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異世界と私と時々ウサギ  作者: 酢昆布
第二章 勇者
25/51

番外編 ロリコン疑惑

番外編について沢山意見をいただきましたので、2つを合体させてみました!

書いてて楽しいので、番外編だけ書く所作ってしまおうか。

イシュ様親衛隊とは!

一つ!   イシュ様を何時もそばからお守りする事!

一つ!    抜け駆け厳禁!

※活動は主に隊長宅です。城から徒歩五分。

入会無料。年会費 500万。貴族、女性のみ。



6:00am 

親衛隊の朝は早い。通常、月曜日に行われる朝の朝会の為だ。

最近の話題は専ら薫の事である。

イシュの怒りにより、少し落ち着いてはいるが見た目だけだ。

朝会と言っても、校長が台に立って意味の無い事をベラベラ喋るあれでは無い。

隊長が中央に座り、厳かにお茶会は始められる。…ように見えた。


「隊長っ!昨日のイシュ様見ましたか!?耳かきしてましたの!」


そう切り出すのは、No.13だ。


「なっ!それは是非とも見たいものですわ!!」


それに激しく食いつく隊長。名は、ミランと言った。

イシュとの出会いは彼女の始めての社交デビューパーティー。その日、会員15名の公認ストーカー軍団が誕生した。

15人、少ないように思えるが、15人にストーカーされてる様を想像していただければお分かり頂けるだろうか。

尚、会費の500万のほとんどは彼女達のお茶代に消えてゆくのだった。


「もちろん、写真に収めましてよ!」


「流石。コレは貼り出しますわよ!」


隊長の一言で部屋に貼り出される、イシュの耳かき写真。


『きゃーっ!』



変態である。

普段なら、ここでイシュの出迎えに行き、

その後は各々、イシュを見守るはずだった。ぶっちゃけストーカーだ。だが!この日は違った。

ついに完成したのだ。あのクッキーが。一粒食べると、たちまち子供の姿に戻ると言う不思議なクッキー。効果は1日だが。


「つ、ついに完成しましたのね…」


依頼していた魔術師がもっているクッキーを見ながら、ミランと会員はごくりと喉を鳴らした。そもそも、


「子供のイシュ様はそれはそれはカッコ可愛いのでしょうね…」


と言う誰かの一言から始まった事だ。あれから約半年、それがやっと完成したのだ。それまで行ったいどれほどの経費が無駄になった事か。そのクッキーはいわば、彼女達の努力の結晶と言えるだろう。

それを今…渡そうとしている。


「あ、あの!イシュ様!コレ、私達が頑張って焼きましたの!どうぞ!」


自分で焼いた、というのは本人達いわく、可愛い嘘らしい。


イシュは断ろうと口を開きかけて、口を噤む。

今、彼の頭には、自分の執務室で待っている薫の姿があった。とたんに緩まる口元を手で隠しながら受け取る。

一応お礼も言って。


以外にもクッキーを受け取ってくれたイシュに、いよいよ興奮も高まって来た。

ここまでは計画通り。会員はいそいそと執務室の方に移動する。


「とうとう見る事が出来ますのね!」


「楽しみですわ!」


執務室に戻ったイシュは、普段なら絶対に出さないような柔らかい声で薫を呼ぶ。

その呼びかけに素直に応じた薫を自分の膝に乗せると、彼女の口にクッキーを入れる。


まずい、これは予想外だ。

それをばっちり見ていたストーカー達には既にざわめきが広がっていた。

イシュに可愛がられている薫もそうだが、今の問題はクッキーなのだ。そしてそのクッキーは薫の口の中へ。


「クッキーが!!」


クッキーを食べた薫は、体から放出されるピンク色の煙に少しづつ巻かれていく。

それに気がついたイシュは目をカッと見開き、薫に呼びかけるが返事はない。どうにかしようと手を延ばした時、はたと思い出す。このクッキーを焼いた張本人に説明させればわかるはずだ。必ず近くにいるはずの気配に向き直り低い声で尋ねる。


