私はどうなるんだろう。違法侵入とかで捕まったりしないんだろうか。私もビックリしたけど相手の人も私を見ると目を少し見開いた。


「あっ目さましたんですね。大丈夫ですか?」


ということは私を保護してくれた人の一人なのか。そうだお礼、ちゃんとしなきゃ。いやもうホント、死ななくてよかった。


「はい、体に変な所はなさそうです、あの、助けていただいて本当にありがとうございました」


座ったままだけど、頭を下げてお礼を言うと、ニコニコ笑って頷いてくれた。あぁ、いい人だこの人。そんな人に会えたのが嬉しくって私も微笑み返していたら、イシュさんがいつの間にかぶつぶつをやめてこちらの世界に戻ってきてた。


「お前も自己紹介したらどうだ。ルー」


さっきの男の人を上から、威圧しているような言い方。てことはイシュさん、上司なのかな?


「そうですね。失礼しました。私はルシファールと言います。7番隊で副隊長やってます。ルーとか適当に呼んでください」


あぁ、こちらの名前もなんと日本からかけ離れた...というかそれよりも気になるのは、7番隊?副隊長?


「私、板垣 薫って言います。どうぞかおるって呼んで下さい。......あの、7番隊って何ですか」


単純な疑問だった。いや本当に素直に疑問だっただけなのに、私はなにか変な事を言ったらしい。2人ともとてーも微妙というかなんというか、変な顔でこちらを見て一言。


「知らないのか」


うん、まぁ知らないよ。知る訳ないじゃん!と開き直ってみても、生まれてしまったなんだコイツ的な空気は消えないのだ。ここはありがたく説明を受けるべくイシュさんにお願いしてみよう。


「あの、なんていうか、頭打ったから記憶がないのかなー?みたいな。あ、あの説明とか...していただけますか」


うん、我ながらよくあるいい訳だけど状況が状況だけに、すごくリアルだ。


と、説明を聞き始めたのは良いものの……長すぎだ。1時間は喋り続けている気がする。ルーさんは既に寝ている。

いいなぁ。私も寝たいよ…でも説明を受けてる身として、寝てはいけない気がする。イシュさん眼力すごいし。

まぁ、話をまとめると、世界は4つの大陸に分かれていて。

南がサパ。農作に長けた国。

東がビンパール。武術に長けた国。

西がウェリントン。鉱山が沢山ある国。

北がノーデル。海の男が住む国。

ここはビンパールで、城には10番隊まで部隊があるそうだ。その中の7番隊が1番強い、というか部隊それぞれに役割というものがあって、7番隊は攻撃の心髄らしく、特に有名な隊らしい。なんでも知らない人はよそ者か、記憶喪失者だけって言う....あっそれ私の事ですね!だから驚かれたのかあ。ちなみにイシュさんはそこの隊長だそうだ。


「最初から説明したほうが良いとおもったんだが…長すぎた。すまない」


「いえ、嬉しかったです!」


長いとか言っておきながら現金だけど、私的にはスゴく助かった。この国の基本といっても本当に初歩だけど...とにかく少し知識を得たから今度はコレからの生活に着いて考えよう。それよりもイシュさんがさっきから私の事をじっと見てくるんだけどなんなんでしょう。真っ正面から見返すと、少し難しい顔のまま頬をなでてくれた。


「かおるが誰なのかとか、いろいろ気になる事はあるが。つらい思いをしたのだろう?無理に話さなくていいから、話したくなったら話してくれ」


少しかすれた声で言われると、頷く事しかできない。イケメンパワー!という奴なのか、そうなのか、少しドキドキする。でも、それを抜いてもイシュはいい人だと思う。今日はここに寝かせてもらえたりしないかなぁなんて、そんなことを考えた。だっ、だってやっぱり心細いし、また一からやり直しより、今日はここに居た方がいいじゃない?!


そんな期待を込めて微笑むとイシュがまた顔を赤くして、抱きしめられた。ギュッと。む?!ちょ、何で?!何でそうなる!っていうかダメだってっ私もドキドキしてるんだから....!驚きながらも、良い匂いがして思わず吸い込むと、イシュさんが口を開いた。


「家は、思い出せるか、というかあるのか」


ビックリしたし、何でいきなり抱きしめるのか意味わかんないけど、きたその話題!あまりのタイミングの良さに、ないです!って元気よく答えそうになったけど、それより先にイシュさんが口を開く。


「ないなら、ここで住んでもいいぞ?」


うそおおおおおこれは予想外の展開だった。まさかホントに今夜ここに泊まれるとは思わなかった。でも嬉しい、というか助かる。本当に。やっぱりどんな時でも神様は居て下さるんだ....!今の私の目は嬉しさを隠しきれずにらんらんと輝いているはずだ。


「部屋もある....が、準備がないから今日は俺と一緒で我慢してくれ」


うわああどんだけサービス満載なのさイシュさん!おいしすぎる話は危ないっていうのはもちろん知ってるけど、外で野宿なんて絶対にイヤだもん。特にこんな、得体のしれない世界では。だからもちろん分かってる、女子としてだめなのは分かってるけど、初対面の男の人と一緒の部屋でも平気です!


「本当ですか?じゃあ、お言葉に甘えさせて頂きます...ありがとうございます!!」


いけると思ったら押せ!という母の教えを思い出したので、遠慮はしない。やったー!寝床確保!安心から口が緩むのが抑えられずに、にこにこ笑っているとイシュさんの私を囲う腕が強くなって、なんだか甘い空気が漂った。ん?とか思ってる時に、突然場違いな声が響く。


「あのー?隊長?薫ちゃん?」


さっきまで寝ていたルーさんである。影が薄いだけあって全然気がつかなかった。ちなみに今、まだ私とイシュさんはなぜか抱き合っているのである。えっえぇぇ!は、恥ずかしい!とっさに離してもらおうとしてもイシュの強靭な腕はびくともしなかった。

上から冷たい声が響く。


「いつからいた」


「最初からいましたけどって、ひぃ!」


抱きしめられていて顔は見えないけど、ルーさんの声の様子からすると、怖い顔でもしてる様な感じだ。


「ルー、まだ誰にも言うなよ。わかったな。おい、返事はどうした?」


「はっははぃぃぃっ」


「分かったら出て行け。」


ルーさんはばたばたと部屋を出て行ってしまった。けど、ちょっとまってっっ、これ抱き合ってる私たちがおかしいよね!違うよね、ルーさん悪くないよね!イシュさんには何か思う所があるみたいだし、どうするべきか悩んでいると上から声が振って来た。

今度は優しい声で。




イシュさんここではもうベタ惚れです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