In the 馬車
馬車に乗るとカイはもう座っていた。
あの大きい体躯だから、椅子を丸々一個使ってる。
それにしても…不機嫌。
「薫様の手を離してくれます?」
「あ"?」
またかよ。何でこんなに仲が悪いんだー!!仲良くしてよね!(切実)
「2人共、ほんとに怒るよ」
「だって薫様!こいつが!」
「あ?お前が先だろ」
「……ケンカするんだったら、帰らないもん」
そう言うと2人はピタリと言い争いをやめて、口をはくはくと動かしながら言い訳を始める。こういう、たまに行動が一緒なところ仲良さげなのに。
「…っ!薫!仲良く……喋らない様にするから、帰ろう!!」
「薫様!僕も!僕も突っかからない様にします!一緒にいて下さい!」
「………次、やったら帰らないから」
ふぅっ、これで仲良く…は無理かもしれなくても、ケンカはあんまりしないでしょ。
コレは、お母さんがお父さんとケンカした時、使ってた手口だ。
実家に…って言った途端、お父さんが土下座してた。お母さんってすごいな。
「……薫」
「何?」
振り向いたら、イシュが捨てられた子犬みたいな目で、こっちを見ていた。
な、何だその目は!
「その…怒ってるのか?…すまなかった」
「…ケンカしないんだったら、いいよ」
そう言った途端、何かが切れたかのように抱きしめられる。
カイは居眠り中だ。
「許してくれたから、今日も一緒に寝て良いんだよな」
何言い出すんじゃー!こいつは!
「ダメだよ!アレはアレだもん」
「……寂しい。今日は薫にあんまり触れてない」
「毎日、触れなくったていいでしょ!」
「ヤダ」
「っダメなものはダメなの!……んっ」
唇にイシュのそれが押し当てられる。
あぁ、言いたい事は沢山あったのに。イシュはずるい。
「…なぁ、薫……いいだろ?…」
「…ふっん……ダメ…」
キスの合間に尋ねられるけど、その手に乗るか!
イシュの舌が入ってくる。熱い…
「おい!薫様に…!うわーっ薫様ぁー!」
カイの声が響く。…ん?カイ?あれ、いつから起きてたのぉぉぉぉ?!
流石のイシュも、すんごく不機嫌そうに顔を上げる。
「邪魔するな」
「あぁ?!薫様に必要以上にベタベタするな!」
「無理だ」
2人共、約束を思い出したらしく、ここで黙ったけど。
恥ずかしい…!カイが見てたなんて!うぅ。
思わずカイの毛に顔を埋める。そう言えば始めてだ。
ふわふわー。すごい。柔軟剤を使った高級タオルよりふわふわ。
あ…寝ちゃいそうだ。眠い…
結局この後、薫は爆睡。
カイは嬉しさを、イシュは苛立ちを隠せなかった様だ。
家に着き、ジャンケンに勝ったイシュに抱き上げられると流石の薫も起きたけど。
「…んー、アレ?おはよう、イシュ」
まだ眠気が残ったような顔で、へにゃりと笑う薫を見たイシュは色々大変だったそうな。
次!番外編行きたい!