「あのクッキーは何だ?薫に何をした?」


必死の形相のイシュに上手く舌が回らなくなっているが、それでも必死に説明する。

今はイシュの誤解を解かなければ。


「あ、あのぉ、すいません!イシュ様!アレは…食べた人を子供の姿に戻すモノなのですわ!」


これを聞いてホッと胸をなでおろしたイシュの思考はもう違う事を考え始めていた。

子供?って事はそれは、もしかしたらものすごく可愛いんじゃないか?否、もしかしなくても可愛いはずだ。

しかし問題は期限。


「…元に戻るのか?」


「は、はいっ!1日程で!」


ここまで聞いて、イシュの興味はもう、全く違うところにあった。

小さい薫を可愛がりたい。抱き上げて見たい。


今度は緩む頬を隠す事もせずにミラン達を追い返し、薫の方に目を向ける。

すると最初に目に付くのはぶかぶかになってだらしなく床にずっているドレス。

それから、わずかに赤みがさした、ぷっくりした頬。そして、大きな目。

ぺたんと自分の椅子に座る姿はそれはそれは可愛くて、思わず手をのばして抱き上げる。


薫は抵抗なく抱き上げられるが、不思議そうに首をちょんと傾ける。


「おにーちゃん、だあれ?」


「…っ!記憶も子供か…俺はイシュだ」


「そっかー!あたしは、かおるーっ!」


そう言ってニコニコ笑う薫に、イシュはもうメロメロである。

いったん薫を下ろして考える、服をどうにかしなければ。取りあえずもとのドレスを軽く巻いておく。


「…おいで薫、俺と一緒に着替えに行こう?」


「行くーっ!いしゅー、だっこー!」


「もちろん」


出発しようとしたところで、タイミング良くルシファールが入って来て、驚きに目を見開く。


「隊長?!誰ですかその子!まさか隠し子?!薫ちゃんに知られたら「落ち着け」


…………………………………………………


「はぁ…。じゃあ、その子が薫ちゃんなんですか…可愛いですね」


「あぁ、だから、代わりのドレスを取りに行く」


「言ってらっしゃい…隊長、頑張ってくださいね」


どこか自慢気に答えるイシュにアルデールはため息を尽きながらエールを送ると仕事に戻って行った。


…………………………………………………


アルデールの言葉の意味はすぐに分かる事となった。

ドレスを貸してもらいに行ったルーチェは、薫を着せ替え人形にでもする勢いで次々とドレスを着せては悶え、

それを見に来たアルデールは薫にちゅーしようとして、イシュに殴られ、使用人達はこぞって可愛がった。


その大変な騒ぎの中からなんとか抜け出し、つかの間の平和とも言えるその時間を、薫とゆっくりと散歩することに費やしていた時。


手がぐい、とひっぱられ、いしゅ、と少し舌っ足らずな声で呼ばれた。

クセになりそうだと思いながらも、薫と同じ高さまで視線を落とすと、今度は小さな声でおねだりされる。


「あのね、かおる、あそこのお花がほしいの。いしゅ、とって?」


小さな指が指す方を見れば、大きなコスモスが咲いていた。

こんなに可愛いお願いを断るはずがないと、すぐにとって来てやる。

すると嬉しそうに頬を緩ませて、ありがとう、とまた小さな声で言う。どういたしまして、とにっこり笑うと、薫がまたなんとも嬉しそうに笑い、


「いしゅ、ありがとうのちゅー」


といいながら、俺の頬に小さくぬくもりを残す。

可愛いなぁ、本当に。小さくても薫には敵わない。お返しに、俺も口づけを、唇に差し上げましょう。


その後流れた噂は、隠し子疑惑よりも、ロリコン疑惑。

本編より長く書けた恐怖。


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